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実在するフィリピンの偉人たちによる、まさかのスタイリッシュな 2D対戦格闘ゲーム!『BAYANI:Fighting Game』

『BAYANI:Fighting Game』はフィリピンにまつわる歴史上の偉人たちをモチーフに作られた2D格闘ゲームだ。2019年Steamでアーリーアクセスとしてリリースされており、今年開催されたEVO JAPAN 2024ではアーケードプラットフォーム「exA-Arcadia」での稼働も発表されていた。

筆者が本作と出会ったのは2019年ラスベガスで開催された世界的格闘ゲーム大会「EVO 2019」だった。その会場の中でインディー開発による対戦ゲームが中心に出展されたブースがあり、開発スタジオであるRanida Gamesの方からご説明をいただきつつ対戦したのを覚えている。

紆余曲折あり当時のお話やインタビュー等は掲載できなかったものの、私はこのゲームのことを忘れることができず、数年前に購入して以来気が向いたときに遊んでいた。

私にとってフィリピンは第二の母国ということもあり縁深い場所。そのため本作とは偶然の出会いではあったものの、なにか運命的なものを感じたのも確かだった。
筆者とフィリピンという国については、私自身もともと母の故郷としての認識でしかなかった。ある時期までは毎年のように旅行へ行っており、その都度現地のゲーム屋やおもちゃ屋へ行くのが楽しみになっていたが、事情により旅行もなくなり母方の親戚たちとも関係を断つことになってしまった。

ただ書類など自身の名前を記入する際に、いつもフィリピンについて、そして自身の家系について考えさせられる。家のしきたりのようなもので先祖代々の名前を継いでいるため本名がとても長いからだ。

その名のなかで、フィリピン独立革命に関わる人物名に近いものも入っていることに、本作を通じて気づくこととなった。

執筆 / 伊藤ガブリエル
編集 / 葛西祝

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キャラクターは現在、8人が参戦している。各キャラの特徴は、なんと先述した偉人たちとさまざまな漫画やゲーム作品等のオマージュを組み合わせたものだ。。

リスペクト元の偉人たちは、主に19世紀末から20世紀初めに起きた、フィリピンによるスペインの統治からの独立革命を生き抜いた人物を中心にモデルにしている。なかには統治者側である、スペインの航海者であるフェルディナンド・マゼランの名も。公式サイトを見るとほかにもアイディアとしてではあるが、さまざまな追加キャラクターを考案中とのことらしい。


「ジョー」 フィリピン独立革命の英雄の一人「ホセ・リサール」をモチーフに作られたキャラクター フェンシングが得意であったこと、独立革命への多大な影響を与えた小説「われに触れるな」「反逆・暴力・革命」の出版者ということもあり「ジョー」の手にはレイピアと本が握られている。


「ドレ」フィリピン独立革命の父として称えられる革命家「アンドレス・ボニファシオ」をモチーフにしたキャラクター。「カティプーナン」と呼ばれる秘密結社の創設者で、同勢力内における革命思想の違いから内部対立が発生し処刑されている。


「ロラン・ツォラ」フィリピン独立革命の母と呼ばれた「メルコラ・アキノ」をモチーフにしたキャラクター。革命時すでに84歳という高齢でありながら、食料の供給と治療により革命の中で傷ついた者たちを救い続けた。 (『BAYANI:Fighting Game』公式サイトから引用)

各キャラの戦闘スタイルはバラエティに富んでいる。レイピアや拳銃といった一般的な武器はもちろん、フィリピン独自の武術であるエスクリマ(アーニス)を用いているような棒使いや、『ジョジョの奇妙な冒険』におけるスタンドのようなものやオーラ、魔術を繰り出して戦う者もおり幅広い。

また、戦いの舞台となるステージも、フィリピン現地で有名な建造物や光景をオマージュしているものが多く、筆者自身訪れたことのある場所ということもあり、プレイ中には既視感を覚えることが多かった。


基本システム・操作自体はシンプルになっている。弱・中・強の攻撃と、3種類の必殺技をワンボタンで入力可能。特殊技や投げ、コンボ途中の無敵割り込みや強化必殺技などは基本的にはボタン同時押し、難しくても波動コマンドのみに留められている。

中攻撃ボタンを連打することにより浮かせ技を交えたコンボが使用できる。浮かせ後のジャンプ入力は自身で行う必要はあるが、まずは連打から始めても良いのは格闘ゲーム初心者にはありがたい。


シンプルな操作システムながらゲームスピード自体は若干早めな印象で、うまい立ち回りや強力なコンボを決めていくとなると、ほどよい操作難度が求められるものになっている。キャラクターが思っていたよりキビキビと動きつつ、かつ攻撃・やられやのけぞり判定も思い切ったものが多いので「え、それ繋がるの!?」といったコンボを探すのも楽しい。


キャラクターたちが使用する言語やステージ内にある建造物や風景などから、当時旅行で訪れていた現地での空気感を感じることができた。ゲームにおける地域や名称等はフィクションではあるものの、フィリピンの地を歩いた人にとっては「ここはもしかすると……?」という予測がある程度つけられるのも貴重な経験だ。本作の成り立ちやリスペクト元を紐解くにつれてフィリピン独立革命について興味を持つことができ、筆者自身の知見を広げるきっかけともなった。

2024年現在Steamでアーリーアクセスが継続中となっており、2024年6月にはFacebookにて追加キャラクターの開発中動画が掲載。残念なことに現状PC版ではオンライン対戦は実装されておらず、対人での対戦はローカルでのオフライン対戦かSteamの機能「RemotePlayTogether」を使用するほかない。exA-Arcadiaでのアーケード展開もあるということなので、今後のアップデートならびに正式リリースに期待したい。



伊藤ガブリエル
レトロ・クラシック・モダン問わず全力でゲームを楽しむフリーランスゲームライター。ジャンル隔てなく遊び、なかでも格闘ゲーム・アクション・FPSが得意。現在ゲームメディアでの番組出演と個人YouTubeチャンネルを中心に活動中。
●Twitter:@gabriel8492YouTubenote


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