ドン・キホーテで100円のたこわさ スペイン土着品種メンシアの赤ワインの意外な相性
会食の帰りに酔った状態でつい、コンビニで買い物をしてしまう。すでにお腹いっぱいでその日に食べられないのにおつまみやアイスなど。先日はそのパターンでドン・キホーテでイカの塩辛、イカ明太、たこわさの3点を買っていた。いずれも程よい控えめの量でなんと約100円とお得だったので飛びついてしまった。数日後にイカ明太はレンコンと一緒に炒めたが、他のものが残っていた。
今回はたこわさを開封。たこわさにはビール、日本酒、焼酎だ。さすがにワインは・・・、と思う一方でワインにも、と謎の闘争心が湧き出す。白ワイン3種とシーフードによく合うスペイン ビエルソのメンシア品種を合わせた。
ポッジョ レ ヴォルピ, エポス, フラスカーティー・スーペリオーレ セッコ, 2,079円
Poggio Le Volpi, "Epos" Frascati Superior, Secco DOCG
西にティレニア海を臨むイタリア ラツィオ州で造られるワイン。マルヴァジア系を主体に3種のブドウをブレンド。
香りには干しわらの香り強くドライハーブのタッチ、グレープフルーツ、蜜漬けカリン、白い花、ボリュームは中か中のやや強、全体的にややヴェジェタル、潮の香りも。
風味はみずみずしい口当たり、トップからドライで渋み、ビターネス強め、酸化的なニュアンスをほのかに含み酸味はややはっきり感じる、塩味が心地よいアクセント。ヴェジェタルなニュアンスが強めでやや気難しさもある。
たこわさに。ワサビの爽やかさとハーバルなタッチにワインの干しワラのニュアンスが心地よく重なるのも束の間、すぐにタコから臭みが立ち上がってしまう。相性: ★★☆☆☆
ジュゼッペ・ガッバス, マンザニーレ, 2019, ヴェルメンティーノ・ディ・サルデーニャ , イタリア, 2,464円
Giuseppe Gabbas, Manzanile
「マンザニーレ」のネーミングは、サルデーニア語のマンザヌ=朝を迎える、にちなむ。昔、朝に白ワインを飲む地元の習慣があったことに由来。
香りにはグレープフルーツ、ライムの青いニュアンスも微かに、果実香はやや控えめ、グラスを回すと潮の香りがふわりと広がる。
風味にはみずみずしい口あたり、中庸ながらワインを引き締める酸味でワインには緩さはない、グリップとほのかな渋みとビターネス、余韻にヨードが明瞭で岩塩を舐めた後のよう。
たこわさに。ワインの潮の香りが料理を包み込むのもせつな、すぐにワインの果実味に反発してタコから臭みが立ち上がる。相性: ★★☆☆☆
ライナカ バイオダイナミック ソーヴィニヨン・ブラン, 南アフリカ, 3,168円
reyneke, sauvignon blanc, organic, Stellenbosch, South Africa, 2019, 13.5%
海から6㎞ほどの35haのブドウ畑はすべてビオディナミに基づいた栽培を行っており、海抜250m~350mの標高にある。ビオディナミは、オーガニック農法の一種で土壌のエネルギーと自然界に存在する要素の力を引き上げる、1924年にオーストリアの思想家ルドルフ・シュナイダーが提唱したもの。たとえば月の満ち欠けによって収穫のタイミングが判断される。かのロマネ・コンティも採用している農法だ。
香りには刈りたて芝の鮮明なグリーンなフレーバーが支配的、果実香はピンクグレープフルーツ、海岸を歩いているような潮っぽい香りも。
風味にはみずみずしくバネのある果実味、飲んだ後に鼻腔を抜ける樽香や酵母の香りがワインに奥行きや複雑さを与える。
先日は牡蠣のレモンオイル煮に最高の相性を見せてくれたワインで、たこわさにも期待しつつ合わせる。ワインの刈りたての芝のような鮮烈なグリーンでハーバルな香りにワサビの風味が共鳴。この共鳴のレベルが非常に高く果実味に反発して立ち上がるタコの臭みが多少ごまかされたが期待未満。相性: ★★★☆☆
ラガール・デ・ロブラ メンシア プロダクション リミターダ ビノス・デ・アルガンサ, スペイン, 2018, 2,178円
Lagar de Robla, Vinos de Arganza, Spain
ワイナリーは10ヘクタールの畑を標高650mから800mの斜面に所有。ブドウの樹齢は50~70年。
香りにはプラムジャム、カシスリキュールなどの濃厚な果実香にメントール、針葉樹の爽やかな香りが絡み、カカオにチョコレートやよく馴染んだ樽香も。香りは上質なボルドーワインのよう(メンシア品種はよくピノ・ノワールに例えられるがこのワインはボルドー的だ)。芳香成分が多くかつ強く、潮風を嗅いだように鼻が乾くような感覚を覚える。
密度の高い充実の果実味、舌が乾くようなタンニン、強い塩味と酸味、非常に長い余韻、多少の緊張感もあるフィネスのしっかりしたワイン。今年飲んだスペインワインのなかでも最も印象に残るものの一つになりそう。この価格でこのワインを飲んだ後の満足感を得られるとは感動的。
たこわさに。白ワイントリオがなぎ倒された後、どうして赤ワインが合おうかと全く期待せず、たこわさの余韻にワインをひと口。ワインのメントールのハーバルなタッチがわさびの香味に調和、またワインの塩味がタコの風味の臭みを避けて旨味に届く。ワインの果実味がパワフルでたこわさをやや圧倒するが、反面、臭みを立ち上げることもしない。たこわさと赤ワインの意外な好相性。相性: ★★★★☆
加工食品なのでタコの鮮度は刺身ほど高くはない。そこにワインの果実味がネガティブに作用して臭みが立ち上がるのかもしれない。それでもスペイン ビエルソのメンシア品種の塩味と臭みを立ち上げるスキを与えない圧倒的な果実味が興味深い相性を見せてくれた。