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本の感想24『地球から来た男』星新一

ショートショートが何個も詰まった一冊。

タイトルにもなってるこの「地球から来た男」は、一番最初にある。これがまたおもしろい。

ある会社員が、競合社へのスパイを任じられる。そこで警備に捕まってしまい、テレポーテーション装置によって地球外のどこか遠くに飛ばされてしまうという。会社には秘密を守る義務がある。その装置は近場には人を送れなくて使えないと思っていたが、この時くらいは役に立つ、というような言い分だった。

次に男(会社員)が目を覚ますと、そこは何もかも地球そっくり。お金も使えるし、家には同じような家族がいる。会社も同じように存在し、何もかも同じように機能し生活できる。

男だけが孤独を感じ続ける。周りにいるのは本当の家族や同僚ではないと思ってるし、医者も思い込みだという。そんな中、一人だけ同じ境遇の仲間を見つける。彼も、同じ企業のテレポーテーションで飛ばされたらしく、時々集まっては地球を懐かしむ…

こんな感じのストーリーだ。多分、飛ばされてなんかなくて全く同じ地球にいるのに、周りのあらゆるつじつまを自分の中で合わせてしまい、ここが本当に地球だということに気づかないでいる。確かに、全てつじつまが合ってしまっているから悲しい。

星新一の凄さは、「実際にあり得るであろう事(や奇跡)」を、少し近未来的に、人間心理と合わせて話を作り上げるところだ。人間とはなんたるかを非常に理解していて、さらに未来の予測もかなり的確だから驚くことが多い。

SF作品として、心理小説として、ショートショートという短い中に完成させる凄さがある。



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