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本の感想49『妖精配給会社』星新一

※本の中の、「福の神」というショートショートを読んで想像したこと。

日本人は、祈るために神社にいく。祈る内容もさまざまで、学問や恋愛や仕事、金銭などなど。星さんは、登場人物を通して、これについてユニークな着眼点を与えてくれる。

それは、「神もあんなにも大勢の人に祈られていては、一人に対する分け前を大したものにできないだろう」というもの。そしてさらに、本当に福にあやかりたいのなら、福を独り占めできそうな盲点的場所はどうか?例えば生前に裕福だった大人物の墓とかは?という思いつき。

なにか聖なる、人間の肉体を超越した霊的なものが存在して、願いを叶えてくれるものがこの世にあると想定しよう。だとしたら、その願いが叶えられる人間はどうやって選ばれるのか?いないと想定するとそこで考えが終わってしまうから、本当にいると仮定して、論理的に考えてみよう。

まず、そういった霊的存在は、「人類全員の願いを叶えてくれるものである」ということは間違いなく、無い。それは毎年初詣に出かけた多くの人間の願いの大半が叶ってないことだけでも証明できる。学問の神も、多くの浪人者をつくっているところから容易に分かる。

だとすると、くじ引きのようなものでランダムに選び出しているのだろうか?毎年あるいは毎月といった一定期間で、願いが叶う当選者数の定員がきまっているなら、それはあり得る。

しかしその場合、確率的にはかなり低くなってしまうだろう。有名な神社で訪れる人が多いほど枠が比例して多くなるとかっていう気の利く制度があるなら別だけど。

そう考えると星さんの物語に出てくる男が、幸運を掴もうと有名な神社とかを避けて、なにか別の福がありそうな場所を選ぶという独自の行動をとったのは賢い。合理的だ。「生前裕福だった人には何か福の神がついていたのだろう」と。

あともう一つ思いついたのが、受験とか男女の恋愛とか金とかそういった人間の欲深いところにちなんだ神社がこの世にかなり多い点、よく考えるとおもしろい。

やはり神様もマーケティングをしなきゃいけないらしい。そしてより多くの人間を集めるためには、やはり金や恋愛や権力などといったことをテーマにしなきゃいけないみたいだ。

こんな感じで、(ショートショートの内容からはかなりそれちゃってるけど)次から次へと想像を広げてくれるのが、星新一だ。

うちの本棚には、星新一の本が10冊以上並んでいる。疲れていて、長編や難しめの本とかを読む気分でなく、それでいてある程度頭を使いたいような、気分転換したいような時に、一冊をランダムに選び出して読んでいる。


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