10年後を見通すための本
なぜ日本からはappleやAmazonのような企業が誕生しないのか。
自信をオタキングと称する岡田斗司夫氏が語るには、日本の社長達がSF小説を読まずに育ってきたからだという。
若いうちに、こと10代から20代のあいだにSF小説を読んできた人間には、10年後を見通すほどの目が養われるという。
SF小説で描かれる未来の形とは
なぜSF小説によって10年後を見通すことができるようになるのか。
それは、技術革新とともに発展してきた社会の中で、そこに住まう人々の生活までもを描いているからだ。単に宇宙に住めるようになったとか、旅行で月に行けるようになったというだけではない。
月を居住可能な惑星としたとき人類が真っ先に送り込んだのは、流刑者達だった。そこから何十年もたった後でも、地球人は月世界人を野蛮な流刑者の子孫として軽蔑し、月世界人たちは地球人のことを豊かな資源を有する星に住まう差別主義者としてみなす。SF小説の世界は社会を描く。
月は無慈悲な夜の女王
岡田斗司夫氏は20代のうちに読んでおくべきSF小説として3作品を紹介した。
神の目の小さな塵
タイタンの妖女
月は無慈悲な夜の女王
であった。今回は私が、月は無慈悲な夜の女王を読み終えた感想を書き記す。
感想
ハインラインの小説を読むのは2度目で、以前読んだのは夏への扉だった。
翻訳小説を読みなれていないと、読みなれない言葉の順序やあまりに長い読点から読点までに疲れてしまう。ハインラインの文体は中でもややこしいと感じた。翻訳の癖に加えて執筆当時の時代的な言葉かもしれない。
しかも描かれているのは見たこともない月の都市の生活や地名で、それらの情景をいちいち頭に浮かべるために序盤はかなり体力を使った。
正直言って序盤は読み進めるのが苦しかった。実際全体を読了するのに2週間弱を要した。普段からあまり読むのは早くないが、記録的な長さだ。
ようやく月世界都市の情景がふんわり浮かんでくると、今度は月世界独特の生活様式を学んだ。家系型家族の概念などは聞きなれなかったが、聞いていて純粋に面白かった。
次に細胞組織の話が出てきたが、これは理解を諦めた。次回読むときの自分にお願いします。
中盤には部隊が地球に移され、そして再び月に戻されるが、そのころには月世界の情景もすっかり脳に刻まれていた。マヌエル達と一緒に自分も懐かしい風景に歓喜した。
風景の描写にはやや苦慮したが、そこで動き回るキャラクター達はとてもすんなり自分の中に入ってきた。見慣れない月世界を必死に頭に思い描けば、そこには自然に月世界の人々やキャラクターたちが入ってきて、厳しくも活気にあふれた月世界が見えてくる。ハインラインの文にはそんな印象を受けた。
終盤の展開は激動であったが、教授やマイクとの別れさえも感情に訴えるような描写がなかったことが印象的だった。
マヌエルは今だにマイクが突然しゃべりだすような気がしている、という感覚を私たちも共有したのではないだろうか。
やはり傑作と言われるだけあって、1度で内容の考察まで踏み込むのは浅はかだと感じた。
今後2度3度と呼んでいくことになる作品だと思う。
考察に関しては岡田斗司夫ゼミを見ればいいし。
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