スパイダーマンは人生
このnoteは、今年度Reimond主催の #ゲームとことば Advent Calendar 2022 最終日25日目のエッセイです。
メリークリスマス!!!!
カバー写真で新人スパイダーマンのマイルズ・モラレス君が挨拶してくれました。ありがとう!スパイディ!
私は、スパイダーマンを「人生」と言わしめるほど思い入れがあります。なぜかというと、彼の身にも私の身にも生きていれば喜怒哀楽様々な出来事が起こるからです。特に今年はその言葉を噛みしめるような出来事がたくさんありました。なので、昨年度の主催のいはらさんに「今年の『ゲームとことば』は『ゲームと人生』にしたいです」と提案しました。そしてOKを頂き、皆様のおかげで25人揃ってアドベントカレンダーを作ることができました。心より感謝いたします。
それでは、私のゲームと人生を語る前に、前置きをどうぞ。
スパイダーマンとの出会い
いつの間にか好きになっていた。
出会いは小学生2年。今となってはおぼろげな記憶だが、朝のテレビ番組で流れたサム・ライミ版スパイダーマンがスイングする、ほんの一瞬の映像だった。その時だったか、中村獅童さんがスパイダーマンのコスプレをしたイベントが朝のテレビ番組に取り上げられていた。
同級生は「すぱいだま~ん!」と言いながらモノマネしており、とにかく謎だけど鮮烈な印象を残した。当時はインターネット環境などなかったため、スパイダーマンが一体何者なのか調べる手段が何もなく、ずっと謎のスーパーヒーローのままだった。小4の時にスパイダーマン3が公開されたが、その時はお母さんに見に行きたいと言えなかったせいで、見られずじまい。雑誌の宣伝をとにかく眺めて、それを元にどんなヒーローなのか想像を膨らませることしかできなかった。 約1年後、やっとその正体に迫る日が来た。小5の時に市立図書館が新しくなり、館内のPCでスパイダーマンの事を調べまくるようになった。どうやら、スパイダーマンという映画はアメリカのマーベルという会社が出しているスーパーヒーローもののコミックが原作で、主人公のピーター・パーカーは蜘蛛に噛まれてスパイダーマンの力を得たらしい…。
初めて謎が解けたその瞬間、私は沼の深部へと引きずり込まれた。今でも抜け出していない。いや、抜け出すつもりもない。それからPCでマーベルのサイトを見つけ、Spider-Man loves Mary Jane やパワーパックといった無料公開アメコミを読んでいた。とはいえ、当時はアメコミの写実的な絵柄が合わず、まだまだ英語を本格的に習う前だったため、日本の漫画風の絵柄を眺めているだけだった。それでも、アメコミを読めてものすごく幸せだった。 中1の時、お母さんがライミ版3部作のDVD boxを買ってくれてから、部活のあと特典映像も含め毎日のように見ていた。その上、ライミ版のノベライズまで。その後、お母さんがテスト勉強の気力になるように、ヴィレッジヴァンガードでずっと欲しかったスパイダーマンのコミックの表紙を集めたポスターを買ってくれた。
そのポスターの表紙に書かれた文字をお父さんが買ってくれた電子辞書で調べながら読み、ここから「スパイダーマンの原書を翻訳したい」という夢を持ち始めた。だから、英語の勉強のモチベーションがすごく上がり、成績も良くなった。そこから、映画『アメイジング・スパイダーマン』へ。
私にとっては、アメスパが初めての映画館で見たスパイダーマン。初々しい気持ちを思い出すから。中1の頃公開されるのを知ってから2年間、ずーっとアメスパを見ることがまさしく生きる希望になっていた。市立図書館のPCや家電量販店のスマホでアメスパの情報などを調べまくり、初めて好きになった俳優さんがアンドリュー・ガーフィールドさんとエマ・ストーンさんになり、サントラCDを初めて買って高校受験勉強の時に聞きまくった。
中3でやっと、我が家にインターネット環境が整った。初めてのノートPCを買ってもらってから、オタ活にかつてないほど拍車がかかる。以前の公式HPの#あめすぱのまとめツイ画面のデザインがとてもスタイリッシュで大好きだった。それに参加したくてTwitterを始めた(というよりテレビなどでリアルタイムに表示される機能に参加したかったから)。結局#あめすぱに参加できずじまいだったけど。
受験に合格して高1になり、英語がある程度何となく読めるようになってくると、今度はTwitterで続編の『アメイジング・スパイダーマン2』関連の噂の英語記事をまともに読まないままタイトルだけ訳して拡散しようとするぺらっぺらの映画情報垢もどきを始めた。当時は撮影現場写真がバンバン流出し、SNS上でアメスパ2の展開を予想したり何なりしていた。しかも高校時代の部活がかなりしんどかったためTwitterに依存しはじめ、承認欲求は強まるばかり…。 そしてアメスパ2のラストで初めて映画を見てショック受けて3日間ぐらい何も食べられなかった。今では色々思い出深いけど、更なる悲劇が起こる。アメスパ2の打ち切りだ。しんどい高校生活の希望としていただけに、ものすごくショックだった。その日の体育の授業を休んでしまうほど。学校も部活も趣味も辛すぎて1番病んでいた高2の唯一の希望が、コミックのスパイダーバース。初めてリアルタイムで買ったアメコミだった。おかげで、身も心も死なずに済んだ。 その後私より1つ年上のトム・ホランドさんがスパイダーマンに決まり、時代の終わりと始まりを経験した。『シビル・ウォー:キャプテン・アメリカ』が、大学受験を乗り越えた先の希望となった。大学に入ってから、友達をマーベル映画に誘ったり、『スパイダーマン:ホームカミング』のジャパンプレミアに行けたりして、これまで辛いことを乗り越えたご褒美が待っていた。生きてて良かった。
お待たせしました。やっと本題のゲームの話です。
我が家のゲーム事情
私の家はゲームに厳しく、易々と買い与えられるほど裕福でもなかった。だから、保育園から小学校低学年の頃は友達が持っていたゲーム機で遊びたくて仕方がなかった。しかもその友達はゲームボーイアドバンス、SPなどなど、色んなゲーム機を持っていたので、羨ましくて仕方がなかった。しかも、ゲームセンターへ一緒に行ってムシキングやラブアンドベリーで遊んだ。学年が上がって疎遠になってからはお父さんが当時流行のたまごっちのエンたまを買ってくれて、舞い上がるほど嬉しくて毎日お世話していたのに、しばらく経つと…失くしてしまった…。
やっと小6のクリスマスプレゼントで自分たちのDSiとポケモンソウルシルバーを買ってもらった。しかもプレイしていたタイトルはポケモン、ドラクエといった国内大型タイトルばかりだったため、海外のゲームに触れる機会は一切なかった。生粋の任天堂派である。
英日ゲームローカライズとの出会い
PS4本体とMarvel’s Spider-Manを買うきっかけは、大学3年のインターンに疲れ切っていたからだった。とにかく、精神的疲れを吹き飛ばすほどの圧倒的癒しを欲していた。当時Twitterのスパイダー有識者の皆さんから軒並み好評だったので、興味はあった。以前、2017年に発表されたE3のプレイ動画を大学の友達と一緒に見ており、気になってはいたが、その時はPS4もなくテレビは1台のみ。まずはどうやりくりすれば本体とソフト代を工面できるか計算し、リモートプレイ機能を使えばPC画面に映して遊べる事まで調べて、購入した。それが初めてのPS4、初めての洋ゲー、初めての日本語に翻訳されたゲームだった。
実際にやってみると、最初のチュートリアルボスからフルボッコにされてしまう。何しろボタンの多さに慣れなかった。それでもアドバイスをもらって何とか最初のボスを倒し、きれいなグラフィック、スパイダーマンらしい優雅でかっこいい音楽、動かすだけで楽しいスイング、そして素晴らしい英日ゲームローカライズに感激しながらあっという間にクリアした。しかも2018年当時は打ち切りのままだったアメスパオマージュのような場面が随所に散りばめられていたため、ただひたすら嬉しかった。あの時好きだったスパイダーマンは別の形で受け継がれていたんだと。
何より好きだった要素が、スパイダーマンのスーツが持つ機能の軽口。起動させればスイング中や敵の種類に応じてジョークを言うのだ。これが楽しくて、慣れた時にはこのパワーだけを付けてメインストーリーを完走した事もある。その楽しさを支えているのがゲームローカライズだ。
失礼ながら、私はインソムニアックのスパイダーマンまでゲームにも翻訳がある事自体を知らなかった。その翻訳者さん達を知ったきっかけはスパイダーマン役の声優さんの実況配信だった。主役を演じられた声優さん本人がゲームを実況する姿は映画などの映像特典として収録されている音声解説さながらでとても楽しく、ファンやローカライザーの方々と交流するその光景に感銘を受け、私はゲーム翻訳者を目指すこととなる。その後素敵なご縁を頂くとは露知らず…。
おわりに
長々とここまで振り返ってみると、いつもそばにスパイダーマンがいる。確かに他のジャンルが好きだった時もあれど、今日カバー写真を撮るために”Marvel’s Spider-Man: Miles Morales”を久々に起動して街をスイングしたら、実家のような安心感を得られた。
現在は真のゲーム翻訳者になるには程遠いと身をもって知ったため、転職先で本業をしている傍ら、翻訳の勉強と有志翻訳をメインにしている。始めに抱いていたアメコミ翻訳者になる夢もまだ諦めていない。大きな回り道が一番の近道になると信じて。
最後に、スパイダーマンに出会ってなかったら、今の私はいなかった。だから、スパイダーマンは人生。これからもずっと、私は死ぬまでスパイダーマンを好きでいつづけ、彼の物語は私が死ぬまで続いていくだろう。
以上で、今年の #ゲームとことば Advent Calendar 2022は終了です。ここまで読んで頂き、ありがとうございました。それでは、また来年。