ファミマあん肝の缶詰 ブルゴーニュ熟成酒(1997年産シャルドネ)
ファミリーマートの缶詰コーナーで見つけた“あんきも”。486円と缶詰としては高額だが、ワインとの相性を確かめたい衝動を抑えきれず購入。
マルハニチロの商品であん肝は中国産。最近、スーパーで見かけるアンコウやあん肝も中国産が多い。水深30~500メートルに生息するとされるが、深海魚と呼ばれる目安となる200メートルよりも浅い水深に生息するもの(キアンコウ)も知られており、実は深海魚ではなかったと言われる。いかにも深い海にへばり付いていそうな見た目と体表のブヨブヨとした感じから深海魚だと思い込んでしまっていたが底引き網漁で獲れる魚だ。
さて、缶詰を開けると肌色のおよそ魚の肝とは思えないような大ぶりなサイズのものが3つほど入っている。いかにもコラーゲンたっぷりのゼリー状のスープをまとっている。
コクの強いあん肝にはワインも深みや力があるものを合わせたい。果実味一辺倒のワインでは肝の生臭さを惹起してしまうので気を付けたい。セラーから取り出したのは、ブルゴーニュ熟成シャルドネ(1997年産)、ヴェネト州のパワフルなタイプのソアーヴェ、サルディーニャ島の潮風香るヴェルメンティーノ品種だ。これら3本ともあん肝との相性は素晴らしかったが特に印象に残ったのはブルゴーニュ熟成酒の複雑さ、奥行きとの相性だ。
あん肝にワインを合わせていく。
ルモワスネ ブルゴーニュ・ブラン キュヴェ・スペシャル, フランス, 1997, 4,266円
Remoissenet, Bourgogne, Cuvée Spéciale, France, 1997, 13%
1877年にピエール・アルフレド・ルモワスネが設立したメゾン。ドメーヌから買い付けたワインをじっくり熟成し、飲み頃に出荷するため貴重な古酒をふんだんにストックしている。買い付けワインのみならず現在は約15haの自社畑を保有しビオロジック農法でブドウを栽培。
開栓すると年月を重ねたことが伝わってくるトップが黒くなったコルク。
色調の艶やかなゴールドは年月の経過を感じさせる。
香りにはアプリコットジャム、開栓日はバニラやカスタードなどもあったが翌々日にはかなり穏やかに、林檎酒やリンゴリキュールのリンゴの力強いフレーバー。
風味は26年の熟成によりカドが取れ穏やかでややまったりとした果実味、酸味はかなり削ぎ落とされているが奥にきらりと残る、果実味は蜜のような風味に発展、中盤から余韻にかけてほろ苦さやヨード、ミネラルを感じる、鼻腔をドライアプリコットが抜けていく。
あん肝にワインを合わせる。アサリなどの貝のような土っぽいニュアンスを含む磯の香りに続き、クリーミーな肝のコクが広がる。そこに熟成したシャルドネのまったりとしたリズムが調和。熟成ワインの懐の広さを体感。相性: ★★★★☆
ピエロパン, ソアーヴェ クラッシコ ラ・ロッカ, ヴェネト, イタリア, 2020, 12%, 3,773円
Pieropan, Soave Classico DOC La Rocca
ラ・ロッカは海抜200~300m、石灰質と粘土が豊富な南西向きの畑の名。ガラスで内張りしたセメントタンク(2500L)で発酵。澱とともに約12ヶ月間熟成。
ゴールドがかったはっきりとした強い色調。
香りにはりんご飴、リンゴのリキュールの濃密なフレーバー。炙ったバニラビーンズを鼻の前に置いたよう。ヘーゼルナッツ、アカシア、フラワリーな蜂蜜、微かにヨード香や炙りわかめが重層的に。
風味は凝縮感の強いリッチでまったりとした果実味は陽のニュアンス、塩味やヨードのニュアンスは心地よく引き締める陰のニュアンス。両面がバランス良い。余韻にも豊かにバニラ香。
あん肝に。ワインの樽香を帯びた完熟果実のまったりとした風味とほのかなミネラルのニュアンスに、あん肝の磯の香り漂う強いコクが見事に調和。相性: ★★★★☆
ピエロ・マンチーニ, プリモ, ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ 2021, 2,049円
Piero Mancini, Primo, Vermentino di Gallura, DOCG, Italy, 2021, 14%
サルディーニャ島で唯一のDOCG格付けのヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ。
香りにはリンゴのリキュール、林檎酒、ピンクグレープフルーツ、グァバにグレープフルーツの果皮、レモングラスなどのハーバルな香り、ほんのりと樽香、白胡椒のスパイスのタッチ、海岸を歩いているような潮の香り。
風味は豊満でジューシーな完熟した果実味、塩味がワインにメリハリを与える、清々しい酸味、余韻にはまったりとした乳酸飲料のようなタッチ、鼻腔を樽香が力強く抜ける、ほろ苦さを伴う充実したリッチな余韻。
あん肝に。重なり合って高め合う部分は少ないが、癖の強いあん肝に全くケンカしない。まったりとしたコクの強い肝を、ワインのハーバルな爽やかさと磯のニュアンスが引き締めて口内がリセットされるマリアージュ。このワインは先日、ウニと合わせて興味深い好相性を見せてくれたが、肝や魚卵系の日本酒しか合わなさそうな難しい食材もしっかりとカバーする抜群の安定感。
癖の強い肝に合わさりながら口内を爽快なリセットに導けるワインはそうそうない。このワインをさらに好きになった。相性: ★★★★☆
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