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大会レポート④ 特別試合 関大北陽OB対倉吉東OB

 1-1の引き分けとなった松山聖稜OBと佐久長聖OBによる第一試合を終え、特別試合第二試合の関大北陽高校OB(大阪)と倉吉東高校OB(鳥取)による一戦がいよいよ始まります。

 先攻は一塁側の関大北陽、北陽高校時代の平成19年(2007年)の春の選抜以来となる甲子園です。夏の甲子園の出場は平成11年(1999年)まで遡ります。一方、後攻の三塁側の倉吉東は平成7年(1995年)の夏の選手権大会以来の甲子園です。久しぶりに甲子園に帰ってきた学校同士の一戦となりました。

試合前に円陣を組む倉吉東の選手たち

 両校のスターティングラインナップは以下の通りです。
 関大北陽は独自大会6試合で合計52得点をあげた強力打線に注目です。一方の倉吉東は初戦から3試合連続の1点差勝利や、3度の逆転勝利など、勝負強さが魅力的です。

 朝8:00のシートノックから始まった甲子園での1日も、あっという間にフィナーレ。この第二試合でも第一試合に引き続きスタンドではブラスバンドとチアリーダーによる演奏と声援が選手たちを後押しします。更に他の参加チームの選手たちもバルーンスティックを持って応援を盛り上げています。
 ベンチ前に整列した両チームの選手たちが審判の集合の声と共に駆け出しました。いよいよこの日最後の試合の幕が上がります。

整列する両チームの選手たち

 まずマウンドに上がったのは倉吉東の当時のエース、桑本達投手。独自大会では準決勝、決勝と2日連続での完投という力投を見せました。
 右サイドハンドからの緩急を活かしたピッチングで、先頭打者を打ち取ります。

倉吉東の先発の桑本達投手

 一死から打席には関大北陽の2番打者、藤澤駿平選手。
 カウント0-2からの3球目、外角の球を逆らわずに逆方向へ。打球が右中間を破る間に、バッターランナーの藤澤選手は二塁も蹴って三塁へ。スリーベースヒットで先制のチャンスを作ります。
 この藤澤選手、現在は関西大学の準硬式野球部に所属しており、主に一番打者として活躍しているだけでなく、投手としても24年春のリーグ戦で投手三冠に輝くなど、二刀流で活躍している選手です。

関大北陽の2番打者の藤澤駿平選手

 続く3番川﨑宗太選手の打球はふらふらと上がり三塁ベンチ前へ。これを追いかけた倉吉東のキャッチャー、金居大太郎選手がスライディングキャッチ。ファインプレーに倉吉東ベンチ、そして場内は大きく盛り上がります。

倉吉東の捕手 金居大太郎選手

 しかし一瞬の隙を見逃さなかったのが三塁ランナーの藤澤選手。ホームベースが空いている隙を見逃さず、果敢にタッチアップで一気にホームイン。先制点は関大北陽に入りました。
 先制を許した桑本投手でしたが、後続を打ち取り最少失点で切り抜けます。

 その裏、関大北陽のマウンドには先発の西村皇二郎投手が上がります。その西村投手は最速144km/hのボールで簡単にアウトを2つ取ります。
 その後死球でランナーを1人出し、打席に迎えるは先程の守備でファインプレーを見せた金居選手。その初球、流した打球は三遊間を破りヒットに。二死一二塁と同点のチャンスを作ります。
 しかしここは西村投手が高めの速球で空振り三振を奪い、同点とはなりませんでした。

 2回表、先頭打者の坂本壮梧選手の打球はレフトのファールゾーンへのフライ。これに対して予めレフト線寄りに守っていたレフトの西垣篤志選手がフェンス手前でキャッチ。当時のキャプテンである西垣選手が守備でチームを鼓舞します。

倉吉東のレフト 西垣篤志選手

↓西垣選手のインタビューはこちらから!

 一死から四球で出塁した6番の小中優貴選手が盗塁を決めチャンスメークするものの、倉吉東の桑本投手の安定感のあるピッチングが光り、この回の関大北陽は無得点でした。

 2回裏、関大北陽のマウンドには背番号1の樽見海星投手の姿が。樽見投手は独自大会で初めてエースナンバーの1番を背負ったというエピソードがあります。この日も独自大会と同じく1番を背負っての登板となりました。

↓樽見投手のインタビューはこちらから!

 その樽見投手相手に先頭の松島凌太選手の打球は三塁線へ。抜けていれば長打かという打球に対し、関大北陽のサード川﨑宗太選手はダイビングキャッチの好プレーを見せます。しかし一塁への送球は間に合わず内野安打となり出塁します。

関大北陽のサード 川﨑宗太選手

 続く7番綿田啓志選手はレフト線へのツーベースヒットで続きます。更に西谷天司選手は四球を選び無死満塁に。同点、そして逆転のチャンスを作ります。

ツーベースヒットを放ち二塁に到達する綿田啓志選手

 このチャンスで打席に立つのは先発投手の桑本達投手。自らを援護する得点をあげたいところでしたが、高めのチェンジアップに体勢を崩されてしまい空振り三振。関大北陽の樽見投手も簡単に点は与えません。
 続く1番政門友太選手の打球はショート正面へのゴロに。ダブルプレーかと思われましたが、政門選手の懸命な走塁もあり一塁はセーフに。併殺崩れとなる間に倉吉東が得点。1-1の同点となりました。
 なおも二死一三塁と倉吉東の勝ち越しのチャンスでしたが、ここは樽見投手が空振り三振を奪いチェンジ。勝ち越しは許しませんでした。

 3回表、この回から倉吉東のマウンドには小椋大投手が上がります。
 対する関大北陽は第一打席でスリーベースヒットを放ち、先制点となる好走塁も見せた藤澤選手が再び脚で魅せます。サードゴロで一塁ランナーの坪山雄大選手と入れ替わる形で出塁すると初球から二盗。更に三盗も決めてチャンスを拡大します。
 勝ち越したい関大北陽でしたが、小椋投手の力強いストレートに押し込まれて凡退。勝ち越しとはなりませんでした。

倉吉東の2番手 小椋大投手

 3回裏、関大北陽は3番手の稗田将太郎投手にスイッチ。稗田投手はブルペンで肩を作りながら試合の戦況を見守り、自身の出番を虎視眈々と窺っていました。
 倉吉東打線はその代わった稗田投手から金居大太郎選手のこの日2本目となる安打、さらに死球でチャンスを作ります。これで両チームとも3イニング連続で得点圏にランナーを進めました。
 しかしその後は2者連続で凡退。両チームともに勝ち越しのホームがなかなか遠い展開となっています。

ブルペンで戦況を見守る稗田将太郎投手

 その後も両チーム無得点で迎えた5回裏、関大北陽はこの回からキャッチャーに牛尾陽介選手、セカンドに勝田成選手、ショートに山田悠平選手、レフトに重定孝紀選手、センターに杉本瞬選手が入ります。こちらの5選手は2020年当時2年生だった選手たちです。
 特に勝田選手と杉本選手は2年生からレギュラーとして独自大会にも出場していました。あの夏の独自大会を共に戦い抜いた後輩たちも、先輩たちと共に甲子園のグラウンドに立ちました。
 またセカンドの勝田選手は2024年7月にチェコとオランダにて行われたプラハベースボールウィーク、ハーレムベースボールウィークの大学日本代表にも選出されています。大学代表候補選手強化合宿を2日後に控えた中でしたが、先輩たちと戦うために甲子園球場へ駆け付けました。

セカンドで途中出場した関大北陽の勝田成選手

 そんな心強い後輩たちがバックを守る中、前の回から登板している小豆野隼伍投手は外角にボールを集めて三者連続で空振り三振を奪います。

関大北陽の4番手 小豆野隼伍投手

 残り時間もわずかとなる中、倉吉東のマウンドには3番手の佐々木栄輔投手。
 佐々木投手は関大北陽打線を三者凡退に抑え、最後となるであろう味方の攻撃へ流れを作ります。

 残り時間数分で始まった6回裏、倉吉東の攻撃。打者はファーストストライクから積極的にスイングしていきます。
 一死から打席に入ったのは途中出場の岩垣曉選手。1-0からの二球目を振り抜いて打球は右中間を破ります。岩垣選手は二塁まで到達し、サヨナラのチャンスとなります。

二塁打を放ちベンチに向かって喜びを見せる岩垣曉選手

 試合最終盤のこの展開に場内は大きく盛り上がります。倉吉東ベンチも大盛り上がり。スタンドの応援もここに来てより一層大きくなります。
 しかしマウンドの小豆野投手も意地を見せ、空振り三振を奪います。
 打席に向かうのは松村奏芽選手。この時点で制限時間に達したため、試合の行方は彼に預けられました。

岩垣選手の二塁打に大きく盛り上がる倉吉東ベンチと応援団

 松村選手の打席の初球、外角のストレートを捉えた当たりはライトへ。ライトの寺前陽真選手が下がりながら打球を追います。抜ければ倉吉東のサヨナラ勝利、アウトなら引き分けとなります。
 運命の打球は寺前選手のグラブへ収まりました。そしてここで試合終了。1-1の引き分けとなりました。

打球をキャッチし安堵の表情を見せるライトの寺前陽真選手

 この日行われた特別試合は、2試合ともに1-1の引き分けという結果となりました。
 3年前に甲子園を奪われた選手たちだからこそ、試合の勝敗以上に甲子園でプレーできることへの喜びが伝わってくる2試合となりました。
 また2試合通じてエラーは0。中には高校卒業後は野球から離れておりブランクのある選手もいたでしょうが、甲子園という聖地が選手の力を引き出す場所なのか、2試合とも非常に締まった試合でした。

試合を終え、一礼する両チームの選手たち

 両チームの選手成績は以下の通りです。

文:二瓶祐綺
写真:あの夏を取り戻せ実行委員会


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