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【NEWS】戒厳令を解除した日の記憶を忘れない。韓国のユン大統領が起こしたクーデターへの弾劾を求める「キャンドルゲームジャム」が12月開催予定
12月3日の夜。韓国で突如としてユン大統領が発令した戒厳令は全世界に衝撃を与えた。
韓国では1980年代の軍事政権時代に対し、光州事件を代表に多くの犠牲者を生み出しながら民主化を成し遂げた記憶が生々しく残る。今でも80年代の民主化運動を題材とした映画や小説は数多く制作され続けている。
その歴史的な記憶があるためか、戒厳令が発令されるとすぐさまに市民と議員が与野党を問わず国会議事堂に集まった。軍隊が議事堂を占拠するのを市民が防ぎ、議員たちは性急に国会を開催。戒厳令を解除要求する議決を行った。
発令からわずか6時間前後で、危機的な状況を死傷者を出すことなく脱することに成功した。しかし、まだユン大統領がここまでの事態を引き起こしたかの決定的な責任追及は先送りになっている段階である。
そんな歴史的な事態の最中で、ゲーム開発者たちはなにを思うのか? 今月、戒厳令の記憶する意図のゲームジャム「キャンドルゲームジャム」をItch.ioにて開催することが発表された。
「キャンドルゲームジャム」という名前は、おそらく2016年の韓国で起きた、パク・クネ元大統領の弾劾を求める大規模デモ「ろうそく運動」を引き継いだ命名と思われる。いまユン大統領の弾劾を求める世論が盛り上がっているのは確かであり、こちらはゲームジャムという形でそれを行う意図がある。
構成 / 葛西祝
執筆 / 両目洞窟人間
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「キャンドルゲームジャム」とは何か
まず「キャンドルゲームジャム」について、主催のChalkSeagullとLHSは以下のように語っている。
「キャンドルゲームジャム」とは、韓国の市民たちの自由と権利を脅かした今回の戒厳令を、芸術の一種であるゲームで、記録するためのゲームジャムだという。デモに参加したインディーゲーム開発者たちが、一緒に集まって開催するものだ。
基本的にはオンラインゲームジャムとして開催するつもりだが、インディーゲーム開発者がデモの現場となる、国会議事堂前の公園に集まってゲームを作るオフラインゲームジャムとしても開催する予定だ。
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キャンドルゲームジャムを企画した大きなきっかけは、Milky氏がRPGツクールで開発したゲーム「12月7日」だという。
本作は戒厳令を発令したユン大統領への責任を追求する、弾劾案の表決において与党「国民の力」の議員108人のうち105人が不参加で投票が成立しなかった事態を記録する意図で作られている。
NHKニュースによれば、与党「国民の力」の大半の議員がが不参加した理由は、2016年のパク・クネ元大統領の弾劾決議後に国政が混乱した状態に陥ったことを避けるため、としている。しかし、野党や市民側はその説明に納得していない。
当然、『12月7日』は今回の与党「国民の力」の判断に対する反対意思を見せるポリティカルなものだ。ゲームプレイは国会議事堂と思わしき場所で弾劾に賛成か反対かを選択するのみの、3分程度で終わるものである。プレイヤーは12月7日の議会にて、「国民の力」で唯一参加した3名のうちの一人として弾劾案に賛成するか反対するかの意思を示すものだ。
今回のゲームジャムで作るべきゲームとは
”12月3日、その日の記憶”。これが今回の「キャンドルゲームジャム」で制作するゲームのキーワードである。参加者はこのキーワードを踏まえてゲームを制作する。
ただ主催者は歴史の一つとして、ゲーム制作では「ヘイト表現」や「過度な誹謗中傷」を避けるようにと伝えている。ゲームジャムの趣旨に合わない場合、ゲームの受付を拒むことを明言している。このゲームジャムは、イベントの品位やゲームの品位を落とすゲームを作るのが目的ではないとのことだ。
ただそれ以外の制約はない。ジャンル、ゲームエンジン、プレイタイム、それらの制約はなく作るゲームは自由だ。そしてゲームジャムには誰でも参加することができる。
このゲームジャムでは、いわゆる賞が得られるわけではない。
ただ得られるものはある。「一つの完成したゲーム」、「参加者同士のゆるい繋がり」、そして「民主主義」だ。とはいえ、最後の「民主主義」には主催者は「おそらくですが」とコメントを付け加えている。
主催者はデモに参加しながらゲームを作っている(主催者が言うところの”本物の地面に座って”)。
なぜ、そのような不便な形でゲームを制作しているのか? 主催者は「デモの参加とゲームジャムの進行を進めることができる。一石二鳥のパフォーマンスだからです」と語る。
また「戒厳令はもう終わったのにこんなイベントを開催する意味はある?」という質問に対して、主催者は以下のように答えている。
「あなたのような人も安全で自由に暮らせる大韓民国を夢見てこのイベントを主催します。自由と民主主義は誰にも公平に与えられるべきですから」
Itch.ioで開催されるゲームジャムはしばしば今日の国際情勢下における市井の人々の視座に立つジャムが開催される。今回の「キャンドルゲームジャム」とは、韓国の人々の視点を体験できるものでもあるだろう。
「キャンドルゲームジャム」の告知ページのトップには以下の文章が掲載されている。
“次のイベントは開かれないことを願って。”
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