【お墓参りにいった故郷の書店で、出会ってしまった1冊】死ぬこと、生きることについて立ち止まって考える「笑って、バイバイ!」
本に対して、「出会ってしまったな」と思うことがある。
ゴールデンウィークの前半、お墓参りのために帰省した先で、書店に立ち寄った。その棚で目に飛び込んできたのが、老人が口もとを開けてニカッと笑っている写真が表紙になっている本「笑って、バイバイ!」(たかのてるこ・文/写真)だった。
東京に住んでいるため、岡山にあるお墓参りに行く機会はそう多くない。半年に1回、行ければいいほうだ。コロナ禍は移動が制限されていた時期もあり、参れなかった年もある。
日頃はなかなかできないお墓参りをするときには、自分の先祖のことを考えたり、祖父母のことを思いだしたりする。
そして、さらに、家族、親戚とのつながりに思いをはせて、「私」という存在について考えたりする。
「私」が今、ここに、こうして生きているのは、両親がいるからだ。そして、父、母、それぞれに両親があり、祖父母にもまた両親がいた。その繋がりの中で、誰か一人でも、欠けていたら、今、ここに、「私」は存在しなかったかもしれない。
「私」が今、ここに、こうして生きているのは、「偶然」といえる。「奇跡」といっていいかもしれない。
命を繋いできてくれた人たちに対して、「ありがとう」という思いを込めて、お墓参りをしようと思う。
「笑って、バイバイ!」のテーマは、「死」だ。
「死ぬって、どういうこと?」という問いを、考えさせる。
この問いは、「生きるって、どういうこと?」と表裏一体だ。
自分自身の死だけではなく、親しい人との別れについても触れている。
国内外、子どもから高齢者まで、さまざまな人の写真に、数行の短い文が添えられている本なのでさっと読み通すことができるが、自分の経験や人間関係に照らし合わせ、「生きること」「死ぬこと」について考えながら読んだ。
しばらくして、再び、気になった頁に戻って読み直したりした。
お墓参りに行くというタイミングで、先祖や家族のことを心の片隅に置いていたからこそ、出会った本だと思う。