マーケティングのウソがバレる時代。試しながら見つける解の大切さ
こんにちは、REIONEの河西です。日頃、仕事の中でよく耳にする言葉で、「TRY&ERROR」という言葉があります。日本語では、一般的に“試行錯誤”というようなニュアンスで訳すと思いますが、昨今、一段とこの精神は大切になっていると感じています。しかしながら、仕事のシーンでは、やや自信のない企画の提案書を発表するときに、冒頭でエクスキューズするのに使ってしまったり、タスクがうまく行かなかった同僚の擁護の為に用いたりされているのも目にします。
本日は、この『「TRY&ERROR」の本質を掘り下げると、もっと仕事がしやすくなるのでは?』というテーマで、記載をしていきたいと思います。
何故、今なのか?従来のマーケティングの機能不全
数年前、私が会社員だった頃、ある大学で社会学の観点からコミュニケーションを研究されている先生のゼミのイベントに参加した時の事。「最近の大学生は、“同じ釜の飯を食べる”感覚を得るのに1週間くらいの合宿が必要なのでは…」という先生のお話を聞きました。私はといいますと学生時代、3日も合宿をすれば十分、そのような気分は満喫出来たと思います。
実際に、学生にお話を聞いた際、学友に対して“趣味の共有”を普段からあまりしないということでした。その理由として、する意義が薄いと感じているとの事でした。背景に、テレビをあまり観ず、自分の好みの動画の視聴はしているという行動傾向があるように感じます。それはつまりその昔、月曜日の21時はあのドラマの時間…で、多くの人が同じコンテンツを視聴していた時代から、「個別化」が可能になった事が大きく影響していると思います。
また、ある学生は、アメリカのプロバスケットボールのNBAが好きという話をしてくれましたが、大学生活の中で誰かに話したことは一度もないとの事。もっぱら、趣味を語り合うのはSNSの中の顔の見えない友人のみとのことでした。
さて、ここからが本題です。このような世の中のアップデートに対して、書店に並ぶビジネス書籍もアップデートを求められているのではないか、と感じてしまうのです。
例えば、マーケティングの最初の作業として提唱される「STP分析」という手法があります。STPの“S”はセグメントのSです。市場をデモグラフィック情報(年代や、性別、地域等の情報)で分けるという作業で、そのセグメントの中から注力すべきセグメントを選ぶ作業を、ターゲティングと呼び、これはSTPの“T”にあたります。その顧客に対して、競合と差別化していく要素を決めるポジショニングを行い、施策立案への繋げていく方法です。
さて、話を元に戻します。前述のNBA好きな大学生は、STP分析では「20代男性、都内在住で大学に通う…」というセグメントにカテゴライズされるのですが、彼はその中で同じ趣味をもつ友人を、ただの1人見つける事すら諦めている状態が起きているのです。この状況で、STP分析に基づいたビジネスプランがとてもキャッシュを生み出すように思えないのです。
※補足しますが、例に挙げた学生固有の問題ではありません。その学生は、むしろ社交的な印象を持ちました。
STP分析では、最初のセグメントが同じであれば、同じ需要があるという前提に立っているのです。これは、言い換えますと、皆さんが、「あなたが通っていた小学校の同級生は皆、同じものを買うグループです」と言われることを想像してもらえればわかりやすいかと思います。
メディアが作っていた「需要」と、利用者の感じた「需要」の差;ベビー用品の実体験から考察する
私自身も、従来のマーケティング手法への不満を、子育てシーンの中で実感したことがありました。
我が家が第一子の出産準備をしていたころ、当時我々は、「出産2か月前の夫婦」というセグメントに私たちも属していたのだと思います(笑)。ターゲティングされ「出産準備」の雑誌を見事に購入してしまいました。その本では揃えるべきベビー用品の一覧があり、こんなにも揃えるものがあるのか…と驚きながらも、一通りベビー用品店に行って揃えたものです。
ところが購入したベビー用品のうち、いくつかの物は全く使うことなく、我が家の物置部屋に眠る事となりました。最大の象徴は“ベビーベッド”でした。私たち夫婦にとって、子供との距離は布団を引いた方が近く、歩き出すようになるころにはベッドの柵を超えてしまうため、危険という判断から、ほとんど使うことはなかったのです。
しかし、子供が生まれる数カ月前の私たちには、確かに「需要」は存在していたのです。雑誌というメディアに頼って、「最も一般的なものを購入しておくべきだ」という需要でした。しかしそれは、利用者としての「需要」ではなかったのです。結果として利用者の立場として、この購入体験は、決してポジティブなものではありませんでした。
このようなミスマッチは、他の同世代の親御さん方も気付いておられました。“実際には不要だったベビー用品”の話題は、保育園など保護者の集まる場や、親戚で集まる際に最もよく聞く話題の一つでした。実はこうした情報を最近はSNSで消費者が発信するようになりました。第二子を迎えた際に、WEB上に掲載されている「出産準備リスト」には、★印の数で、絶対必要なものとそうでないものを分別して掲載されているものが多くなっていたのです。下記は、例としまして高島屋の出産準備リストを掲載しました。
ここで申し上げたいのが、こうした顧客の良質な体験に寄り添えなかった製品は、おそらくこれまでの売上高を維持できなくなってしまったのではないかと思います。その減損分が、古きマーケティング手法から導かれた「メディアが作っていた需要」だったという事です。昨今、このような幻想の需要は、顧客自らが発信力を持った事で、是正される傾向にあると言えるのではないでしょうか。
いつまでも椅子に座って、昔の本を読んでいるな!
では、どうしたらよいか、という話に入ります。つまるところ、STP分析も本来の目的は、顧客体験を推測する為に開発されたツールであったのではないかと思います。しかしながら、今日、情報流通手段が変わったことで、不適合を起こしているだけの事と思います。ですので、顧客体験を推測せず、直接顧客に確認すべきだと改めて考えさせられます。その体験を持つ顧客にアクセスし、声に耳を傾けながら、「セグメント」を創っていくのです。ここでの「セグメント」は、共通の顧客体験を心地よいと感じる方々の“クラスター”という意味合いで使っております。
実はこの作業をうまくこなす為に、「TRY&ERROR」を計画的に実施できる思考が重要なのです。
「そんなこと出来るんですか?」という問いには、また、次回以降、具体的に述べたいと思います。尚、過去の記事においては、そのようなアクションを起こせる方々のコンピテンシーについてスタンフォード大学が提唱している考え方を紹介をしております。
ビジネスフレームワークもトランスフォーメーション
前述したように、情報の流通が変わったことで、いくつかのビジネスフレームワークが役目を終えたことはよく理解いただけたかと思います。机上の分析より前に、顧客とのコミュニケーションを始めなければ何も始まらない昨今、我々の思考方法もトランスフォームすべきと考えます。
例えば先に紹介したSTP分析は、バージニア大学のサラス教授は次のように著書の中で表現をされています。
(サラス・サラスバシー「エフェクチュエーション」より。一部筆者が加筆・編集しています。)
ポイントは机上でのセグメンテーションは難しく、顧客とのコミュニケーションからスタートし、実行と検証の繰り返しのプロセスを経るという点です。そこで「TRY&ERROR」という言葉が登場します。失敗してしまった際に使う言葉ではなく、意図的に多くERRORを経験し、顧客の要望を研ぎ澄ましていく過程で重要な考え方になるのです。このERRORの経験はプロセスの一環であって、ネガティブな感情が含まれてはいけないのです。
TRY&ERRORを歓迎する事業創出コミュニティ「Work Switch Lab」が来週からスタート
最後に、今回私たちREIONEがパーソルプロセス&テクノロジーさんと共催で、スタートする事業創出実験コミュニティのご紹介です。
ビジネスについてのアイディアはあるけど、これから一歩目を踏み出したい方向けのコミュニティ「Work Switch Lab.」です。一緒に取り組む仲間や、手法のサポート、デザイナーさんとの協業でモック開発に取り組める実験型コミュニティになっています。
私たちREIONEからも、事業創りのエキスパートが3名サポートをさせて頂きます。11月5日はの説明会では、この記事で取り上げましたサラス教授の「エフェクチュエーション」の解説もさせて頂きますので、ご興味を頂けましたら是非ご一緒にTRY&ERRORの旅路へご参加ください。
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