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背臥位から長座位に起こして分かる身体の繋がり PT・OTのための動作分析

こんにちは。ReHub林です。

これまで、背臥位について「その背臥位は動けるか否か?」で触れ、動きに対する反応をどのように見るかを解説しました。
今回は、その第二弾ということで、その背臥位は分節的に動けるか否か?を徒手介入にって評価・治療する視点をお伝えします。
動作を観察・分析する際に、分節的に動けているかどうかは、非常に重要なポイントです。

このテーマについて深く知ることで、患者がその障害なりに上手く動くことができているのかどうかを分析しやすくなります。もちろん、理学療法士だけでなく、作業療法士の方にとっても有用です。長くなりますが、是非最後までご覧ください。

なぜ分節性が重要か?

ヒトの動きは1つのシステムとして上手くできており、非常に自由度が高いため、刻刻と変化する環境に対して適応することができています。そのため、多少の不具合が生じても、他の部分がそれを補うように代償して課題を完遂することができます。

しかし、患者の多くが新たに負った障害に対して適切に機能代償することができないという場面をよく見かけます。
残存能力を最大限に活かすことができない患者の多くは、本来動かすことができる部分までも過剰に固定し、その影響から障害部位の異常パターンを助長するという悪循環に陥っていることがあります。

過剰に固定して分節的に動けないということは、違う部分で逆に過剰な運動が必要になり、エコな動作ができなくなります。また、それにより動作の自由度が低下するため、環境変化に対する適応力も低下してしまいます。

そのため、最も支持面が広く安定しやすい背臥位から分節的に動くことができるポテンシャルがあるかどうかを評価することで、基本動作やADL動作におけるその人本来の可能性を改めて知ることができるのです。

動きの分節性を捉える起こし方 その①

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文字通り、背臥位から長座位へまっすぐ起こします。
この時の注意点は、「分節的に動かす」ということ。

そのまんまじゃん!
と言いたいでしょうが、これがなかなか難しいのです。

※今回の被験者は、頭部の屈曲制限があり、下位頸椎の過剰な運動を認めたため、上の写真のハンドリングを選択しています。本来ならば、入念に頭部の動きを引き出す所から始めますが、一連の流れの解説のため、今回は省略致します。
また、もう少し頭部に動きがあれば頭部~下位頸椎を包むように後面からハンドリングし、胸椎の動きに繋げたかもしれません。

背臥位から長座位へ(支持面の操作)


👉コツは支持面を操作することです。
脊椎を1つずつ分節的に屈曲させていくイメージも大切ですが、加えてこれから運動を起こすはずの脊椎・背面に対して支持面との関係性を強調するように圧変化を強くします。
上の写真の場合、セラピストが接触しているところは肩甲骨ですが、操作しているのは支持面です。

頭頚部や上部体幹を屈曲させていく時、屈曲運動に合わせて徐々に支持面が狭くなっていきますね。そして、支持面が狭くなるにつれて、身体は新たな支持面を土台として浮き上がった頭頚部や上部体幹をプレーシングしていきます。
この新たな支持面を土台とするためには、土台として安定しなければなりません。そのため、支持面と機能的な関係性を構築できている身体各部位は適度に緊張を高めて安定性を確保します。

背臥位から長座位へ

この反応が持続的かつ流動的に生じるように、変化する支持面の情報を徒手的に入力しながら起こしていきます。頸椎→胸椎→腰椎→骨盤後面→坐骨 というふうに、尾側方向に荷重の情報を与えます。

👉徒手誘導で与える支持面の情報に応答して適度な緊張の高まりや、屈曲運動への追従が生じれば、分節性は得られやすいと考えられます。
逆に、過剰固定などが生じたり、逆に低緊張のままであったりして、分節的な緊張の高まりが得られにくかったりする場合は、分節的な運動が得られにくいと考えられます。

👉このように反応が得られにくいのが、どのタイミングのどの部分で生じるのか?を注意深く観察しておくことで、患者の分節性の度合いとそれが障害されている部位の2つを評価することができます。


動きの分節性を捉える起こし方 その②

「その①」で紹介した起こし方を少し変化させることで、左右差を明確にすることができます。

回旋を加えて長座位へ

起こす際に、純粋な屈曲ではなく、回旋運動を加えます。回旋・屈曲の運動方向の指標としては、回旋する側の股関節です。屈曲の最終目標としては、その①と同様に坐骨荷重までを意識して支持面の変化を捉えさせます。

👉その①の正中から起こすパターンと比較すると、回旋を加えたパターンでは肩甲骨・胸郭を支持面に合わせる反応や下部体幹と股関節間における連結の左右差などを評価・治療できる点が異なります。

この時のコツも、支持面を操作する意識です。
運動・力の流れが回旋のみで途切れることが無いように、回旋によって横方向に変化する支持面と、長座位に向かうために尾側方向に変化する支持面、この二つの変化を動きとして繋げる意識がハンドリングに必要です。
下の写真は簡単なイメージとしてご参考ください。

回旋を加えて長座位へ(力の流れのイメージ)


誘導で狙った反応が得られにくい場合

主たる原因の1つとして、セラピストのハンドリング技術が挙げられます。

その①・その②どちらにおいても、操作する部位を把持する瞬間が非常に重要です。セラピストが雑なハンドリングをすると、その刺激によって過剰固定が生じて本来起こるはずだった反応が得られにくくなることがあります。
また、支持面が尾側に変化する入力が急すぎて患者の反応のタイミングと合っていない場合なども同様の反応が生じやすいでしょう。
そうなると、それは患者由来の反応なのか、セラピスト由来の反応なのかが分かりにくくなってしまいます。

もう1つの原因としては、患者自身の身体反応の乏しさが挙げられます。

これには、単純に反応として生じにくい場合や、ある部位の過剰固定の影響を受けて反応が抑制されている場合があります。

どちらにせよ、丁寧に徒手誘導を繰り返し、反応の変化を捉えることが重要です。支持面の狭小化に適応する能力を有していない場合は、背臥位からではなく、背面にセラピストが支えとして入り、リクライニングの状態から骨盤を起点として末梢に身体反応を波及させるという手段も選択肢として持っておくとよいでしょう。

分節性の土台となるテンタクル活動

今回紹介した内容は、クラインフォーゲルバッハが提唱した“テンタクル活動”を評価しているとも言えます。
テンタクル活動は、末梢の運動を引き起こすために中枢部が緊張を高めて安定性を増すことで、末梢の自由度が確保されている活動です。
有名な例として、背臥位で頭部を挙上できない頚髄損傷患者の下肢を固定すると、頭部を挙上しやすくなるというものがあります。

背臥位から長座位に起こす際、頭部を挙上するためにはその下の胸郭が安定しなければなりません。胸郭が安定するためには骨盤が、骨盤が安定するためには股関節が・・・
という風に、身体は各部位が完全に独立して運動することはないのです。

ちなみに、ここでの安定と過剰な固定とは区別して考えるべきです。
適度な緊張の高まりによる身体各部位の連結が必要なのです。


まとめ

「背臥位から長座位に起こして分かる身体の繋がり(テンタクル活動)」いかがでしたか?

頭部から始まる分節的な運動を徒手的に誘導し、その時の反応を観察・分析することで、身体各部位の適度な連結が保たれているのか、過剰な固定部位がないかを評価することができます。
これは、正中から起こす場合も、回旋を加えて起こす場合も同様です。

そして、コツは支持面を操作する意識と操作です。

上手く身体反応を引き出せない場合は、自身のハンドリングを疑うことも忘れてはなりません。また、上体を起こして支持面が狭まることに適応できない場合は、支持面を広げることも考慮するとよいでしょう。

この手技の良い所は、
・患者・セラピスト両者が安定した状態で行えるということ
・座位などの姿勢定位のみならず寝返りや起き上がり動作へのアプローチにも発展させられること
・捉えるべき反応がシンプルであるということ

ヒトの動作は複雑かつ自由であるため、問題をシンプルに捉えやすくするために、シンプルな課題を提示することが問題解決の近道ということもあります。

この記事が、患者の姿勢定位や床上動作を獲得するヒントになりましたら幸いです。

どうしても、画像や文章だけでは細かな反応の違いをお伝えすることが難しいので、必要とあらば、ReHub林をお呼びください。

面白い、タメになったと感じていただけたら、ぜひナイス・フォローをよろしくお願いいたします。

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