カキフライにディルマヨネーズ 南アのコクのあるシュナン・ブラン
牡蠣にワインはなかなかの難題だ。昔から牡蠣にはシャブリと言われるが、シャブリにも軽快でカジュアルなものから重めで複雑なものまで幅広い(プティ・シャブリ、シャブリ、シャブリ・プルミエクリュ、シャブリ・グランクリュと産地・区画による格付けがある)。牡蠣も生牡蠣から蒸し牡蠣、カキフライ、ソテー、パスタ、グラタンと様々な調理方法がある。なかでも生牡蠣とワインはハードルが最も高く、樽の効いたコッテリとしたシャブリを合わせたりすると悲劇が襲う。シーフードとワインの相性を探訪しながらこういっては元も子もないが生牡蠣には日本酒が安全だ。とはいえ難しい中でもはまったときはホームランがあるからやめられないし、調理した牡蠣は実によくワインと合う。
さて、今回はカキフライ。スーパーで5個入りのものを購入。一つ頬張っては余韻にワインを合わせていく。お気に入りのディルマヨネーズを添えて。
5種類のワインをセラーから取り出した。
写真の一番右手から順に。
①イタリア トスカーナ州のヴェルメンティーノ: トゥア・リータ ペルラート・デル・ボスコ ヴェルメンティーノ 2,475円
②イタリア マルケ州のパッセリーナ品種: サン・ジョヴァンニ マルタ パッセリーナ 1,733円
③南アフリカ コンスタンシア地区ソーヴィニョン・ブラン68%とセミヨン32%: コンスタンシア・グレン ツー 3,564円
④イタリア マルケ州ペコリーノ品種チウ・チウ レ・メルレッタイエ 1,980円
⑤南アフリカ パール地区シュナン・ブラン: ブラハム シュナン・ブラン, 2,178円
イタリア3本、南アフリカ2本だ。順にカキフライに合わせていく。
①トゥア・リータ ペルラート・デル・ボスコ ヴェルメンティーノ 2,475円
Tuarita, Perlato del Bosco, Toscana Vermentino, IGT, Italy, 2020, 13.5%
香りには軽快にグレープフルーツ、ライムの青い柑橘、柑橘の果皮のほんのりビターな香り、微かにナッティなニュアンス、白い花のフラワリーなタッチ、香りのボリュームは軽めだが磯の香りをしっかりと感じる。
樹齢が若いためか、凝縮感は非常に軽めで果実味が薄い、酸味はややはっきり、ほろ苦さはっきり、シンプルで軽快で個性がやや薄い。ヴェルメンティーノの個性を感じづらいが磯の香りは健在。
カキフライに。ワインの磯のニュアンスは難しい食材のカキにも包容力を発揮。大きな感動はないが安定感あり。ワインにもう少し果実味があれば心を動かす組み合わせになりそうな予感。
相性: ★★★☆☆
②サン・ジョヴァンニ マルタ パッセリーナ 1,733円
Sangiovanni, Marta, Biologico, Marche, I.G.P., Passerina, 2020, 13%
香りには軽快に花梨、アプリコット、メロンの果実香、黄色い花のフラワリーなタッチをややはっきりと、温かい地方のフルーツが香るがファンネル系のハーバルなニュアンスもあり軽快で好印象。
軽快な凝縮感、みずみずしさをしっかり感じる、穏やかな酸味、フレッシュだが温かい地方のフルーツ香が余韻に抜けて余韻は短いが飲みごたえを感じる。
カキフライに。様々な果実香があふれるが凝縮感は軽快で、ハーバルなタッチも含まれていてカキに合わせても問題ない。ただ、感動レベルではない。
相性: ★★★☆☆
③コンスタンシア・グレン ツー 3,564円 (南アフリカ ソーヴィニョン・ブラン68%とセミヨン32%)
香りにはグリーンペッパー、青々としたカットグラスがビビッドに。青いトマトも。セミヨンを感じないほどソーヴィニョン・ブラン支配的な香り。
青々とした果実味、やや明瞭な酸味、トップからフィニッシュまで徹底的にドライでビター、ゆったりと待つと微かだがセミヨンの特徴のラノリンクリームのニュアンスが鼻腔を抜ける。
カキフライに。ワインの強烈にグリーンな香りがカキの磯の香りをも圧倒する。喧嘩はしないが釣り合っている感じでもない。
相性: ★★★☆☆
④チウ・チウ レ・メルレッタイエ 1,980円
Ciu Ciu, Merlettaie, Offida, Pecorino, D.O.C.G., Italy, 2020, 14%
ペコリーノというかわいい名前のブドウ品種。イタリア語で羊を意味するペコラ(pecora)に由来。羊飼いが羊の世話をしながら食べていたブドウとのことだ。
青リンゴ、白桃、スターフルーツ、アプリコットなどエキゾチックさもほんのりと感じる果実香、微かにセルフィーユなどのハーバルな爽やかな香り。
みずみずしくも力のある果実味、こぎみよい酸味、余韻にほろ苦いタッチ、鼻腔を抜ける様々な果実香が楽しい。
カキフライに。様々な果実香にあふれるワインはカキの磯の香り、磯臭さに喧嘩することもあるが、アドリア海沿いのマルケ州で造られたワインのさすがの包容力を見た。
相性: ★★★☆☆
⑤ブラハム シュナン・ブラン, 2,178円
Brahm’s, Chenin Blanc, Paarl, South Africa, 2019, 14%
香りには花梨、マルメロ、黄色いメロン、黄色い花、やや明瞭に樽、酵母香、魅力的で心掴まれる香り。
ジューシーな果実味、中庸ながら的確な酸味、じんわりと旨味やコクが広がる充実のフィニッシュ。
カキフライに。牡蠣の磯の香りをも包むワインのほどよいボリューム、バランスの果実味。また酵母香や樽のニュアンスが衣のクリスピーな風味に結着し、カキにも衣にも繋がる素晴らしい調和。ディルマヨネーズを付けると奥行きのあるリッチなワインへの繋がりがさらにスムーズになる。このワイン、風味に酵母の複雑さや奥行きを含むので、フライの衣などにもよく繋がる。白身魚のフライやフィッシュ・アンド・チップスなどにも合わせてみたい。
相性: ★★★★☆