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メタバースに移住したら下半身が裸になっていた件〜安心してください履いてませんよ〜
10月18日。高峰玲人、時代の最先端たるメタバース空間に立つ。
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なぜか下半身は裸ですが。
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ちゃんと、おうちじゃ、ぱんつ履いてたもん!履いてたんだもん!ふえええええぇん
メタバース空間は恐ろしい、なぜなら、ただログインしただけなのに、すべてのパーソナルデータが処理されて、ユーザーの嗜好をすぐに提示し、レコメンドするからである。まさしくパーソナルマーケティングである。つまり、私は下半身露出の趣味があるということである。レコメンドから気づかされる、自分の新たな趣味。
時代の最先端たるメタバースについて、俺のセクシー画像と共に論考してみたい。あるメタバースを見ると、メタバースの収益やマネタイズは、NFTの販売、広告宣伝、ゲーム、イベント開催、ファッションとアイテム販売としている。今回はこれについて考えたい。
語られない「メタバース上のゲーム」
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メタバース業者のWebを見ていると、ゲームとマネタイズについて語られていることは多いが、そもそもそれがどんなゲームなのか、その点について語るメタバース業者はほとんどいない。これだけスマホゲームが雨後の筍のように生えて、不採算ゲームはどんどん撤退されるというこの時勢において(スクウェア・エニックスでさえFFシリーズを1年ほどで撤退している)、自分たちが作ろう、提供しよう、収益の主軸としようとする「ゲーム」について、何らの魅力を一般ユーザーに対して語ることができないというのは、大変に片手落ちである。
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一方、視点を変えると、メタバース業者にとってはゲームなどは本質ではなく、仮想通貨の流通やNFT販売による手数料商売、その仕組み、キャッシュフロー・マネタイズ・システムこそがメタバース業者の本命なので、ゲームごときはどうでもいいものと言っても過言ではない。時勢と状況に合わせて、何らかのゲームをマネタイズシステムと連携させればいいだけなので、3D空間としてのメタバースは換骨奪胎できるため、つまるところどうでもいい。これが、「メタバース業者が作る3D空間っていまいち」な理由であり、メタバース業者が目を覆うようなしょっぱいアバターを平気で出してきたり、ゲームに本気で取り組まない根本的な理由である。ブロックチェーン技術が最初フィンテックのカテゴリであったことを思い出さなくてはならない。メタバース業者は、本質的にはエンターテインメント業者ではなくフィンテック業者なのではないか。
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メタバースの成功例として、フォートナイトやあつまれどうぶつの森、マインクラフトが挙げられているが、これらはそもそもゲームが先にあり、エンターテイメントとして成立したのであって、昨今の情勢メタバースのように3D空間ありきで後追いでゲームを作ったのではないので、分離して考えたい。
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ところでNFTゲームといえば、国産では「資産性ミリオンアーサー」ではないかと思うのだが、これの面白さをWEBサイトからわかる人いる?ゲームするのに1枚三千円のシールを買うのだったら、2枚分ためてスプラトゥーン3でも買ったらどうか。これがメタバースの「ゲーム」の実情である。娯楽というよりも、資金運用の一手段なのだ。
3D空間とは無関係なNFTを、なぜメタバースで使うのか?
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NFTとは非代替性トークンのことであり、ものすごく単純に表現するとコピーできないデジタルデータである。何らかの手段でコピーできたとしても、原本であることが証明される。デジタルなトレーディングカードの例がわかりやすい。ディスプレイに表示されたカードは何らかのしゅだんで(単純にスクリーンキャプチャでも)複製できるが、オリジナルの原本性は損なわれないので、他のものはすべて偽物、コピーである、ということができる。アバター装飾用デジタルデータ、あるいはアバターそのものもNFTで取引される。
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ではこれが3D空間であるメタバースと何の関連性があるのか?というと全く無い。NFTとメタバースは切り離して考えるべきだ。NFTアートオークションが活況を呈しているけれども、これは従来の現代アートの文脈によって語られるべきで、メロンの初競りみたいな暴力的な高値がつくことは今までも多数あった。それは単に今までのコンテクストの拡大再生産に過ぎない。メタバースだからといって、初心者の作品がすぐに認められて高額で取引される、などという事象は殆どない。あっても宝くじが当たるレベルの話である。
後で広告のところで触れなければならないが、例えばNFTアートがどれだけの集客力があるか、というとそれほど集客力はない。アートに集客力があるのなら、リアル美術館はもっと混雑する。したがって、メタバース空間にNFTの展示場を作ったとしても、何らの集客にはなり得ない。
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NFTアートに価値を見いだせるとするなら、今までなら地方に埋もれてしまうような名画(例えば諸橋近代美術館のダリ・コレクションなど)は、デジタル空間上に展示することで、所有権や原本性を損なうことなく展示が可能であろう。だが、それは決してメタバースは必須条件ではないのである。
では、全く関係のないNFTを、なぜ、メタバース業者はそれが重要な要素であるかのように取り上げるのか?それは、そこにお金の匂いがするからである。前項で「メタバース業者はエンターテインメントよりもフィンテックである」と述べたが、NFTを流通させる仕組みに、手数料売上の仕組みを作りたいからである。3D空間はそのおまけ、エサにすぎないのである。
メタバースでの広告
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ネット広告は、ある意味で表示回数が全てである。ネット広告においてはクリック率やコンバージョン率といった質を表す指標があるけれども、それでも表示回数が多いことに越したことはない。AISASもロングテールも、結局は数を集めなければならず、それなりに表示回数を稼がなければならないのである。
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では、メタバースがどれくらいアクセス数を稼げるのかというと、現時点では全く悲しい状態である。メタバースでの広告価値を端的に表示する媒体スペックシートが一般ユーザーが閲覧できる形で存在しないことが、それを証明している。例えばこのメタバースの口コミを見てみよう。
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Webサイトであれば一日xxxページビュー、xxx名のユニークユーザーと明示されるけれども、そのような明示がない限り、一般企業は費用対効果を判断できないので、広告費用を使うことを上役に承認されない(もちろん実験的な費用投入は存在する)。これは金額が大きければ大きいほど、決裁権限の問題で無理解な上役に説明をしなければならず(そもそもメタバースって何?というところから説明をしなければならない)、費用対効果は誰にでも、上層部のおじいちゃんおばあちゃんにもわかるものでなければならない。しかし費用対効果を説明できる方法がない。すなわち、メタバース上の広告事業は儲からない。
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呆然とメタバースの空を見上げる
また、広告の誘導先も問題となる。広告にエンゲージする(何らかの操作を行う、クリックする)とブラウザが立ち上がるのはユーザーにとって興覚めであるから、メタバース上で商品購入と決裁が行われなければならない。すなわち、ネット上にショップが存在しなければならないが、これは取り扱いが増えれば増えるほど、在庫管理や物流、予約(宿泊、交通など)、ダウンロード販売、サブスクリプション、あらゆるeコマース活動のバックヤードを網羅しなければならず、1つのメタバース上で全てを網羅することは不可能になる。
イベント開催とチケット販売について
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イベント開催は、つまるところ広告でありチケット販売である。人が集まらなければ儲からないのは自明の理だ。音楽イベントを例に挙げるとして、問題となるのは、「メタバースでやることに意味があるのか」ということだ。フォートナイトで音楽イベントをやって盛り上がった事例はあるものの、最初から人がいるところにイベントを投入したのか、人がいないところにイベントを投入して人を呼べるか、というのは全く別なアプローチである、ということだ。前者をもってメタバースのイベントの成功事例として、後者について語るのは論理的ではない。
チケット販売がメタバース得意のNFTでなければならないか、というとそうではない。今でもネットチケットはNFTを使わなくても売られており十分に機能している。
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メタバースでオンライン・コンサートをしなければならないか、というと、そこにはあまりビジネスとしては旨味はない。Youtubeで配信するほうが、ユーザーのアクセスのしやすさという面では遥かに利点がある。メタバースコンサートが唯一利点があるとするなら、演奏者側にフィードバックがあり、双方向コミュニケーションの可能性があるという点だが、ショービジネスにおいては演奏者側に高いアドリブ性が求められるし、何より台本の範囲内でのコミュニケーションに留まる。また、ミュージカルや劇のような台本がかっちりしている舞台芸術については、メタバースであったとしても、双方向のありようが無い。
これらの欠点を補って余りある、メタバース様式の全く新しい舞台芸術が提案できるのなら、そこには独自性があり、集客のフックとなりえるかもしれない。
ファッションについて
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3Dモデルのファッション・ショーケースとして、メタバースは多少の価値がある。しかしながら、その価値は、3D空間がいかにリアルに近いのかという点に依存しており、ザッカーバック氏が鼻で笑われてしまった程度の3Dのクオリティでは全く意味をなさず、むしろショーケースとしての価値を損ねる。
アバターがデフォルメされた(例えば、スプラトゥーンのような)メタバースにおいては、たしかにそこに似合うファッションアイテムを出品することは可能だが、それを仮に注文したとして、アバターには似合っていたとしても、リアル肉体に合うのかどうかは別問題であり、当然メタバースでは手触り感や服の感触は現時点では感じられないから、それは従来のファッションWebストアと同じ問題であり、メタバース化されたからといって解決されるわけではない。
決済手段について
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一般にメタバースでは暗号通貨イーサリアムで決済されることがベースとなっているが、イーサリアムではごはんを食べられない、という点に注目しておきたい。
Amazonは現時点で暗号通貨決済を見送っている。これは様々な大人の事情がありその点は割愛するが、つまりイーサを持っていてもそれ自体では食料は買えない。ビットコインで決済して実際にモノを買えるのはビックカメラぐらいで、イーサで決済して実物を買える店舗というのは見当たらない。あったとしてもごく少数である。
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最近、クレジットカード端末が非常に高度化しており、様々な決済手段に対応している。クレジットカード、銀聯、QR決済、電子マネー、デビットカード。しかしながら暗号通貨には未だ対応していない。ネット決済大手のGMOペイメントでさえ、暗号通貨決済は行っていない。全ては交換所であるBitflyer経由である。
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現時点では、どれだけメタバースで個人商店を開いて商売繁盛してイーサを手に入れたとしても、リアル通貨である円、米ドル、ユーロに交換しなければ生活できない。交換するには交換所に手数料を払わなければならないし、交換した時点で売上となり、所得税を収めなければならない。それならば最初から円や米ドルで決済したほうが、メタバースの一般ユーザーにとっては、税務申告などは必要なく、簡単で手早いのではないか?という疑問が拭えない。では、なぜ、メタバースはNFT決済を推奨するのであろうか。それは、暗号通貨を使ったキャッシュフロー・マネタイズ・システ厶の構築こそが本命であるからだ。濡れ手に粟の、何もしなくてもちゃりんちゃりんと儲かる「エコシステム」。フローした暗号通貨をリアルマネーにすることで、一攫千金を狙える、成功が約束された投機システムである。
メタバースのマネタイズ・エコシステム
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メタバースについて、真面目に誠実に取り組んでいる企業やエンジニアはもちろん存在していて、彼らの誠実な努力は称賛すべきだけれども、一発当てて儲けようとするメタバースも、多く存在することは事実である。彼らは、税金の高い日本から抜け出し、現金化のしやすい外国、特に東南アジアに法人拠点を置き、投資を集めてメタバースらしきものを作り、暗号通貨がフローする仕組みを作り、どこかの段階でリアルマネーに換金することを狙っているのである。
メタバース経済圏
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このように論考を重ねてゆくと、「メタバース経済圏」などというだいそれた表現は、おこがましい感がある。なぜなら、どのように立派な論があり、哲学があり、理想があったとしても、結局のところ、お尻が丸出しであるからである。
人のいないメタバース飽きた
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論考は飽きたので尻すぼみである。
ろくおくえんの価値を問うログインユーザー数。
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ハトバースのほうが人がいる。人ではないハトだ。
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これからはヒトではなくハトの時代である。モノからヒト、ヒトからハトへ。パラダイムシフトは続いていく。