許されようとは思いません

著者:芦沢央
出版社:新潮
初版:2019年

あらすじ

短編集。それぞれ悪意や暗い感情もろもろを核として構成されている。ミステリなので謎を追う楽しみ方もできる。

印象に残ったセンテンスなど

目撃者はいなかった:終盤、協力を断った途端に牙をむく悪意
ありがとう、ばあば:精神的に成熟した幼年のサイコパス性
絵の中の男:全体のモチーフ
姉のように:叙述トリック
許されようとは思いません:過去を訪ね、真相に気づいていく

巻末の解説など

池上冬樹:火のないところに煙はから始め、著者の経歴を紹介。本作の各話を解説し、ミステリとして評価している。

感想

全体として、人の心の暗部を核としたミステリ短編集。謎をはらんだまま物語は進行していき、最終的に重要人物の闇が浮き彫りになる(姉のようには例外か?)。非社会的な悪意や執着に憑りつかれた人間はまるで怪異のように不可解な行動をする。そうした執着自体は異常でも、きっかけとなる日常生活の積み重ねは納得のできるものであり、その説得力を持たせ得る文章力・ミステリ力には感服。

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