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映画「O嬢の物語」。

#映画感想文というnoteのお題企画に乗ってみようと思います。
ちょうど今GYAO!の無料配信(記事記載時)で観られると言う事もあるので作品は『O嬢の物語』。

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こちら原作はいうまでもなくドゥ・マゴ賞受賞したポーリーヌ・レアージュの小説。訳は澁澤龍彦大先生です。

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私が小説を読んだ頃は作者が既に判明していたようですが、まだ情報があまりない時代だったので不明というまま、作者は男じゃないか説もあったりしました。
ポーリーヌ・レアージュが、『エロティカ~女性のセクシュアリティ探求の旅~(97年)』と言うドキュメンタリーに出演した際、トレイラーでその姿を始めて見て「まだ生きてる人なのか!」ととても驚きました。ミステリアスだったほうが小説の面白みがあったよなぁなんて。

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『O嬢の物語』、肝心なあらすじはこっちなどを見てもらう事にして。

昔のSM題材映画はなんでかパゾリーニのソドムの市みたいなエログロ!な感じか、エマニエル夫人みたいなソフトポルノみたいなノリのイメージが勝手にあるのですが、まさにO嬢は監督がエマニエルも撮ったジュスト・ジャカン。同じようにソフトフォーカスな柔らかい霧が終始かかったような映像とエロティックなシーンが多いです。
ジュスト・ジャカン監督って他なに撮ってるのかな?と思ったら、チャタレイ夫人とか、ゴールドパピヨンとか。うーん。
ゴールドパピヨンはジョン・ウィリーの『グウェンドリンの冒険』を原作にしているのですが、全く違う作品と噂で聞いております。
今見ると意外に面白そうな気も。

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ジョン・ウィリー原作のSweet Gwendoline


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映画のポスター。
ジョン・ウィリーの良さゼロ!


Oはモード系写真広告社で働いている設定なのですが、ジュスト・ジャカン監督はもともとファッション写真家で『ヴォーグ』や『ELLE』なんかも担当していたらしいので、映画の中に出ててくるファッショナブルな写真は彼の作品だったりするのかしら?

映画自体は、基本小説に忠実な感じもあってうまくまとまっているところも多いと思います。
フランス映画と言うところと、O役も他に出てくる女性達も綺麗なのが良い。Oの恋人ルネ役がウド・キアなのが今となってはこの映画の価値を挙げている感じ。ステファン卿のイメージはちょっと違うナーくらい。
コルセットや革のぴっちりとした首輪や手枷を着けた女性達や、アンヌ・マリーの館の俗にいうダンジョンルームなどはとても綺麗で良い描写だなぁと思います。

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『O嬢の物語』は愛する人のいう事を全て聞き、自分は彼のもの、自分の意志も彼のもの、という逆ジャイアン的自分放棄による、相手への忠誠心や愛を表している作品なので、言うほど奴隷感はないし、サドマゾな痛めつける調教シーンと言うのも実際小説でも少なめ。どちらかというと精神的な服従と嫉妬や葛藤シーンが多く描かれています。
男性側も女性を自分の意のままに従わせたいという欲望のほうで、所謂サディスティックなマスターという感じではない。
鞭を打たれたり、ボディピアスや焼き印など衝撃なシーンもありはするものの(当時はさらに衝撃だったと思いますが)、映画ではその恐怖心や異様感は伝わり難く、やはり男性が主なのでどうしても「男の快楽系」「肉欲」になりがち。個人的には舌打ちの場面です。

自分自身SMをやる人間ではありますが、「O嬢の物語」はマゾ的でありながら、かなり女性的視点だなぁと本当に思います。
一種の悟りに近い精神になり、受け身側でありながら主よりも迷いがなく、自信に満ちたところなど、「良いマゾが良い主を育て、マゾが主を引っ張る」SMの関係性も感じられます。

自分の意志と反していても相手が望むものを受け入れるマインドは私には苦痛でしかないのであまり持ち合わせてないのですが、カルトなどを見てても思うのは、支配される精神状態は割と不幸でもなさそうな気がするところ。
結局信じている自分が好きなんだと思うんですよね。
マゾ性が強い人と言うのは相手に写る自分好き。ここで言うのは、基本的な性格の優しさや母性とかは関係なく、Oも実は無償の愛なんかではないんですよね。

小説では削除されたとされるラストの説明があり、かなりの悲劇で終るため、Oは幸せだったのだろうか・・・と言う気持ちと、まぁそうなるわな的気持ちが湧き出て考えさせられる感じなんですが(そこがこの物語の良さでもある)、映画版はなんだかよく分からない感じで、愛に溺れ確信したいが為に盲目的に過激な事をやっちゃったカップル、みたいな、今までのやり取りが途端に軽薄になってしまう残念な感じで終わります。
つい「なんだそりゃ」って言いたくなりますが、まぁ、ファンタジー要素も強いので深刻さは映画に必要ないのかも。

『O嬢の物語』は多分色々と映像作品が作られていると思いますが、部分的に割と良い出来なのがこの75年版なんじゃないでしょうか。SM小説の映画版と見るのはさすがに微妙なので、映画を見て是非小説も読んでみて欲しいです。

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ホーホー


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