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▽NEWS▽仏教SFアクションRPG『悟遊戯 OHENRO 88』開発開始。人類が絶滅した西暦56億年の世界で、「仏」のNFTデータを集める長い旅の背景を、クリエイターのたかくらかずき氏にちょっと聞いた。

ピクセルアートを中核とする現代美術家・たかくらかずき氏が新作のビデオゲーム『悟遊戯 OHENRO 88』の開発を発表した。人類が死滅した地球上で、ロボットとデータだけが残るなか、かつて人間の一部が信奉していた仏教の世界を旅するアクションRPGとのことだ。

いまやピクセルアートはどこもかしこも飽きるくらいにあふれかえっているし、TVCMでも90年代のアーケードやアクションを元にした映像が腐るほどある。そんな中、たかくら氏のコマーシャルワークやファインアートの作品が異質なのはピクセルアートの中に仏教を描こうとする点だ。

さらに射程を広げて語れば、たかくら氏はデジタルデータと真逆に見える仏教観を導入するアプローチが凡百のピクセルアート作家と一線を画している。レトロリバイバルの素朴さでもないし、またデジタルメディアが東洋思想を導入するみたいな、往年のサイバーパンクのようなキッチュさの強調としての引用という気配も少ない。デジタルの感覚と、仏教観がシームレスなのである。『悟遊戯 OHENRO 88』もおそらくそれが見られる一作になるだろう。

執筆・DMインタビュー / 葛西祝


今回公開された『悟遊戯 OHENRO 88』の動画からわかることは、人類が消えて56億年もの遥かな時間が経過し、地上には(おそらく人類が作り出したまま残された)ロボットたちが生き続けている。古いPCのモニターみたいな頭部をしたロボットは、たぶん主人公なのだろうか? かつて日本の四国だった場所で、長らく暮らしているみたいだ。

ある日、人工衛星MYOJOが地球上に落下。衛星の自動更新プログラムの期間が終了(おそらく数億年規模も更新できるという相当なものみたいだ)もしたことから大気圏を抜けて地上に戻ることになったらしい。MYOJOは主人公のロボットに、「悟りのプログラム」を譲渡する。


話が入り組んでくるのが、この悟りのプログラムはなんとP2P上のブロックチェーンで管理されているということで、主人公に渡せるのはインストール上のマスターキーのみだという。MYOJOは四国に点在する88か所のサーバーから、「仏」のNFTデータをインストールしてほしいと頼む。すべての「仏」をインストールしたのちにプログラムが起動し、悟りが開かれるのだという。

俗世の権化のように思えるNFTが仏教的な世界に絡んでくることにギョッとするが、たかくら氏によれば「このゲームはweb3ゲームのように直接NFTを使うゲームではないですが、デジタルデータのあり方としてNFTやAIというワードを扱う予定です。NFTの分散的な概念は東洋思想との相性が良いと考えています」という。

以前よりたかくら氏がNFTについて、世間一般が考えている新興ビジネスとは違う捉え方をしている。

たかくら氏が自身のnoteにて、「今までデジタルのアーティストとしてさまざまな場面でデジタル作品であるというだけで『量産品だ』とか『印刷物だ』とか決めつけられ、不遇な扱いを受けてきた」ことから、「とにかくデジタルデータの価値を追求するものであることは確かだった」と認識し、Opneseaに「NFT BUDDHA」シリーズを制作して販売するようになっている。ともかく、NFTがデジタルのメディウムを使う現代美術家にとっては、端的にビジネスのみで括れない、作家性の部分に絡んでいることがたかくら氏のテキストから伺える。

この「NFT BUDDHA」シリーズが、ある意味で『悟遊戯 OHENRO 88』を先行するコンセプトを持っているため、簡単にチェックしておくのも一興かもしれない。

前作『摩尼遊戯TOKOYO』。仏教における功徳を積むという異色のSTG


たかくら氏のクリエイティビティは、過去に『摩尼遊戯TOKOYO』にて爆発している。本作は仏教における六道の辻をモチーフにしたシューティングゲームであり、弾を撃つことを「功徳」と読み替えてみせた。結果、ゲームメカニクス自体はオーソドックスなシューティングながら、体験全体としてはたかくら氏のデジタルと仏教が重なるという、例のない視点そのものを体験するかたちだった。

たかくら氏によれば『悟遊戯 OHENRO 88』と『摩尼遊戯TOKOYO』は「直接的には繋がりはないですが、仏のデザインやテーマに繋がりがあります」とのことだ。

たかくら氏は今回、『悟遊戯 OHENRO 88』に当たってゲーム開発会社バーガースタジオを汲んで開発に当たっている。『摩尼遊戯TOKOYO』の時代は個人~少数チームと自主制作開発でよくある体制だったが、今回は実績を持つプロと組んでいることで、精度が変わってくることも予想される。

とはいえ『悟遊戯 OHENRO 88』がアクションRPGというジャンルを使い、四国のお遍路をたどるゲームプレイを作ろうとしているは予想できる。今回は人類が死滅した後で、ロボットとデータのみが稼働し続けているという非人間的な世界観を持つため、『摩尼遊戯TOKOYO』の時のようにプレイヤーが仏教僧の主人公として六道を巡る、という、仏教観を体験する方向とは違う。

むしろこの世界観からは、「もはや人類が消えた後で、人類が作り上げた宗教や思想はデータとしてどう継続していくのか」という、たかくら氏のモチーフであるデジタルデータとしての側面を強くしているように見える。

「まだどういうものになるか手探りですが、データや信仰など、あらゆる「見えないもの」についてどう考えるかということが気になっていますので、そういうものについての話になりそうです」

たかくら氏は『悟遊戯 OHENRO 88』についてそう語っている。本作の今後については、まだSteamのストアページや公式サイト、公式Twitterの設立は行われていない。今後の進捗についてはたかくら氏のTwitterアカウントのフォローするのがよいだろう

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