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カタリゴト

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#花火

風の鈴(ショートストーリー)

 チリン、チリン。  どこからか響く風鈴の音。  夏になると迷い込んでくる涼だ。  鳴ったからといって、身体が涼しくなる訳じゃないのに。  見えない場所に涼しさを纏っている。  いつだったか買った風鈴は、どこにやったっけ?  物を整理する時間があるなら、寝ていたい不精者。  その割に、なにかを始める時には活発になり。  必要な物を揃えるだけ揃えて、それで満足してしまう。  ほとんど使われずに終わった趣味のガラクタは、押し入れに詰め込まれて、わたしの中からすっと消えてしまう。