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にじさんじのソロ曲をできるだけ聴いてきた(おかわり)~不破湊とのヨアソビから加賀美社長の決意、ENからの来訪者まで~

このnoteは、にじさんじのソロ曲を聴いてきたシリーズの第二弾です。

レヴィ・エリファ ハーフ・エルアール

❏■Vocal/Lyrics
レヴィ・エリファ(Levi Elipha)

❏■Music/Arrange
ORYO(FAULHEIT)
@ORYO_FAULHEIT

レヴィさんが歌詞を書き下ろした、まっすぐなロックチューン。頭のサビの「まだやれる~」の部分で、イラストにもあるメガホンのエフェクトと共にぐっとリスナーの心をつかむ。

バーチャル(L)と(R)リアルの間にあった、居心地のよい場所を金繰りしてて、サビの展開では一気に幻想(夢)をリアルなものにすると力強く宣言している。

音楽家ORYOとイラストレーターおはぎによるユニット。ドイツ語で「怠惰」を意味する。


GIVER

❏■Vocal/Lyrics
レヴィ・エリファ(Levi Elipha)

❏■Music/Arrange
ORYO(FAULHEIT)
@ORYO_FAULHEIT

こちらもイントロなしで突き抜けたレヴィさんの2曲目。1曲目と打って変わって、裏声を基調にした歌う難易度が非常に難しい曲だが、最初に披露されたのは2021年の3D配信で、いきなり生歌からだった。

前の曲が自分自身のこころの中を静かに見せるような曲であれば、GIVERはリアルを生きるファンに向けた一曲だと言える。特に二番のレヴューを書くことやコメントを打つことの意味を信じる曲は、配信を見ている人たちのこころを大きくゆさぶるだろう。

葉山舞鈴 Marine Summer Session (feat.葉山舞鈴)

Vocal & Lyrics:凛々咲
Music & Arrange:加藤冴人

個人で活動されているシンガソングライターの璃々咲さんとのフィーチャリングソング。若干見つけにくい場所(葉山さんのチャンネルじゃない場所)にある。アップテンポな二人の歌声の裏に、オルガンの音が程よく絡む楽しい曲。


Sexy Zone”NOT FOUND”や、にじさんじや富士葵さんなど、Vtuberたちに多く曲を提供している作曲家。


葉加瀬冬雪 リトルハミング

Music & Lyric : 堀江晶太

kemuさん作曲らしい、歯切れのよいカッティングのギターとスラップベースとピアノの構成。ハミングとは、基本的にそんなに長くできるものではなく、とぎれとぎれになるものだ。この曲の一言一言が断片的だったり、言葉の途中でわざと区切りが入っていたりするのは、このタイトルがあってこその工夫だろう。

街中を毎日歩いている友達である「君」への思いをごまかすようにハミング(あるいはおしゃべり)をしていた歌い手に対して、最後のサビではまるでその「君」が言葉や靴の音で返答してくれたかのようだ。

ポケットの中にいるVtuberの声を外でも聴ける時代に、色々な連想があふれてくる一曲。

堀江晶太氏は「六兆年と一夜物語」「地球最後の告白を」「拝啓ドッペルゲンガー」といった、ニコニコ動画でもミリオンを複数達成し、大きく時代を作ったボカロP・Kemuさんのこと。


加賀美ハヤト WITHIN

Music:ぎゃぷいち                           Vocal/lyric 加賀美ハヤト

突然洋楽(Linkin Parkなど)の曲をカバーし始めたり、葛葉くんの前でデスボイスを指導したりなど、歌唱力に定評のあった加賀美社長。その社長がデビュー直後の2019年にいきなり投稿したのが、『WITHIN(Short ver.)』だった。いきなりの本格派Nu-Metalソングの登場に、ファンのみならずにじさんじ全体が動揺していたのを覚えている。

特に注目したいのは2番以降の歌詞が社長が活動を続けて一年後に作られたことだろう。1番の歌詞は社長が旧いちから株式会社と提携するにあたって、自らの肩書が変わっていくことに対する決意表明になっているのに対して、2番の歌詞が「咲き続けること」、つまり継続の方に目線をふっていることである。

バーチャルユーチューバーであることは、一つのウソを孕む契約なのかもしれない。しかし社長は、彼の株主たちが向けてくれる本当の熱情と、そのウソはどちらもWITHIN(一緒に内側にある)と、物語の始まりに歌に込めた。


『WITHIN』が公開されたいきさつについては、こちらのブログに詳しく書いてある。

社長とメタルの関係については、以前こんなnoteを作った

PIERCE

Vocal&Lyrics/加賀美ハヤト                      Music&Arranged/ぎゃぷいち
          
WITHINと連続するような華のモチーフを持った二曲目。PIERCEというタイトルが耳に開ける「ピアス」だけではなく、身を劈く苦しみが「しみわたる」こと、暗闇の中を光や声が「貫き通す」という、一つの単語にこれまで歴史が与えて来た意味を全てなぞり倒した衝撃の曲。ラウドロックで多用されているDrop Bチューニングで作られている。途中のラップ部分は、やはりLinkin Parkの2人やラウドロックの名歌手たちを思わせる、メロディを殺さないノリ方をしている。

灼熱の炎の中に投げられた凍った華が、そのまま聞き手の心臓を穿つような一曲。

ChroNoiRの楽曲などで活躍するラウドロッカー。

トレモロムーン

Vocal:加賀美ハヤト
Compose:buzzG
Rec:友達募集P
Mix/Mastering:友達募集P

buzzGさんのツイートによると、この曲は「太陽の光を反射した月の光が地球に届くまでの数秒間」を描いたものだという。前2曲から、一旦シャウトやラップを置いてストレートなロックチューンになっている。

トレモロは、ギターであれば一つの音を連続して鳴らすことによって、音が伸びているように聞こえさせる奏法であり、さらに語源までに遡るとイタリア語の「tremolo(ゆらめく)」という言葉までたどり着く。

細やかな言葉の解釈については、素晴らしいブログがあるのでそちらに譲るとして、社長の曲に一貫しているのは協力しているアーティストの方とじっくり煮詰めた歌詞の比喩ひとつひとつが、彼自身の配信のこれからや目標の宣言へとぴったし成就されていながら、初見の人が見てもそれが美しいと思える普遍性を持っていることである。


相羽ういは 夢へ向かって前ならえ!

作詞 黛灰様 
お手伝い アルス・アルマル様                    作曲 Shagma様                           Mix YABStudio様

にじさんじの今年引退した黛灰くん、そしてアルスさんの同期三人によってつくられた、バーチャルアイドル相羽ういはの初めてのオリジナル曲。決してむずかしい言葉づかいではないが、丹念に三人のすすむ道が描かれている。同曲は、のちにTik Tokでバズった関係でコラボした超ときめき宣伝部とのダンスコラボの動画が上がったり、3D配信でも歌われるういはちゃんにとって大事な一曲になった。この曲の二番で黛君と思わしき「知識」の話が出て来たところで、電子音が入っているのがスパイス。

黛くんが7/28に引退したことにより、ぶるーずという同期三人の呼び名は封印された。この曲は、そこに誰かもう一人がいたことをずっと伝え続ける。

個人音楽プロデューサー。元にじさんじ所属の黛灰くんのBGM「淡い黒色のコーホート」の制作者。

エリー・コニファー 笑顔の花言葉

Vocal: エリー・コニファー
Lyrics: しょう油
Music, Arrangement, Sound Direction: Tansa

5分28分とぴったりの尺で創られた、屋敷住み込みのメイドさんが家族のために口ずさんでいるような一曲。花言葉の花を必ずしもひとつに絞っていないのは、それぞれのひとがその人の場所で見つける花はそれぞれ違うからだだろうか。彼女の配信画面の背景は、いつも緑黄色の草原と日の陽ざしで輝いていることが多い。

輝かしいVtuberの世界を見ていると、日常の事を忘れがちになるし、エリーさんと言ったら甲子園のサイレンや弐寺のような刺激的な方向を思い出す人もいるだろう。しかし、Vtuberの良さの一部は、エリーさんのこの曲が描き出すように、ささやかな日常に華を添える、その少しの不思議を共有することにもある。

花澤香菜「Moonlight Magic」、「Defective / Tansa feat. 藍月なくる」など、ホーンやストリングスを使った作品の作曲を行う。

不破湊 ラストソング

Vocal|不破湊 
Music & Lyrics & Mix|まふまふ

ある時期からよくバーチャルユーチューバーの配信にも出没されるようになった、ニコニコ動画時代のトップランカーであるまふまふさんによる、不破湊くんのオリジナル曲。ラストソングは、トップランクのホストが最後に歌う曲であるが、コメントでも多く書かれているようにLUST(色欲)ともかけられているだろう。また、曲の中のディスコードは通話アプリともとれるが、どちらかというと「不協和」や「不調和」を意味するだろう。

恐ろしいことにこの曲は一切合切がホストである彼らしく「ふり」で出来ていて、その恋が叶わないことは青いカクテルで酔わされている曲を聴く「君」に仄めかされている。曲自体のBPMがかなり高いこともあり、一聴しただけではなかなかこのぐるぐる三半規管を揺らされた曲の中に隠れた悪戯は見抜かれないだろう。


2010年よりニコニコ動画で活動を開始し、2021年にはカンザキイオリ『命に嫌われている』で紅白歌合戦に出場した歌い手/ボカロP。そらるさんとのユニットAfter The Rainも有名。不破湊くんの放送にもたびたび登場している。


midnight love

Vocal|不破湊 
Music & Lyric |堂村璃羽 
編曲|Mitsuki                            Mix|友達募集P   

そんな激しい酩酊感を催す曲の次は、ふわふわと揺れるようなリズムの一曲。Pay meは当然「支払い」を促す言葉だが、それが愛に対してなのかお金に対してのものなのかは、口に出した言葉だけだと判然としない。PVに描かれた「お持ち帰り」の様子からは、この曲がラストソングを歌った「後」、禁断の関係性を思わせる。

PVには9割方女性のみが描かれていることで、実はこの曲の中の「君」がどこかで女性視点に反転しているのかもしれないと考えさせるこの曲は、お互いの関係性を気にしないほど、言葉にしないほど信頼している様子を暗示している。言葉にしなくていい関係を、言葉で表しきった一曲。

2018年より音楽活動を開始した、ヒップホップアーティスト。ダウナーな曲調に、男女関係のささやかな機微を描いたリリックをのせる。


白雪巴 SHUT-OUT

◆vocal:白雪巴                           ◆music&movie:daiki 様                       ◆mix:YAB Studio 様
        
女王様のあきれ声が聞こえてくる一曲。歌い手が何にあきれて「黙れ」言っているかと言えば、実はかなりぼやかされており、解釈が一義に定まらないが、これはアンチの事ではないか…?と感じる部分が多い。女王さまとは「唯一無二」の存在であることの多い存在である。とすれば、あまり自分の意見を他者に揺さぶられている場合ではないのかもしれない。うんざりする世界に対して、けりを入れる女王様の鞭は、果たして愛か憎しみだろうか。


甲斐田晴 透明な心臓が泣いていた

Vocal:甲斐田晴
作詞:堀江晶太
作曲・編曲:堀江晶太                        Mix & Recording Engineer:加藤智明(MIT STUDIO)       

アニメーション作家山下RIRIさんによる列車のアニメーションが印象的なPVを引っさげてやってきた、甲斐田晴くんの一曲。男子ボーカルではなかなかでない高音も裏声をキレイに使い歌い切った。この曲の「透明な心臓」という比喩が一体何を表しているか、実は一聴ではぱっとわからなかったが、よくよく聞き返すと、この曲の「僕」は、自分が誰にもなれないことに気づいたその自分の無色透明さを表していることに気づく。鏡みたいな夜に気づいたのは、人の気持ちをも反射できる自分自身だった。その彼は、自分の名前に「ハル」と付けたのかもしれない。


Shiny Sunny Step

Lyricist: Kaida Haru
Composer: Okamura Daisuke

甲斐田晴くんの2曲目。実は曲の元情報がかなり少なく、PVがまだ存在していない曲。恐らくこれまでレビューしてきた曲の中でも一番言葉数の多い曲になるが、ラップではなくきちんとそれを全て「語っている」かつ「歌っている」ように歌い切る技術は、練習の賜物だろう。

前の曲がにじさんじに入る前の自分なら、この曲はにじさんじの「甲斐田晴」としての自分が聞く人を幸せにするための曲だろう。この曲の展開の多さやドタバタ感は、それ自体が人生の絵本の一ページを表している。

この曲は、音楽制作チームPHYZによる作曲。甲斐田晴『Shiny Sunny Step』が初仕事となった。


朝日南アカネ カナリア

lyrics&music&mix:164 様 
illust:Darjeeling様

世怜音女学院高等部に所属する学生である朝日南アカネさんのオリジナル曲。元からボーカロイドの曲に強く関心があった彼女に、164さんが楽曲を書いたもの。エレピのわざとカットしてある音がかっこいい一曲。カナリヤは、「美しく歌う鳥」の象徴であり、赤い色の彼女にちょうど似合う鳥だったから選ばれたのだろう。歌うことが好きで、今でも高頻度で歌のshort動画を取り続けている彼女の、始まりにふさわしい曲である。

GUMIの「天ノ弱」が代表曲のボカロP。重厚なギターサウンドが特徴。


北小路ヒスイ スピってる

作詞・作曲:松永天馬                        編曲:おおくぼけい
 
なんだこれは・・・。

スピってるとは、どうもスピリチュアルなものを信じたい状態の事を指すらしい。この曲はひたすら「スピスピ」とか「ヒスヒス」とか繰り返しの言葉が多く、その同じ音韻の繰り返しが非常にサイケデリックな音の作り方とフュージョンして飛んでもないことになっている。しかも決して暗い曲調ではない(インド系の音階を使っている)なのが、脳ミソにバグを起こしてくる一曲。こんなの頭おかしなるで・・・。

コミカルで不気味なポップロックバンド、アーバンギャルドのボーカルを務める。小説やテレビ出演など幅広い活動を行っている。

ヒスイ色のミライ

作曲/編曲/作詞:のーねーむ 
ボーカル:北小路ヒスイ

ヒスイさんの初配信で公開された一曲。翡翠(ヒスイ)色とは、日本ならではの鉱石であるヒスイの色からとられた名前である。1番以外は絶対いらないと高らかに宣言した一曲。

唄の効果の一つとして、もちろん自分がその時に言いたいことをそのまま歌詞にのせてあげることもひとつだが、数年後に振り返ってその歌がどのように感じるかも一興である。ちょうど先日2周年放送を行った彼女からこの曲はどのように聞こえるのだろうか。

夏に関するロック曲を次々制作しているボカロP。

Finana Ryugu TSUNAMI

☆ Music, Mix, Lyrics - KIRA                      ☆ Vocals - Finana Ryugu

にじフェス2022で3D化が判明したNijisanji EN所属のフィナーナ・竜宮が2022年6月に発表した一曲。OsuやDbDのトッププレイヤーとかなりのプロゲーマーとのこと。

自分の進みたい道へ進む様子を、波紋を広げる「津波」に例える。激しい曲というよりも、虎視眈々と自分の行きたい道をThe ChainsmokersのようなEDMの曲に落とし込んでいる。



Enna Alouette Birds of time

■ composition & lyrics by:
PrettyPatterns & Enna Alouette                 ■arrange instru. PrettyPatterns                   ■mix. VESEN
 

にじさんじ甲子園でおニュイさんが暴言吐きまくりの切り抜きを大量に見つけて、乱闘専門係になりかけたEnna Alouetteさんの初オリジナル曲。VtuberグループEthyriaの一人である。

唄の方は普段の配信とは打って変わって、神様や時の鳥に、彷徨える自分たちが還る場所を教えて、と祈る一曲になっている。日本の文脈だとなかなか出てこない歌詞と、その伸びやかで時間を忘れさせる声に注目。


ホロライブのMori Calliopeさんへの楽曲提供、Nier Reicarnation楽曲のアレンジを投稿している。ミドルテンポより遅い、幻想的な曲調を得意とする。Ennaさんの曲の多くを共同で手掛けている。


Ren Zotto BLUE SUGAR

Song written and sung by Ren Zotto
"Blue Sugar" song producers: Stevie Knight & Mungey
"Blue Sugar" song mastering: Grant Berry


NIJISANJI EN第6弾デビューのILUNAの一員である、Ren Zottoくんによる一曲。ご本人のお好きな曲にエレクトロポップの名手であるOwl Cityとあって、この曲の作られた文脈が若干分かったように感じた。

さらに、この曲は1番はこれからどんどん曲を作っていく自分の今とこれからへの希望を歌っている。それに対して複雑な感情を抱くパートナーの人の、歌い手への応援とためらいの混ざった感情を描いているように感じ、相当テクニカルな曲を活動1か月目で良く出したな…と衝撃を受けている。


まとめ

このnoteを書いていて感じたのは、にじさんじの曲の圧倒的な文字数の多さである。ボカロPを聴いてこられた方も多いからだろうか、BPMも早め。そして歌詞も、「今この瞬間に」ファンの人に届けるという強い意志を感じるものが多かった。これから、世界やお茶の間に進む中で、果たしてどんな曲やストーリーが生まれていくだろうか。ワクワクしながら見守っている。

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