記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

【読書感想文】すべて真夜中の恋人たち/川上未映子

[ネタバレを含みます]

 独特の雰囲気の小説だった。あえてひらがなを多く使っているところが、この小説の優しい雰囲気を補完している。周りの自己主張の強い女性たちから言葉のサンドバックのように言いたいことを聞かされる主人公の冬子。それとは対照的に、ゆっくりとしたペースでしっかりと冬子の話を聞いてくれたのが、三束さんだった。この世界でひとりぼっちの冬子。三束さんにぶつける思い。あなたを愛しています。静かでありながら、とても情熱的だった。

 この小説のテーマは光だった。

 三束さんは、冬子の誕生日には来てくれなかった。そして、本当は高校教師ではなかった。三束さんの本当の気持ちは、どうだったんだろう。ふたりは結ばれることはなかったけれど、だからこそ、キラキラした思い出として輝けるのかもしれない。


◆読了日

2023年2月28日

◆読んだキッカケ

落ち着いた恋愛小説を読みたい気分だったのと、タイトルに惹かれて。

◆あらすじ

<真夜中は、なぜこんなにもきれいなんだろうと思う。
それは、きっと、真夜中には世界が半分になるからですよと、いつか三束さんが言ったことを、わたしはこの真夜中を歩きながら思い出している。>
入江冬子(フユコ)、34歳のフリー校閲者。人づきあいが苦手な彼女の唯一の趣味は、誕生日に真夜中の街を散歩すること。友人といえるのは、仕事で付き合いのある出版社の校閲社員、石川聖(ヒジリ)のみ。ひっそりと静かに生きていた彼女は、ある日カルチャーセンターで58歳の男性、三束(ミツツカ)さんと出会う・・・。
あまりにも純粋な言葉が、光とともに降り注ぐ。
いま、ここにしか存在しない恋愛の究極を問う衝撃作。

◆おすすめポイント

あえてひらがなを多く使っているところが、この小説の優しい雰囲気を補完している。この小説のテーマは、光だ。繊細で儚い、大人の恋の物語。

◆おすすめ度

2/5



いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集