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メガネケースでひまわり育てるくんの話

私は地方出身で、地元の公立中学校に通っていました。

受験はなく、学区で決められた中学へそのまま入学するため、色々なタイプの生徒がいました。

ゴリゴリのヤンキーもいれば、全国模試トップで東大一発合格、あだ名が「しゃべりタランティーノ」という天才もいました。

そんな中でも際立って異彩を放っていたのが、1年6組の「メガネケースでひまわり育てる君」です。

育てる君は、中学生にしては背が高く体格がよく、色白で伏し目がち、口元にはいつもうっすらと笑みを浮かべていました。眼鏡をかけていて大人しそうな見た目ですが、放つオーラは独特でした。

「育てる君だけはやばい」

3組だった私にも、友人からそんな情報が回ってきました。

ヤンキーの多い中学だったので、陰キャや少し変わっている子はいじられる対象になりがちでしたが、育てる君だけは休み時間に階段の踊り場で1人ハーモニカを吹いていても、誰もいじりませんでした。


ところでうちの中学には怖い先生が何人かいましたが、その中でもダントツ怖かったのが、私の担任の金〇先生(女性・40代独身・数学担当)です。

見た目は蓮舫さんをもっと怖くした感じ、ベリーショートでいつも黄色やネオンカラーのバブリースーツを着ていました。

HRに1分遅刻しただけでもバチクソに怒られるので、遅刻しそうな日は生徒がマラソン大会よりも本気の走りを見せる程でした。

授業中は私語はもちろんのこと、お腹が痛くてもトイレに行くなどもってのほかです。


そんな金〇先生が6組で数学の授業をしていた時の事。

突然、育てる君が手を挙げました。


「先生、ひまわりに水をあげたいのでトイレに行っていいですか。」


そう言った育てる君の手元には、肥料が敷き詰められたメガネケースがあったそうです。

教室の空気は凍り付き、数秒の沈黙の後、金〇先生は絞り出すように言いました。

「・・・・・どうぞ・・・・・。」

全員が息を呑んで見守る中、育てる君は薄笑いを浮かべ、メガネケースを片手に教室を出て行きました。


以上が私が6組の友人から聞いた、育てる君が金〇先生に勝利した時の話です。










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