本を通して、人と出会い、時間に出会う
「良い人に、出会った」と思った。
実際に会ったことはないが、本の中で出会った人に、励まされた気持ちになった。
ひとり出版社「夏葉社」の島田潤一郎さんの著書「古くてあたらしい仕事」は、
島田さんが、これまで取り組んできた仕事について書いたエッセイ。
出版社を立ち上げたきっかけや、最初に出版した本、著者や装丁者、出版社や書店の人のことに触れながら、
「何を大切にして、仕事をしているか」について書いている。
読み終わった後に、書籍のタイトルを見直して、
今も、昔も、仕事において大切なことは変わらないのかもしれない。
古いと思っていることが、実はあたらしいことでもある気がしてきた。
本書では、「本を読む」ことについて、次のように書かれている。
『本を読むということは、現実逃避ではなく、身の回りのことを改めて考えるということだ。
自分のよく知る人のことを考え、忘れていた人のことを思い出すというだ。
世の中にはわからないことや不条理なことが多々あるけれど、
そういうときは、ただただ、長い時間をかけて考えるしかない。思い出すしかない。
本はその時間を与えてくれる。ぼくたちに不足している語彙や文脈を補い、
それらを暗い闇を照らすランプとして、日々の慌ただしい暮らしのなかで忘れていたことを、たくさん思い出させてくれる。(本書P112)』
本を通して、自分を見つめなおすことができたり、自分のことを少し客観視できた経験がある。
読書が、囚われていた観念や感情から自分を解放するきっかけになったこともある。
読書を通じて、著者と出会い、言葉や思いを交わしたような気持ちになることもある。
「古くてあたらしい仕事」は、自分自身の仕事や、時間の使い方、人との関わりについて、改めて見直す機会をくれた一冊だった。