【初投稿】通りすがった運命の人
2020年
花咲澪(はなさき れい) 29歳。
8年前の今日、
私はとある男性に出会った。
この人物は、後に私の夫となり、
2019年
交通事故で死亡する
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2012年 7月15日
当時、私は貧乏で、お腹が減って、
そしてどうしようもなく惨めだった。
大学内のミスコンテスト、いわゆるミスキャンパスで賞を受賞したばかりの私は、その素性を隠して駅前で“キャッチ”をしていた。
お金に困っていた当時の大学生の私は、割のいいアルバイトとして、通行人にひたすらチラシを配って愛想を振りまいては、ことごとく無視されていた(笑)
まるで存在しない人間みたい。
認識してもらえたと思ったら、ウザそうな表情で煙たがられた。
商品のラベルを想像してほしい。
場所を変えると、人間の「ラベル」も変わる。
ステージでウエディングドレスを着て、タスキをかけられて花束持って、大勢の人に手を振って、取材に応えて、学内では握手や写真を求められる私も
この時間、この場所では、ミスキャンパスでも何でもなかった。
ただの“ウザいキャッチ”
お金の為には、プライドもくそも無かった。
救世主現る
蒸し暑い7月。
喉も乾いてお腹は減って、蚊にも刺されて、心は折れて・・(笑)
半ば諦めていた頃、隣のキャッチ仲間が突然、2人並んで歩くサラリーマンの片方に声をかけた。
声をかけられた男性は少し驚いたが足を止めてくれた。
一方、
●声をかけられなかった、
爽やかのほほんなサラリーマン(のちの夫)
○声をかけなかった、
素性を隠したキャッチ(のちの妻)
これが私たちの出会い。
当時、夫32歳。私21歳。
その後4人で飲みに行き、連絡先を交換することになった。
「遠慮しなくていいからね。好きなものお食べ(o'ー'o)」
仕事終わったとはいえ、戸惑いつつ食べる私達を彼はただ優しく見ていた。親鳥か何かですか?
紆余曲折あって心のスレた21歳は当然下心があるとにらんでたけど…
彼は変わった人だった。
この「遠慮しなくていいからね」は、
彼が生前、死ぬ直前まで優しくそばで言い続けてくれた言葉だった。
夫のそばは、とても温かかった。
夫を知れば知るほど
≪世の中こんな優しい人いるんだ≫と思った。
友達に、夫との出会いを聞かれたら、
いつもこう答える。
「通りすがり」
将来の伴侶となる、いわゆる運命の人との出会いのきっかけなんてこんなもの。
大抵なんでもない些細なこと。
だけど8年後、
こんなことになっているとは誰も思わなかった。
この時、
この人に残された時間は、あと7年もなかったのに。