2016_10_15_谷中_

秋の祈り

10月半ば、風がすこしつめたく感じられる夕暮れ時。

JR日暮里駅の北改札口を出た橋の上から西を望むと、どこか牧歌的にも感じられる長閑な風景に出会えます。
丘の上に広がる空が、不思議なほどこのままどこまでもつづいているようにおもえ、なんだかすこしだけ、ここがどこだか忘れさせてもらえるからなのかもしれません。

夕焼けだんだんを下った先にある小さな谷中銀座商店街は、この時間には昼間コロッケやメンチカツを頬張りながら酒屋さんの前でお酒を傾けていた観光客もいなくなり、夕飯の献立を選びに出てきた近所のおばあさんや奥さんたちで賑わう昔ながらの懐かしい商店街にもどります。
よそゆきから地元の顔に戻った小さな商店で、オレンジとリンゴと、すこし迷ってけれど抱えきれないほどの柿もいただいて帰る道。

路地裏の家々から聞こえてくるテレビの声や、大きなフライパンで炒めものをしている音。お魚を焼く匂い、お出汁とお醤油の煮物の匂いに、地に足のついた当たり前の暮らしがここにあるということを感じながら、重たいフルーツを抱えて先を歩く夫を追いかける日の沈みかけた谷中の裏通り。

なんだかいいな、こんな一日。

今日と同じおだやかな時間が、明日また多くの人のもとに訪れますように。



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