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【読書感想】満願/米澤穂信
[ネタバレを含みます]
ブラックでどこか薄気味悪い雰囲気満点のミステリー短編集。
特に印象に残ったのは「死人宿」「万灯」「関守」。
「死人宿」は設定からしてミステリー好きの私は興味を惹かれる。
死にたい人たちに評判の宿。失踪した彼女を追ってやってきた主人公は、彼女に依頼されて宿泊者の中から遺書を落とした人を見つけようとする。最終的に主人公の推理によって遺書を書いた人を特定した。
しかしその直後、別の宿泊者が自殺した。ヒントは手にしていたはずだったのに…。この最後のどんでん返しが面白い作品。
「万灯」は本書の中で最も長編の作品。
舞台はバングラデシュだが、情景描写が緻密で、なおかつ文章は読みやすく、すんなり物語に入り込めたところがさすがだなと思った。
主人公はバングラデシュのボイシャク村のリーダーと、共犯者だった森下、2人を殺す。完璧に事を済ませたと思ったが、主人公は最後に絶望の淵に落とされる。
森下はコレラに感染していた。そして森下を殺した際に、自分も感染してしまったのだ。自分の犯行の裏付けから逃れられないことに主人公は絶望する。
まるで現在の感染症を予期させるようなラストだった。
そして「関守」。これはいかにも世にも奇妙な物語にありそうな話。
4件の死亡事故を記事にしようとするライターの主人公が、現場近くの小さな飲食店に取材目的で訪れる。
しかし飲食店のおばあさんと話すうちに徐々にそれぞれの事件が明らかになり、じつはその真相は、最初の事件でおばあさんの娘が殺人をはかったことを隠蔽するため、後の3件の事件はおばあさんが事故に見せかけて殺していた、ということだった。
真相をすべて聞いた主人公は意識が遠のいていき、ラストを迎える。
◆読了日
2022年5月29日
◆読んだキッカケ
米澤穂信さんの儚い羊たちの祝宴が好きで、それに似た小説と聞いて読んでみた。
◆おすすめポイント
ブラックでどこか薄気味悪い雰囲気満点のミステリー短編集。
世にも奇妙な物語のような話を読みたい、という方にとてもおすすめです。
◆おすすめ度
4/5