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気温も年齢も『例年以上』?——変わりゆく常識と走り続ける私たち
時計の針は誰に対しても平等に進む。でも、その針の動きを感じる速さは、人それぞれ。46歳になった今、ふと「そういえば世間的には立派な"おばさん"の域に入っているのかも」と気づいた私と、70代でなお軽やかに走り続ける人々——年齢という数字と、私たちの感覚の間にある、あの不思議な隔たりについて。
おばさんの境界線は風のように揺れる…のかな?
「あのおばさんに、ちゃんとお礼を言いなさい」
そう言われると、「あれ?」と一瞬考えてしまいます。そういえば私も46歳。世の中的には「おばさん」と呼ばれる年齢なのかもしれませんね。ただ、特に意識したことはなかったかな。
甥っ子たちからは「ねぇね」と呼ばれているんです。これは実は妹が気を遣って、甥っ子たちにそう呼ばせるようにしてくれたおかげなんですよね。そのさりげない優しさに、年齢を重ねることの良さも感じたり。
50代、60代、70代でもトライアスロンのロングレースにバンバン出場したり、還暦パーティでミュージックガンガン鳴らして踊りまくる先輩たちを見ていると、「シニア」という言葉はあまり浮かびません。
「おばさん」って一体どこからなの?「おばあちゃん」はどこから始まるの?
かつて私が子どもだった頃、30代の女性は子どもの自分からしたら「おばさん」でした。40代は完全に「おばさん」で、60代からは「おばあちゃん」。でも今、その境界線はまるでマラソンコースの風のように、揺れ動いているように感じます。
時代とともに移動する人生のゴールポスト
「ゴールポストは常に動く」という言葉があります。つまり、達成すべき目標や基準は時代とともに変化し続けるということ。
これ、年齢の感覚にも当てはまりますよね。
まさに今日のニュースで「例年以上に暑くなります」という天気予報がありましたが、それを聞いて、「え?例年もすでに異常な暑さだったはずでは?」とツッコミたくなる感覚。基準点自体が毎年少しずつずれていくんです。
実際のデータを見ると、日本の年平均気温は長期的に100年あたり1.40℃の割合で上昇しており、これは世界平均の上昇率よりも大きい値なんです。特に2024年の平均気温偏差は+1.48℃で、統計開始以来の最高値を記録しています。
それは人生の年齢感覚も同じこと。かつて「おばさん」と思っていた年齢に自分が到達したとき、なぜか「まだまだおばさんじゃない」と思えてしまう不思議。でも、単に感覚が変わっただけではなく、実際に私たちの寿命や健康寿命も延びているからかもしれません。
年齢を超えた「今」を生きる力
人生には、年齢を忘れられる瞬間があります。
私にとってはトライアスロンのスイム最中などがまさにそう。青い海を(時々蹴られたり乗っかられたりしながら)淡々と泳いでいる競技中は、自分が何歳かなんて考える余裕はなく、ただ「今」この瞬間に集中するだけ。その感覚が、何とも言えない解放感をもたらしてくれるんです。
提供されたデータによれば、日本のシニア層(65歳以上)の人口は約3,626万人に達し、そのうちアクティブシニア(就業している65歳以上の高齢者)は約912万人もいるんですね。彼らは健康で活動的なライフスタイルを送り、フィットネスや旅行、学習など様々な活動に積極的に参加しています。
特に驚くのは、国内トライアスロンの長距離大会における参加者の平均年齢が53.7歳と高いこと。五島長崎国際トライアスロンでは、男子参加者680名のうち445名が50歳以上、202人が60歳以上と、高齢者の活発な参加が見られるんです。
その一方で、人気のレース全日本トライアスロン宮古島大会というロングレースには65歳までという年齢制限があります。昨年参加して、その素晴らしさを体感したからこそ思うのですが、この制限に引っかかってしまった元気な先輩たちを見るたびに、「まだまだ全然出られるのに」と言いたくなってしまいます。
もちろん、この年齢制限は健康上の理由やレース中のリスク管理を考慮して設定されているのでしょう。ただ、この制限が決められた当時と比べ、トライアスロン人口も増え、60代以上で生き生きとトライアスロンのロングレース、トレイルランニング、マラソンをこなす元気なシニアがたくさんいる現状を見ると、見直しの余地はないのかな?と考えてしまいます。簡単なことではないとは思いますが、医療の進歩や健康寿命の伸びを考えると、この年齢制限の再検討もいつか行われるのではないでしょうか。
70代の先輩たちが輝いて見えるのも、きっとそういう「今」を大切に生きているからなのかもしれません。彼らは年齢を言い訳にせず、ただ自分のやりたいことに向かって全力で取り組んでいる。
「例年以上」という基準の揺らぎ
「例年以上に暑い」という表現。でも「例年」自体がすでに「以上」になっている...。
気象庁のデータによれば、猛暑日(日最高気温35℃以上)の年間日数は100年あたり2.3日増加、熱帯夜(夜間の最低気温が25℃以上)は100年あたり19日も増加しています。この数字を見ると、私たちの「普通」の感覚がどんどん更新されていることが分かります。
これって、日常生活のあらゆる場面で感じる「基準のずれ」に似ていませんか?「若い」の基準も、「元気」の基準も、「普通」の基準も、常に変化しています。
人間の体力にも、気温にも、おそらく限界があるはず。でも私たちは、その限界を少しずつ押し広げながら生きている。
年齢の感覚も同じで、60代、70代が「若い」と感じられる時代になりつつあるのかもしれません。でも、それはただ単に基準が変わったのではなく、私たちの生き方そのものが変化しているからこそ。日本の高齢者市場は2025年には101.3兆円と予想される巨大市場となる見込みで、総人口に占める65歳以上の割合も30.3%に達すると予測されています。
東京マラソンとPBへの挑戦——これからのこと
週末の東京マラソン。気温予報を見ると「この時期としては高すぎる」。 PB(パーソナルベスト)達成への期待と不安が入り混じります。
「40代半ばを過ぎ、活性化も進む超有酸素運動をこの気温で、PBなんて...」
そう思いかけて、ハッとします。
年齢も、気温も、「例年」の基準も、全部変わっていく。変わらないのは、挑戦することの価値。
トライアスロンも、マラソンも、年齢という名のレースも、結局は自分との戦い。
「おばさん」と呼ばれようが、「ねぇね」と呼ばれようが、ただ前に進むだけ。
「おばさん」は年齢ではなく、好奇心を失った時に始まるのかもしれません。
そう考えると、私たちの周りには「おばさん」ではない、かっちょいい姉様兄様な先輩たちがたくさんいます。彼らに続いて、私もまだまだ(スポーツに限らず)人生のレースを楽しみたいと思います。
ところで、週末のマラソン、気温に負けずに楽しんできます!