大会レポート⑭ 交流戦 狭山ヶ丘OB対日本航空石川OB
三木総合防災公園野球場で繰り広げられている熱戦は、ここから折り返し。第三試合の狭山ヶ丘高校OB(埼玉)と日本航空石川高校OB(石川)の一戦が始まろうとしています。
先攻は一塁側の狭山ヶ丘、1960年の創部以降、夏の埼玉県大会の最高成績はベスト8でした。2020年の独自大会ではそのベスト8の壁を越えると、勢いそのままに決勝まで進出。決勝はメットライフドーム(現ベルーナドーム)で行われ、ともに初優勝をかけた昌平との試合に勝利し、見事夏の埼玉県大会初優勝を成し遂げました。
後攻は三塁側の日本航空石川、2019年の秋の北信越大会では準優勝、2020年の春の選抜の切符を勝ち取っていました。夏の独自大会では秋に二度大敗していたライバル星稜に勝利。秋のリベンジを果たすとともに、石川県のチャンピオンに輝きました。
両チームのスターティングラインナップは以下の通りです。
狭山ヶ丘は1番から3番までの上位打線3人は当時と同じ打順。独自大会では3人合計で36安打を記録した上位打線に、チャンスメークの期待がかかります。
対する日本航空石川は、スタメンだった選手たちが上位打線に多く名を連ね、打線を牽引します。更にベンチには当時のキャプテンで独自大会でも複数の長打を放っている井口太陽選手が控えているなど、層の厚さを感じさせます。
日本航空石川の先発は國兼大聖投手。主に内野手として活躍していて、この大会でも一塁手として登録されている國兼投手ですが、この日は大事な先発のマウンドを託されました。
その國兼投手の立ち上がり、長身を活かして高いリリースポイントから投げ下ろすようなフォームで投げ込んでいきます。
先頭打者から1つ目のアウトを難なく奪った國兼投手でしたが、寒さの影響もあるのか制球を乱してしまい、4者連続で四球を与え、押し出しでの先制点を許してしまいました。
なおも一死満塁で打席には6番の平田颯也選手。痛烈な打球はピッチャー返しのライナーとなり、國兼投手に直撃します。内野安打となり、狭山ヶ丘が1点を追加します。
打球が直撃した國兼投手を心配した日本航空石川の選手たちがマウンドへと集まり、狭山ヶ丘の選手たちも集まりました。國兼投手は問題ないことをアピールすると、最後は両チームの選手たちが笑顔で円陣を組みました。こうした勝敗を超えた繋がりが感じられるシーンが見られるのも、本大会ならではです。
狭山ヶ丘はその後さらに内野ゴロで1点を追加し、初回の攻撃で合計3得点をあげました。
狭山ヶ丘の先発は遠藤寛大投手。
ストレートを低めに集めるピッチングで、日本航空石川打線を打たせて取ります。バックの堅い守りもあり、初回の守りを三者凡退で切り抜けました。
2回表、狭山ヶ丘の攻撃。初回は苦しい立ち上がりとなった國兼投手ですが、2回は制球を取り戻しアウト2つを奪います。
二死から打席に立ったのは2番の川俣勇気選手。センター前に落ちるヒットで出塁すると、相手の守備が打球の処理にもたつく間に隙をついて一気に三塁まで到達。チャンスを作ります。
このチャンスで迎えるのは3番の正高奏太選手。当時のキャプテンでもある正高選手は、独自大会では8試合全て3番でスタメン出場、全試合で安打を放ち打線を牽引しました。高校卒業後は名門の亜細亜大学に進学。3年時から学生コーチに転身しましたが、新チームのキャプテンに就任。異例の選手復帰を果たすこととなりました。
その正高選手、初球を捉えると打球はライト線を破りフェンスまで到達。ライトが打球に追いついたころには既に三塁に到達寸前という俊足で、そのままホームへ。最後はヘッドスライディングでホームイン。キャプテンのランニングホームランで狭山ヶ丘が2点を追加しました。
点差を広げられた日本航空石川は2回、先頭で打席に立ったのが中谷仁人選手。中谷選手は独自大会全試合でスタメンマスクを被ったほか、二塁送球1.8秒の強肩で投手陣を助けてきました。
わずか2球で追い込まれるも、際どいボールを見極めてカウント2-2となった6球目、低めのストレートを引っ張った打球は放物線を描いてレフトスタンドへ吸い込まれていきました。この一発が日本航空石川にとって反撃の狼煙となるでしょうか。
これ以上の追加点を与えたくない日本航空石川は、3回から継投に入ります。2番手として、セカンドを守っていた天羽柊人投手が登板します。
天羽投手は高校1年の1月に中学時代のライバルがいた日本航空石川へ転校。規定により1年間は公式戦に出場できませんでしたが、日本航空石川での初の公式戦となる独自大会では、全試合にスタメン出場し準決勝では猛打賞の活躍でした。
その天羽投手、オーバースローとサイドスローの中間、スリークォーターのフォームからボールを内外角に散らし、狭山ヶ丘打線に的を絞らせません。この回の守備、日本航空石川は初めて三者凡退で終えました。
その裏、先頭の9番草刈桜太選手がショートの頭を越えるヒットで出塁します。打順はトップへと戻り、1番の天羽投手へ。天羽投手は変化球にタイミングを合わせてライト前に運び出塁。下位打線から上位打線へ繋ぎ、チャンスを作ります。
チャンスで迎えた城田凌介選手の打球は左中間へのタイムリーヒットになるかと思いきや、狭山ヶ丘のショート正高選手がジャンプして頭上の打球に飛びつくファインプレー。飛び出していた二塁ランナーは戻り切れず、ダブルプレーとなってしまいました。
日本航空石川は不運な打球もあり、この回の得点とはなりませんでした。
日本航空石川は4回からさらに投手交代。3番手として山中大空投手がマウンドに上がりました。山中投手は独自大会の開幕投手を任せられ初戦で先発したほか、試合の最後を任せられるなど、あらゆる起用法で活躍しました。
大きな体格からノビのある直球を投げ込み、狭山ヶ丘打線に出塁を許しません。日本航空石川はこれで2イニング連続で三者凡退に抑えました。
狭山ヶ丘も4回から継投に入ります。伊藤直希投手が遠藤投手からマウンドを引き継ぎました。独自大会は3試合にリリーフで登板し、いずれも無失点でした。日本航空石川に流れを渡さないためにも、この試合でも無失点リリーフが期待されます。
その期待に応えるかのように、伊藤投手はストレートで奪った2つの空振り三振を含む三者凡退のピッチング。反撃の隙を与えません。
伊藤投手の気迫のこもったピッチングをうけ、狭山ヶ丘打線も奮起します。この回先頭の川俣選手がセンター返しで出塁すると、盗塁を成功させます。さらに四球とバッテリーエラーの間に1点を追加します。
なおも二死二三塁のチャンスで打席には7番の阿部結希選手。初球を捉えると、打球は痛烈なドライブ回転がかかったままショートの横を抜けていきました。この回2点目となる追加点で7-1と点差を広げます。
6回表、狭山ヶ丘打線が4巡目に突入するところで、日本航空石川はピッチャー交代。4番手として杉本真紀人投手が登板します。高校時代は捕手としてチームを支え、この試合でも途中出場でマスクを被りました。ここからはピッチングでチームを勝利へと導きます。
狭山ヶ丘は1番の金子侑渡選手が四球を選んで出塁すると、代打で登場した榎本光陽選手が内野安打で出塁。これには狭山ヶ丘ベンチも大きく沸きます。
更にヒットが生まれて満塁としますが、ここは杉本投手が低めいっぱいのボールで見逃し三振を奪い、このピンチを脱します。
6回裏の日本航空石川の攻撃は、満塁のピンチを凌いだ杉本投手から始まります。先頭の杉本投手がライトへの流し打ちで出塁すると、続く代打の田中歩選手もレフト前ヒットで出塁。チャンスが到来します。
ここで打席には3番手として登板した山中投手。内角高めのボールに詰まらされるも、振り抜いた打球はセンターの前へ落ちました。この当たりで二塁ランナーが一気にホームイン。日本航空石川が2点目を獲得しました。
更に追撃のチャンスで打席には当時のキャプテンの井口太陽選手。期待が高まるキャプテンの打席は一塁線への鋭い打球に。しかしこれをファーストの齋藤慧選手がダイレクトでキャッチ。一塁ランナーも戻りきれず、ダブルプレーに。
そして続く遠藤大志選手も見逃し三振に倒れスリーアウト。反撃もここまでとなりました。
そして7回表の狭山ヶ丘の攻撃が終了したところで制限時間に到達。最終スコア7-2で狭山ヶ丘の勝利となりました。
両チームにホームランが飛び出したこの試合、狭山ヶ丘が序盤から試合の主導権を握り、最後まで渡しませんでした。継投で試合を繋いだ遠藤投手、伊藤投手はともに四死球0と安定したピッチングで試合を作りました。
対する日本航空石川は、何度も連打でチャンスを作るなど、打線の繋がりが光る場面が多く見られました。投手陣は4投手全員が三振を奪い、タイプの異なる投手たちによる継投を見せました。
両チームの選手成績は以下の通りです。
文:二瓶祐綺
写真:あの夏を取り戻せ実行委員会
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