「最近買ったコート」が7年前のものだった
冬の日本に帰ってきた私は、久しぶりにコートを着た。
常夏のホーチミンに5年間もいたものだから、この数年は冬服を1着も買っていない。日本に帰ってから着ている冬服は、もっぱらベトナムに行く前に着ていた服たちだ。
日本から旅立つ前の冬、一目惚れしたコートを奮発して買った。ベージュ色、ミディ丈の、ウエストで紐を結ぶウールのコート。当時東京でOLをしていた私は、ピンヒールでタイトスカートを履き、白いマフラーに顔をうずめ、お気に入りのコートを着て東京を闊歩するのが大好きだった。なんだか大人になった気分がした。
ベトナムに引っ越してからも、「冬の日本に帰国したら、あの新しいコートを着たいな!」と密かに楽しみにしていた自分がいる。
ところが。いよいよ日本に帰国し、ようやくコートを着れる季節になった日。あのベージュのコートを着てみたら、あの時の高揚感がどこかへと消え去っていた。
出産を経てヒールもスカートも履かなくなった今の私には似合わないのかもしれない。ミディ丈で細身なコートは、今の流行には合わないのかもしれない。
それに、まだ数ヶ月しか着ていなくて新しいコートだと思っていたのに、よくよく考えてみたら、購入してから7年も経っていた事実に軽く衝撃を受ける自分がいる。5年間も全く出番がなかったから、冬服に対する時空の認知が歪んでしまっていたようだ。
7年も経っていたら、そりゃ流行遅れになるしライフスタイルにも合わなくなるよね。
その時どんなにお気に入りだったとしても、一生ずっとお気に入りであり続けるとは限らない。だからこそ、お気に入りのものは気持ちが高揚している旬の内に、出し惜しみせずたくさんたくさん使ってあげるべき。
高かったから普段使いするのは勿体無い!と使い渋りがちな、貧乏性な自分への戒めを込めて記します。