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「専門家」がガチの初心者を教えるという行為はかなり難易度が高い

何か新しいことを学ぼうとするときは「その道の専門家」から学びたくなりますが、本屋さんで如何にもその道の専門家が書いた入門書を手に取ると、最初の1ページが理解できなくて挫折してしまうことがよくあります。

「初心者でもわかる~」とか、「漫画でわかる~」というタイトルの本でもある程度の予備知識が無いとその先には進めません。

何にも分からない「ガチの初心者」にとっては学び始めるためのハードルが結構高いのですが、これは専門家の教え方が悪いというよりも、専門家が想定している初心者の位置と、本当の初心者の位置が大きく違っていることが根底にあるのではないかと思います。

というのも、その道の専門家は自分自身が初心者だったときに既にその分野に関心があり、一定の知識や素養が備わっています。

そのため、専門家が想定している初心者の位置は下図のように「その分野のピラミッドの一段目」にいるイメージになります。

この場合、初心者は専門家の位置が見えており、そこまでのステップも見えているため、専門家は「ピラミッドの登り方」を教えれば登れるようになります。

一方でその分野に全く疎いガチの初心者の場合、下図のように専門家になるまでのピラミッドは見えないぐらい高い崖の上にあるというイメージです。

こうなると初心者は専門家のいる位置がそもそも全く見えていないため、専門家がいくら「ピラミッドの登り方」を教えても初心者は言っていることすら理解できません。

この場合、初心者に必要なことは「崖をどう登るか」教えてもらうことですが、問題は専門家の多くは最初から崖の上に居た(だから専門家になれる)ため、崖を登った経験がなく崖の登り方を知りません。初心者がどれぐらい深い崖の底にいるのも見えないため、教えようが無いと思います。

例を挙げると、データ分析の専門家は最初から数学がある程度得意な人が多いが、初心者は中学1年レベルの数学で躓いている人なので、専門家は「初心者が何で理解できないのか」イメージできません。

そうなると専門家から見て「この程度のこともわからないのか?」となり、初心者から見て「何を言っているかわからない…」となってしまいますが、別にどちらが悪いということではなく、それぞれの立っている位置があまりにも違うことが原因にあると言えます。

一方で、ガチの初心者の中にはまれに自力で崖を登った経験がある人もいます。この人たちなら「崖の登り方」を教えることができますが、崖を登り切って専門家にまでなった人は少なく、多くは途中でやめています。

よくネットで初心者向けに書かれているサイトがあり、かなりわかりやすくまとめられていますが、本当の専門家が書いたわけではないため、間違った理解をしてしまう恐れがあります。(崖を登ったけど、違うところに出てしまったイメージ)

このようにガチの初心者に教えるのは専門家でも難易度が高い行為であるため、「そもそも初心者を引き上げる必要があるのか?」という疑問もあり、崖の底にいる初心者の面倒を見るのは時間の無駄という考えもあります。

ただ最近では「全社員にDX教育」を掲げている企業も増えており、今までなら初心者は学ばなくてよかったことを今後は身につける必要が出てきます。

そうなると崖の底にいる初心者をどう引き上げるかが課題になりますが、専門家に教えさせればできるようになるわけではないので、専門家がうまく教えられない「崖を正しく登る方法」を何とかして見つける必要があるかもしれません。

「これだ」という効果的な方法はまだありませんが、人材育成に携わる者として「ガチの初心者を引き上げる方法」を今後も探していきたいと思います。

今回もお読みいただきありがとうございました。