職業人として「何を頑張ればいいのか?」迷ったときに立ち返る2つの軸
今日からいよいよ新年度が始まり、新社会人の方にとっては今日が長い職業人生の第一歩になると思います。
バブルの頃までは会社が定年まで面倒を見てくれるという時代であったため、新人はとにかく元気よく挨拶と返事を行い、目の前の仕事に一生懸命取り組めば何とかなりました。
しかし、今ではどんな大企業でも将来どうなるかわからないため、自分の職業人生は自分で面倒を見る必要があり、ただガムシャラに働いても人生がうまくいく保証はありません。
そのため、今後の職業人生をどう生きて行けばよいか不安を感じている新社会人の方も多いかと思います。
また、今までは「正社員」という働き方が主流でしたが、今後は働き方も多様化してくるため、「会社員」として会社に雇われる働き方だけではなく、自分自身が事業主になる働き方も合わせて、「職業人」としてどう生きていくか考えることが重要になります。
そこで、どの職業にどういう形で就こうとも、職業人として成長していくための2つの軸について紹介したいと思います。
1.「成熟」という軸
一つ目の軸は人として成熟することです。別の言葉で言い換えると「人間としての器を拡げる」ということになります。
人は誰でも子供から大人になっていきますが、その過程の中で肉体的な成長のみならず、精神面も成長していきます。
例えば子供の頃は自分にとっての世界は半径1メートルの中なので、自分の欲求のままに行動してしまいます。そのため、悪さをして大人に怒られても「何がいけないのか」理解できないこともあります。
年齢を重ねるにつれて世界は自分だけのものではないことを知り、周囲の人とも折り合いをつけられるようになります。そして、大人になると社会を意識して行動するようになります。
人としての成熟は年齢的に大人になったから終わりというわけではありません。人は何歳になっても成熟し続けることは可能です。
今まで許せなかったことが許せるようになる、今まで見えなかったことが見えるようになることも成熟の証です。
成熟することによって幅広い視野と長期的な視点から物事を考えることができるようになり、より責任のある立場を担うことができるようになります。
人は年齢を重ねるごとに成熟していきますが、成熟の度合いは必ずしも年齢と比例しません。
未成年の方でも社会問題に関心を持ち、人格的に優れている人もいれば、いい年したオッサンが子供のようにわがままということもあります。
2.「熟達」という軸
2つ目の軸が仕事で熟達することです。こちらも言い換えると「仕事を極める」ということになります
どのような仕事でもまずは駆け出しの見習いから始めますが、見習いのうちは与えられた作業をこなすことはできても、価値のある成果物を生み出すことはできません。
高いレベルで熟達してこそ、その人の仕事が生み出す成果物には高い付加価値があります。
熟達した人の具体的な例は職人や料理人をイメージしていただくとわかりやすいと思います。
例えばレストランでは料理人としての熟達度が低いアルバイト店員が作る食事は安い値段しか取れませんが、料理人としての熟達度が極めて高い一流シェフが作る料理は何万円もの価値があります。
どのような仕事も標準的なレベルまでは比較的に速く到達することができますが、その道のプロと認められるレベルまで熟達するには相当の年月が必要になります。
すべての職業は「成熟」×「熟達」
この世にはあらゆる職業が存在していますが、度合いの違いはあってもすべての職業で一定レベルの「成熟度」と「熟達度」は求められます。
例えば営業の仕事で入社した新人にとって、入社初日は学生気分がまだ抜け切れていないこともあるので、営業先で信頼してもらえるためには最低限社会人として恥ずかしくないレベルまで「成熟」する必要があります。
また、入社初日は営業のやり方も何もわかっていないため当然売上を上げることはできません。売れるようになるためには営業の知識とスキルを習得し、経験を積んで「熟達」する必要があります。
このように、「成熟度」と「熟達度」が両方とも一定のレベルになったとき、初めて一人前の営業として認められます。
これはマクドナルドのアルバイトでも全く同じであり、たとえアルバイトであっても店のルールを守り、お客さまや他のアルバイトに敬意を払える「成熟度」と、作業を決められた時間内に正しく進められる「熟達度」が必要です。
「成熟」に重点を置いた職業人生
職業人には「成熟」と「熟達」の両方が必要ですが、どちらに重点を置くかは人それぞれ異なります。
「成熟」に重点を置いた職業人生を歩みたいと考えた場合、まずは担当業務において一人前と認められた上で管理職に昇進し、ゆくゆくは経営者を目指していきます。
役職が上がると責任の範囲も広くなり、より長期的な視点で判断することが求められますので、人間的に成熟することは不可欠です。もし人間的に未熟なまま「肩書だけが偉い人」になってしまうと部下は誰も付いてこなくなり、チームが崩壊することもあります。
そのため、高い役職に就きたいと考えているなら自身の日ごろの行いを振り返り、必要に応じて改めることで自分自身の人間としての器を拡げていくことが大切です。
「熟達」に重点を置いた職業人生
ひと昔前のサラリーマンは「出世」という成熟に重点を置いた生き方しか知らないということがありましたが、今では「出世」以外にも職業人として「その道のプロ」になるという生き方があります。
これが「熟達」に重点を置いた職業人生です。
役職はあくまで「役割」に過ぎませんので、役職がつかなくても業務に精通して高い付加価値を生み出せるなら、その人は会社で重宝され、独立しても仕事に困ることはありません。
先ほど熟達者のイメージとして職人や料理人を挙げましたが、実は清掃のような身近な仕事でもすごい熟達者になることができます。
新津さんは私が尊敬する職業人の一人ですが、まさしく自分の仕事で「熟達」することをひたすら追い求めた結果、唯一無二の存在にまでご自身を高められたと思っています。
職業人としての生き方は無限にある
ここまで職業人として成長するための2つの軸と、それぞれの軸に重点を置いた生き方を紹介しましたが、大事なことはどちらの軸に重点を置いても(あるいは両方バランスよく伸ばしても)、職業人として大事なことはほんの少しでもいいので「成熟」もしくは「熟達」し続けるということです。
評価や報酬はあくまで「成熟」もしくは「熟達」した結果に過ぎませんが、たとえ期待通りの評価が得られなかったとしても、昨日まで許せなかった上司の態度が許せるようになればそれは人間として大きく成熟した証になります。
長い職業人生でいつ何が起きるかわかりませんが、自分が今どの程度成熟しているか、どの程度熟達しているかを振り返ることで、自分自身の行く道を見失わずに済むと思います。
今回もお読みいただきありがとうございました。