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【小説】家出娘(1)


助けている

僕は家出娘を買っている。
僕は家出娘を飼っている。
僕は家出娘に勝っている。

というか、助けている。
近所のコンビニ 通称 家出駐留所。
環状線の駅近くで、ちょっと遠い。
僕のマンションからちょっと遠い。
歩いて向かうには、ちょっと遠い。
それがいい。

暇なときは歩いて駐留所まで、さらいに行く。
家出少女は、ときに弱い。
泊まる所を欲している体。
その体目当てに優しくする半犯罪者。
半分くらいじゃ済まない悪き犯罪者。

僕は家出娘を救うのが趣味だ。
しょんべん臭いガキに興味はないが、
成長した彼女らはときに魅力的になる。
千三つ、うんそれは嘘だ。
十に三つ、くらい手放すのが惜しくなる。

管理人

僕はマンションの管理人で、住み込みで管理している。
オーナーは親父だが、好きに使っていいと言う。
ただ稼ぎは貯めておけ、と忠告されている。

高所は人気のある分譲マンションで、
ただ景色がいい。
中間は学生むけに賃貸にしていて、
有名私立が近い。
低所は家出娘に住まわせていて、
家賃収入がない。

駐留所から娘をさらってきて、住まわせている。
ときには手切れ金を払ってまで連れてくる。
そしてeスポーツでボコボコに倒して、
ストレス発散をしている。

忘れていた。このマンションはeスポーツの聖地だ。
住人は多かれ少なかれゲームにハマっていて、
その管理も僕がしている。eスポーツの動画配信、
いずれはこれだけで生活できればと思っているのだが。

脱線

脱線してしまった。まだまだ脱線するけどw
脱線したけど、勝っているというのは、
eスポーツで、勝っているということだ。

僕にeスポーツで勝てるようになるまでは自立させない。
逆に言うと、僕にeスポーツで勝てるようになれば
プロと認めていいということだ。

市場が小さい、って?
いつの時代のこと言ってるの?
もうeスポーツも立派に五輪種目になっているというのに。


1エピソード

ある日コンビニのベンチに座っている少女を見かける。

駐留所のベンチに座るということは、家出娘が自己申告しているのだ。
ほっとけないので連れてきた。

ちょっと長い道のり。
僕は静かにそして淡々と、身の上話を始めた。
もちろん少女に聞く耳もなし。

「キミはいったいどこから来たの?」で始めることにしている。
少女はボソッと静岡と答える。
遠いな。と裏返しに、「近くだね」と返す。
遠いよ!という少女に、そりゃそうだわな、と思う。

特に話も聞けなかったが、マンションに着くなり名刺を渡す。
マンションの管理人?、という表情の少女。
状況が少々つかめない様子だが、
今空いている部屋があるから案内する。と言って
マスターキーで空き部屋の鍵を開ける。

102号室

ちょうど102号室だ。
僕の部屋が101号室なのですぐ行ける。
何かあったら名刺のスマホにかけてきて、と言い鍵を閉める。

十分ほど経ったかな。スマホが揺れる。
「出れないよ」
うん、鍵かかってるからね。

「どこ行きたいの」と僕が聞くと、
「ウチ」と言う。
「静岡帰るの、どうやって?
 財布には小銭しか入ってないけど」
僕はなかなか手ぐせが悪い。

「財布返して」
うん、落ち着いたらね。
「監禁罪」
じゃあどこに泊まるの?
「私の自由を返して」

落ちる

「…返してください」
とすすり泣く声。
この子は大丈夫かな。

翌日、バイトのA君に管理人を任せて、
僕は静岡旅行をした。
「本当に何もお礼しなくていいの?」
という家出娘に、
「5年後もう一度会いに来て、来たけりゃ」
とだけ言って、最寄り駅で財布とスマホを返す。

釣るのが目的ではない。
助けるのが目的だ。
まだまだ助かる娘は、無理して型にはめる必要はない。

今日もまた、ゲームにはまる。
家出娘救出ゲームに…。

あ、102号室は開けておいた方がなにかと楽だな、
と今頃気づく。まだまだゲーム初心者であるw


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ren
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