本の感想21『きまぐれ歴』星新一
星さんは大好きな作家の1人。小学生の時に出会ってから、今でもときどき読んでいる。この本は彼のエッセイみたいなもので、ショートショートとはまた違った面白さがある。
旅行
行く前のワクワク感や、期待。楽しみながら行う準備期間。そして旅行から帰った後の思い出や回想、撮った写真たち。旅行を共にした人と感想を喋り合う飲み会。
そういったものだけが本物であって、旅行そのものはマボロシか何かみたい、と星さんは言う。
旅行自体もマインドフルネスでいたい。過程や結果だけでなく、行為も実感し、楽しみたい。
地球の神秘
「アングラス」というスペイン料理を知ってるだろうか。ウナギの稚魚がいっぱいに使われていて、味付けはニンニクが特徴的なもの。星さんは、スペインに旅行した時にこのアングラスと出会い、旅行中はこればっか食べたという。そのアングラスについての文。
大袈裟な表現をすれば、自然界の神秘である。太古の地球上で発生した原始生命、それが進化の道を辿りながら、ウナギの稚魚となり、別な経路で進化したものがニンニクとなった。それがここで、このように出会い、かくも微妙な味を作り上げ、私をこのように満足させたのである。不思議といってはいけないだろうか。
泡から始まった命。それが一方では魚になり、ある一方では植物となった。それらが出会い、また別の経路で進化した人間の舌を満足させる。たしかに神秘だ。ネコとマタタビ、人間と酒、パスタと肉とトマト。この世は神秘で溢れている。
神が用意した宝探しを、人間が少しづつ見つけていく。