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樋口楓『GAME GIRL』を聞いてきた・・・けどアンタだれやねん(全曲レビュー)
樋口楓『GAME GIRL』はにじさんんじ所属のバーチャルライバー・樋口楓が発表した2ndフルアルバムのはずである。
しかし、このジャケットのイケメンは誰だ・・・?
樋口楓とタッグを組む作曲家 ーー光増ハジメ
光増ハジメさんは、ファーストアルバムから樋口楓楽曲の多くを手掛ける
作曲家。
1.キュンリアス
(TVアニメ『転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます』オープニング主題歌)
作詞:安藤紗々 作曲・編曲:光増ハジメ(FirstCall)
1曲目の『キュンリアス』は、これまでの光増さん作曲の曲の中でも音数が比較的少な目で、聞きやすいナンバー。サビのメロディーも、綺麗な階段状になっていて、字余りがなくまっすぐ言葉が伝わりやすいように作られている。
そして、音数が少なくなっている分、樋口さんのボーカルが、『MARBLE』の若干ヤケクソに叫びまくる時期から一歩先に進んで、安定したピッチで言葉をはっきり伝えるところまで進んでいるように聞こえた。
2.ぶっ飛んでラニカイ
(ドラマ『量産型リコ -もう1人のプラモ女子の人生組み立て記-』オープニングテーマ)
作詞:安藤紗々 作曲・編曲:光増ハジメ(FirstCall)
2曲目の『ぶっ飛んでラニカイ』は、シンセサイザーの楽しい音がちりばめられた1曲。ラニカイとはハワイの言葉で「天国のような海」という意味がある
『ビューティーMYジンセイ!』が発表されたころから、ロックだけではなく、シンセポップっぽいおしゃれなニュアンスを積極的に光増さんも取り入れようとしているのかもしれない。
細かい解釈というよりも、ひたすら楽しい音を楽しむ一曲。
3.Bravery? Naturally?
(TVアニメ『英雄教室』オープニング主題歌)
作詞:RUCCA 作曲・編曲:光増ハジメ(FirstCall)
突き抜けるようなギターサウンドから始まる一曲。AメロからBメロに切り替わるところで、縦ノリっぽかったリズムが横ノリ気味に変わるのが特徴的。
この曲の気持ちよさは、J-POPらしいクリシェの繰り返しのように聞こえる。最初の間奏のシンセサイザーや、サビの歌い回しを何回も繰り返す中で、少しずつボーカルの言葉が変化していく様を楽しむ一曲。
4.Baddest
(TVアニメ『100万の命の上に俺は立っている』第2シーズンOPテーマ)
作詞:RUCCA 作曲・編曲:光増ハジメ(FirstCall)
衝撃的なスクリームと、何故かボッコボコに殴られまくる樋口楓さんのPVが印象的な1曲。なぜ楓虐がはじまってるんだ・・・?
アニメソングにおいて、例えば米津玄師のように歌詞までその作品の内部をキチンと考えて作られた曲が多い中、この曲が伝えようとしているのは作品自体に入り込むというよりも、「何回殴られても立ち上がる」という、作品自体が持っている雰囲気であるように聞こえる。
そのため、樋口楓さんのボーカルはこのアルバムの中で最も激しく、重厚な2台のギターアンサンブルと殴り合うように作られている。樋口さんの声のすさまじさは、これだけギターがなっているのに、それを突き抜けてきちんと声が届くことである。
5.Feel it now
作詞:瀬戸美夜子 作曲・編曲:ミヤジマユースケ(SUPA LOVE)
にじさんじのライバー瀬戸美夜子(通称せとみや)による作詞曲。
ただの思い出曲ではなく、作詞で大事な文字数を整えたり、押韻を打ってあったり歌いやすいような工夫がされているのは流石である。
(センパイ/コウハイ、思わせぶり?/暇つぶし?など・・・)
樋口さんのかわいらしいところがにじみ出ている一曲。
6.MML
(オンラインRPG「マビノギ(mabinogi)」コラボ楽曲)
作詞:樋口楓 作曲・編曲:光増ハジメ(FirstCall)
樋口楓がもっとも長く愛したゲームであるマビノギとのコラボ曲。
私はプレイヤーではないので、ゲーム内容との内容の関係性はわからないのだが、ベースの音が薄く作られたこの曲は、樋口さんの曲では初めてと思われる民族調の旋律が使われている。
マビノギファンの方による解説。いかにこの歌詞がマビノギの世界観をなぞりながら作られているかが分かる。
7.Take My Chance(樋口楓 Ver.)
作詞・作曲・編曲:湯原聡史
声優の熊田茜音さんとのコラボ曲であり、『英雄教室』のED曲。
元々二人で歌うことを想定された作りだからこそ、ツインボーカルやコーラスとの掛け合いが楽しい一曲。
まるで白紙を埋め尽くすように、メロディーが次々と耳の中に飛んでくる
楽しい一曲。
8.ビューティーMYジンセイ!
(ドラマ『量産型リコ -プラモ女子の人生組み立て記-』オープニングテーマ)
作詞:安藤紗々 作曲:光増ハジメ(FirstCall) 編曲:PandaBoY
本アルバムの中でもかなり早い時期にできた一曲。
ゴリゴリのロックチューンをそれまで歌ってきた樋口楓さんのイメージを一気に塗り替えてしまった曲。しかし、光増さん作曲の聞きやすいメロディーワークはしっかり健在。
ひたすらにカラフルに、いくつもの音色が重ねられた、キラキラの一曲。
9.Around the bizarre world
(ゲーム『すだまリレイシヨン』オープニング主題歌)
作詞:松井洋平 作曲・編曲:光増ハジメ(FirstCall)
全体的に、ボーカルパートの音程が低く、マイナー調のにじりよるような
一曲。わかりやすくサビっぽい展開をせず、じわじわとボルテージが上がっていくような展開をしている。
さらに、これまで比較的AメロBメロサビの王道展開をしていた光増さんの曲の中で、珍しくCメロを展開として使ってきた曲でもある。
個人的に、今回のアルバムを聴く中で一番耳に残った曲。
10.野球讃歌
作詞・作曲:Gen(THE GELUGUGU) 編曲:THE GELUGUGU
日本が誇る大阪のスカコアバンド、THE GELUGUGUによる一曲。
解説が必要ないほど、野球の応援歌のように作られたこの曲は、おそらくライブでも大活躍し、熱血フルスイングする樋口さんを見ることができるだろう。
そのままの曲でも、甲子園やプロ野球の応援歌として使えそうな名曲。
11.Reset and...
作詞:RUCCA 作曲・編曲:馬渕直純
樋口楓が一時活動休止中に自分を見つめなおして作った一曲。少しミクスチャーロックのようなこの曲は、「GAME GIRL」と名付けられたタイトルのような
ファーストアルバムの時も感じたことだが、樋口さんが自分で作った歌詞や、思いを込めたと言っている曲は想像以上に暗く内省的である。
しかしこの曲では、ラップ調で入ってくる自分の不安に対して、さびで何度も「好きなんだこんな世界が」「このまま消えてたまるか」と力強く叫ぶ。
なんど消されそうになっても、なんど心の声に押しつぶされても、やり直して立ち上がることを宣言した力強い一曲。
12.こんな良い時間に何してんねん!
作詞:るいまる 作曲:パーミー 編曲:ビバラッシュ
「樋口楓のこんな良い時間に何してんねん!」は、文化放送の樋口さんがメインパーソンのラジオ番組である。前の曲で、自分の決意を語った樋口楓は、次のこの曲で一転、ゲームに興じる。
樋口師匠はいつものライブ配信よろしく、激よわ回線などにぶちぎれて、パソコンに八つ当たりしたりする。この曲を作曲したビバラッシュの曲のように、メロディーと音の緩急でコロコロ表情が変わっていく。
が、サビの最後の「ねん↑」のところとか、パソコンにぶちぎれてどなるとか、「あけましておめでとうございます」のかわいい声を出してみるとか、非常に忙しい一曲である。
13.アイムホーム!
(ドラマ『量産型リコ –最後のプラモ女子の人生組み立て記–』オープニングテーマ)
作詞:安藤紗々 作曲:光増ハジメ(FirstCall) 編曲:PandaBoY
「アイムホーム!」は、本アルバムの中でも一番落ち着いた、閉幕にふさわしい一曲である。しかも、この曲は(私の解釈では)愛のちょっとした告白である。
あくまで、ドラマの主題歌として捉えたら、この家というのはプラモ女子の家のことである。しかし、風鈴や花火の音含めて懐かしい音で埋め尽くされたこの曲は、懐かしい場所の事を繰り返し歌っている。
樋口楓は、去年声帯結節の手術のために家を空けていた。その彼女にとって、家とは配信を始める場所である。
このアルバムの11~13曲目は、ファンのみんなに「ただいま」を言うために作られていると思った。
だからこそ、私もここに「おかえりなさい」「これからも元気でね」と一言書き添えておきたくなった。
樋口楓はにじさんじ所属のバーチャルライバー。ガチ恋はダメ。
にじさんじが始まった7年前から活動している1期生。コラボを見ていると、舞元をしばきたおしたり姉貴肌なところが見えるが、お嬢様衣装を着てノリノリになったり、カワイイ一面もいっぱい持っている。