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eスポーツ選手やVtuberの「健康」を守るための資料まとめ ~ゲームは基本デスクワーク

※長いので、忙しい方は★のついている章だけ読まれてください。

はじめに

このnoteを書くきっかけは、にじさんじの月ノ美兎さんだった。バーチャルユーチューバーの先駆者である彼女が、先日「実況した後に眠れない」旨の投稿をされていたのだ。(消える前提フリートでの投稿なので、直接引用はしない)。

にじさんじやホロライブを定期的に見ている方ならご存じの通り、2020-2021年はVの方の体調面の問題が噴出した年でもあった。知っているだけでもストレートネック、椎間板ヘルニア、緑内障、失神などズタボロなことになっていた。そして、上記の言葉がトップにいる月ノさんから出てきたとなると、Vtuber界の健康事情は相当に難しいところがありそうだ。

以下の、社会経験のあるVの社築さんの話が参考になる。


この話を聞いたとき、ふと頭に浮かんだのは私がよく生放送にもお邪魔して、交流させていただいているパワプロeBASEBALLのプレイヤーたちのことである。実は今年のパワプロの大会では、健康上の問題で試合中・試合前に欠場することになった選手が二人出た(一人は決勝)。

たとえ本番に向けて努力していたとしても、一回の体調不良でその舞台に立てないことがある。「勝ち」にこだわるesportsプレイヤーであれば、出来れば出場できず棄権で敗北は避けたいのではないかと思う。Vtuberであれば、ライブやイベントがこれにあたるだろう。ただ当然、匙加減は人次第。

(パワプロはにじさんじとも関わりの深いゲームです)


Vtuberとesports選手の共通点

私見ではVtuberとesprots選手には、ゲームの継続的プレイやLive2Dの関係で、座りながらの長時間活動が多くなりがちという共通点がある。一方で、ありがたいことに、esports界ではいかにゲームプレイを健康と両立させるか議論が続いている。今回は、esports界の動向を含め、漫画家、デスクワーカーなど各界の知見を探して集めてみた。

繰り返すが、ここに書かれているのはあくまで個々人のおかれた環境を無視した一般論にすぎない。逆に言えば、個々人の工夫でその人にとってよい健康的環境が構築できるかもしれない。そのための基盤として本記事は使っていただければ、ありがたい。

(注)この記事では若干「身体」側に目を向けて書きますが、当然「心」にも影響がある問題です。以前私は炎上が発生した時にまず、人の犠牲が出ないための資料をまとめてみました。もしも心身面に関する資料で、有用そうなものがあれば情報提供いただければ幸いです。



esportsと健康に関する報道

ゲーマーの方には耳が痛い話だと思うが、辛抱していただきたい。ゲームはインベーダーゲーム登場時からずっと悪影響論がつきまとっている。悩ましいところだが、わたしはこの問題に全員が納得する最適解はないと感じる。「健康」に絞れば、8時間以上デスクに付きっ切りで作業するSEなども、同じ理由で健康を気遣う必要が出てくるかもしれないからだ。

一方で、esportsが大きな産業として盛り上がりを見せたことで、近年では学校教育の場に「ゲーミフィケーション(教育のゲーム化)」やeスポーツ部という形で進出している。そこでも、管理と娯楽の微妙な闘いが続いている。

任天堂は健康とゲームの両立をはかるべく、「リングフィットアドベンチャー」など、運動とゲームの両立を図る企画を次々たてている。そうした施策は、上記の高齢者の健康づくり、ひととのふれあいづくりの場の提供という形で実りはじめている。

一方でesportsプレイヤーや企業側からも、少しずつ「健康」を意識した動きが出てきている。ただし、この例のときどさんの場合、「眠くならない」という競技上の目的のために練習時間を1日3時間(!)に限定している。さらに糖質制限や空手など、ゲーム外の美的な部分もesports選手として必要な部分と考えている。自分の人生観との折り合いをきっちり付けた上での時間制限である。


個人の意志と衝動のバランス ーー人文学から

依存や衝動と、個人の意志はどのような匙加減で考えればいいのか。何かに依存するのは人間らしいことで、その制限は人間の機械化ではないか。これについては現代思想の範疇でも議論が続いており、決着がついていない。

白状すれば、私も高校の頃には寝食時間を忘れ、「でんじゃらすじーさん」や「ロックマンエグゼ」といったゲームにのめり込み、近所のTSUTAYAで借りたCDを爆音で流していた。事実として、その経験がなければにじさんじの人たちには会っていない。この出会いは、「非合理な行動」に導かれたかもしれないが、間違いなく人生には大きな意味があった。

他にも星野源さんは、38度以上の熱を出しながら、子供向けアニメである『ドラえもん』のPV撮影に臨んでいた。ミスチルの桜井さんも、高熱を出しながら12時間以上『starting over』の歌収録をしていた。果たしてこのこだわりを、止めることができるだろうか。

ここから先に示す資料が、自分の人生にとって唯一の最適解かは、どうか慎重に(時に周りの人などと共に)吟味されてほしい。



★衝動性・自動性との折り合いーーときどの記録術

この本は、発達障害の方向けに作られているが、そうではない事務職の方にも勧められることが多い。「時間、物、お金の管理+自分がしてほしいこと、好きなこと、嫌なことを伝える力」を自立のために必要な力と定義する。そして、物忘れの多い人や1つのことに集中しすぎる人向けに、使いやすい道具を提供しているので、おすすめである。


ゲームは、「つい」触ってしまうボタンのような刺激に満ちている。ガチャであれば、「もしかしたら、低い確率でも激レアのカードが手に入るかもしれない」という期待を、きらびやかな演出で増幅するモデルを取っている。報酬と対価のモデルが強く出ている。

もしも、ゲームを長時間「つい」してしまうことで不都合が発生しているのであれば、このゲームの魅力や衝動性を把握しておく必要がある。そのためにはゲームをやった時間を記録する、機械に自動的に記録させる等して、その日の調子を記録するだけでいいとしている



ゲームの記録の付け方のモデルケースは再びときどさんである。ときどさんは、毎日の調子を「睡眠時間」「食事の回数」「脈拍」という身体的なことから、「感動した回数」「幸せ度」といった心のことまで、25科目を毎日振り返っている。重要なのは、ときどさんは通信簿のようなルーティンをやぶっていい、失敗していいと言っていること、代わりにノートは机の上に常に開いていて、さっと書けるようにしていることだ。

なるべく「考える」「悩む」時間を減らす努力をしつつ、自分の生活をデザインすることは、esportsの世界では有効であった。Vtuberであっても、面白い配信、自分が楽しめる配信ができたか、振り返りはあってもよさそうだ。

esports側では、睡眠時間を測るためのスマートウォッチなども売り出されている。


5/4追記 ワーカーホリックの問題

特に、個人事業主のような休みの時間の取り方が不規則な形態の場合、「頑張ろうと思えば頑張りすぎる」ことができてしまう。しかも、相手が大好きなゲームや音楽ならなおさらだろう。noteには、様々なワーカーホリックに関する記事もあるので、今一度、仕事との向き合い方を考えてもよさそうだ。

★ゲーム中の休憩の取り方 頻度・水分補給・体操

厚生労働省は、「1日4時間以上パソコン作業をする労働者」に向けたガイドラインを発行している。これによればパソコン作業を行う人には1時間に15分程度の休憩が望ましいとされている。

またサントリーのこのサイトによると、一日の水分量は「1回コップ1杯程度(150~250ミリリットル)の量の水を1日に6~8回飲む」程度が良いとしている。

また、デスクワークの際は一度立ち上がるなどして、体を適度にほぐすのがベターだろう。頭をマッサージしたり、足をのばす、腰を後ろにそらすなどして、エコノミークラス症候群を防ぐのがよいだろう。



部屋環境を考える

①椅子周り ーゲーミングチェア、スタンディングチェア

そもそも「座りながらの作業は体に悪い」という話も多くなってきた。漫画家の浜田よしかづ先生は、作業環境を最適化するべくありとあらゆる椅子を買い、木の板を組み合わせて最高の立ち机を作成することに成功した。その時の模様はYouTubeにアーカイブで残されている。このように、自らのイスを改造して、立ちながらゲームをする選択肢もあり得るだろう。

ゲーミングチェアも当然選択肢に入る。ただ、「自室は仕事部屋」という視点で考えると、自分なりのカスタマイズ方法を創りだしておきたい。



②部屋そのもの ー温度湿度、清潔感、色

人の感情はある程度、色によって左右される。特にゲームに関わる色は血の赤色など人を昂奮させる色であることが多い。集中が必要な時、落ち着きたいときなどで色の使い分けを考えておきたい。

そして、汚部屋は①見つけたいものが見つからない②気になるマンガなどが散乱することで気が散る③カビやゴキブリの温床になるといった問題を発生させる。例えば執筆中はありとあらゆる紙の束をまき散らしていた坂口安吾のように、汚部屋がアイデア創出のカギになることはありえる。しかし、汚部屋は常に体に防御力ダウンのデバフを食らっているようなものだという認識はあったほうがよい。

湿度、温度についてはこちらから。

もしも汚部屋を片付ける覚悟が出来たら、今度は一転攻勢をかけることもできる。部屋が綺麗であれば、自分の部屋をおしゃれにして、テンションを上げたり、睡眠にバフをかけることもできるのだ。noteには先駆者の方の例がいっぱいあるから、是非探してみてほしい。



③実況画面の工夫 ー色・音

ブルーライトカットや明るさ調節をすることで目に優しい画面になるのは周知のとおりだ。それに加えて、「放送画面」自体を目に優しい色にすることも、少なからず気持ちに影響を与える。緑仙の画面は恐ろしく目と心に優しい。




★よい食事・睡眠をとる

食事

(※栄養については、「健康の知識をつける」の章へ)

ついつい吉野家やUber Eatsに頼ってしまうご飯。こちらは最近、コンビニ飯などの充実とともに、必ずしも手作りにこだわる必要はなくなってきたのかもしれない。

しかし、未だに野菜系の成分はインスタントの食事では不足することが多く、好きなものばっかり食べていたら偏食になることもあり得る。もしも、そうした食習慣を変えたくなったら、まずは「健康によい食事」を見てみることをおすすめする。また「ズボラ飯」で検索すると、3分で出来るお手軽料理が出てくる。

Vtuberでは、にじさんじのメリッサ・キンレンカさんがいつも楽しそうに料理を上げられている。




睡眠

秋田大学の三島和夫教授によると、一時的に寝付けない、目覚めるといった症状は誰にでも起こる。ただし、不眠が続くことに不安を感じすぎたり、寝床に無理に長い時間入るなどの行動は逆に眠れない時間を増やしてしまう。

対策としては①寝床に長い時間いない ②寝床にいたらすぐ眠れるように睡眠日誌をつける ③リラックスできるように筋弛緩法を行うの3点。また、朝はたとえ眠くても起きる時間を決めて、光を浴びると体内時計が安定してくると述べている。

これは一般論としての「不眠症」対策であるが、ゲーマーであっても参考にしてよいだろう。また、コラントッテの磁気ネックレスやマッサージ機のようなものに頼るのも検討してよい。


(4/30追記 月ノ美兎委員長、鍼治療で不眠予防に挑む)

(5/4追記 『スタンフォード式 最高の睡眠』という本がおススメ)

睡眠負債」と呼ばれる、少しずつ積み重なる睡眠不足が人の一生を変えてしまうことが最近の研究で判明。NHKでは、この本を元に番組を制作した。


生活習慣病の予防と健康診断

厚生労働省「生活習慣病を知ろう!」のページによれば、生活習慣病は

食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群

とされている。これらの病気を発見するためには、冒頭で社築氏が推奨していた健康診断が有効になる。個人事業主の場合、病院に自分で予約する形になり、お金も若干かかるが、払えない額ではない。

さらに精密な検査がしたい場合は人間ドックを受けるとよい。




★なかやまきんに君と世界で一番楽な筋トレ

ときどさんや発達障害に関する本含め、色んな本でよい日常を作り上げるコツとして出てきたのは、「体力づくり」だ。よいパフォーマンスを発揮するには、日常生活で起こるこまごまとした作業でいちいち体力を消耗しているわけにはいかない。

そこで、私のおすすめはなかやまきんに君の世界で一番楽な筋トレである。まずは弱い筋トレからはじめて、ハマったらきんに君の他の筋トレ方法を試してみる。体幹トレーニングなど、色んな用語もあるが、まずは一点に集中してみるのがおススメだ。また、義務教育でみんなやっているラジオ体操第一もよい。




健康の知識をつける

もしも、健康からさらに深く医学について知りたくなったら、以前私が医療従事者Vtuberである健屋花那さんの言葉を元に作った文献まとめがある。特に『家庭の医学』という本は、昭和の時代には「一家に一冊は持っておきたい」と言われた一冊で全てを把握できる名著なので、是非手に取られて欲しい。ほかに、厚生労働省のホームページなどにも潤沢に情報が載っている。



esports側推進側の対策 ーーどんどん発展中

最後に、esports界とVtuber界それぞれの健康推進についてまとめておきたい。esports側では、ところどころ出てきたようにすでにヘルスケア事業を打ち立てようという大きな流れが出来ている。特に障害を持った方や高齢者がゲームによって新たな生きがいを得るポジティヴな研究もあり、医療側とも協力してノウハウを蓄積している。

今はまだ企業主導の部分も大きいが、esportsそのものが国の産業として注目をさらに浴びれば、「健康的なゲーム」のあり方への注目はさらに高まりそうである。



Vtuber側の対策 ーーまだまだ…?

一方のVtuber。色々探してみたが、大手の事務所で健康に対するマネジメントをしている話はあまり出てこなかった。これはちょっとまずい。

にじさんじであれば、先日Vtuberの表情をさらに繊細に表現できる「にじさんじ3.0」がリリースされた。こうしたアイトラッキング技術は素晴らしいものだが、生放送主体のVtuberが「視線」を大事にするということはそれだけドライアイの危険も高まってくる。さらにLive2D技術がもっと普及すれば、いちから株式会社が初期に考えていたような、にじさんじアプリの一般普及が始まるだろう。健康問題が一気に広まる可能性もある。

逆に考えれば、今が健康的なVtuber活動のノウハウ収集のチャンスである。わたしは、心身問題という「非常に人間らしい」問題でVirtual YouTuberの方が悩み続けるのは、なんか変だなと感じている。どうか、タレントの方の体調を大事する施策を打ってほしい。

(4月19日加筆)令和3年4月1日から労災保険の「特別加入」の対象が広がります

健康とは若干話がずれるが、重要な話題。労災保険に芸能関係作業従事者であっても加入ができるようになった。

○労災保険制度は、労働者の業務上の事由または通勤による労働者の傷病等に対して必要な保険給付を行い、あわせて被災労働者の社会復帰の促進等の事業を行う制度です。その費用は、原則として事業主の負担する保険料によってまかなわれています。
○労災保険は、原則として 一人でも労働者を使用する事業は、業種の規模の如何を問わず、すべてに適用されます。なお、労災保険における労働者とは、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」をいい、 労働者であればアルバイトやパートタイマー等の雇用形態は関係ありません。

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