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本と縁
――僕がビブリオバトルに捧げていた時間や、本の場づくりに興味を持って自分でイベントを企画運営してきた時間が今にもこうして生きていることを噛み締める2日間となりました。
人生は物語。
どうも横山黎です。
作家として本を書いたり、木の家ゲストハウスのマネージャーをしたり、「Dream Dream Dream」という番組でラジオパーソナリティーとして活動したりしています。
今回は「本と縁」というテーマで話していこうと思います。
一昨日、母校の大学に行ってきました。全国大学ビブリオバトルの予選を観るためです。高校時代から公式戦に参加してきた僕は、大学卒業までの7年間で3回、全国大会の舞台に立つことができました。
結局、頂点に立つことはできなかったけれど、ビブリオバトルに捧げてきた時間のなかで見つけたものは確かにありました。それは、「本で人とつながる喜びと意義」でした。
先日のビブリオバトルをはじめ、本にまつわる時間のなかでもそれを確かめることはできたので、今日はそんな話をしていこうと思います。
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自分がバトラーではなくて、純粋にお客さんとして参加するビブリオバトルは久しぶりだったので、まずすごく楽しめました。そして、僕なりにそれぞれのバトラーの発表の分析をしたり、「僕だったらどんな風に紹介するかな」と空想したりしていました。
見事予選を突破したバトラーの方はめちゃくちゃ場慣れしていて、絶対にビブリオバトルに出場したことある人だよなと思っていたら、やがて記憶が蘇ってきたんです。
「あの人、去年全国大会にいた人じゃね?」
大会が終わってから話しかけにいって答え合わせができたんですが、僕の記憶は正しくて、去年全国大会の舞台に立った人でした。なんなら、副賞を獲った人でした。そりゃあ、上手いわけですよ。
何故か僕はそういう縁に恵まれがちで、本当にステキな方ばかりと出逢えてこれたんだなとつくづく思いました。久しぶりに大学図書館の方々と関わる機会があったんですが、僕のことを覚えてくださっていて、気さくに話しかけてくれたんですよね。
また、図書館の副館長が大会の終わりの言葉を告げたんですが、そのなかでわざわざ僕のことを紹介してくれたんですね。会場にいた200人くらいの視線を背中に集めることになり、こっぱずかしさと喜びと誇らしさを一緒くたにした感情を抱いたものです。
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実は今回、大学の後輩がビブリオバトルに出場するということで、一応実績のある僕が彼女に対していろいろレクチャーしていたんです。結局勝ち上がることはできなかったけれど、本番の発表がいちばん理想的で、引きつけられるパフォーマンスでした。
労いの言葉をかけていると、そこへ別のバトラーがやってきました。その彼は最後の発表したバトラーで、喋り方や言葉遣いが独特のキャラクター性抜群のパフォーマンスを披露しました。
そんな彼が、僕に対してこうこぼしたんです。
「僕、ビブリオバトル強くなりたいです」
弟子にしてください!と言わんばかりの口振りに、僕は思わず笑っちゃったんだけど、彼はきっと化ける人だと信じることができたので、来年は彼のこともレクチャーすることに決めました。来月開催される県大会に一緒に行く約束も交わしました(笑)
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日付は変わった翌日のこと。つまり、昨日ですね。訳あって、僕の職場である木の家ゲストハウスに立ち寄りました。この日はゲストハウスの仕事はお休みだったんですが、読みたい本があったので訪れたんです。
そのときにオーナーから現在宿泊しているお客さんの話をされました。そのゲスト、猫探偵をしているというのです。
失踪した猫を探す探偵のことを指すわけですが、もはやフィクションの世界でもなかなか登場しないような職種に惹かれて、僕は機会があればお話してみたいなと思いました。
やっぱり縁に恵まれているようで、ちょうどその後すぐに猫探偵のお客さんが外出先から戻ってきたんです。そして、時間を取ってくださって、僕は猫探偵の話を聴くことができたのです。
訊けば、その人の猫の発見率はほぼ100%らしいんです。凄腕の猫探偵だったのです。猫の習性から居場所を導きだしていくその流れは、まさに探偵。お客さんから「なんで見つかるの!?」と驚かれるほど困難と思われた局面でも探し出しちゃうというのです。
で、この猫探偵の方、知り合いに小説家の方がいまして、その話題でも盛り上がりました。その小説家はどのような人となりで、どんなことに興味を持っていて、どのようにしてプロとして大成していったのか、いろいろ貴重な話を聴くことができました。
話の流れから、僕の初書籍『Message』を紹介すると、応援の意味も込めて買ってくれることになりました。思いがけず久々に手売りをすることになり、喜びの渋滞が起こりました(笑)
さらに、猫探偵の方、大阪で観光事業もやられているとのことで、今度僕が大阪に行く際、いろいろ案内してもらうことにもなりました。連絡先も交換できました。
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猫探偵と別れてからは、僕の行きつけの洋風居酒屋トチローへ。半年くらい前に知り合った大山さんというひとつ年上の方と呑むためです。
大山さんとはとあるイベントで知り合ったんですが、その数日後に、実はお互いにトチローの常連客だったことが判明したんです。せっかくなら今度一緒に呑みましょうと約束をして、それがすぐに実現しました。その後月に1度くらいのペースでトチローに集まっているんです。
そこでもいろんな話をしました。仕事のこと、僕の創作のこと、人間関係のこと、人生のこと……ここでも本の話になったり、『Message』の話になったりしました。大山さんが『Message』に興味を持ってくれたこともあり、手売りに成功。まさか久々に1日で2冊も売るとは思ってもいませんでした。
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本を巡って、こんなにも人と関わることができて、僕はすごくうれしく思うし、誇りに思います。僕がビブリオバトルに捧げていた時間や、本の場づくりに興味を持って自分でイベントを企画運営してきた時間が今にもこうして生きていることを噛み締める2日間となりました。
頑張っていたことは、未来のどこかで「縁」という形で結果となるみたいです。そんなことを信じて、今日も自分だけの物語を綴っていきます。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
2024108 横山黎