PT・OTのための「入浴」動作分析~含まれる要素が実に多彩~
こんにちは。ReHub林です。
お風呂に入るのは好きですか?
シャワー派ですか?
私は、湯船に浸かる方が好きですが、普段はシャワーが多いです。
特に山で運動した後は、温泉に入ると最高です。
職業病で、温泉に入ると他人の洗体動作をマジマジと観察してしまいます。
今回は「入浴動作」がテーマです。
入浴動作については、以下のタイトルで慢性期リハビリテーション学会等に発表致しました。
「活動を通して機能を変える~入浴での治療介入により食事の自立度が向上した症例~」
「生活リハビリのあるべき姿を考える~入浴でのリハビリ介入の効果~」
動画に関しては、すでに先行してYouTubeで症例紹介をしておりますので、ご覧ください。
「たった週1回の入浴介助で介助量が激減したヤバイ話」
「入浴介助でヒトが変わった!?これが真の生活リハビリだ!」
一言に入浴動作と言っても、ご存じの通り様々な動作が複合して「入浴」という活動になっています。
まずは、「入浴」に含まれる動作を挙げてみましょう。
入浴に含まれる動作
脱衣
ドア開閉
浴室内移動
着座+座位保持(立位保持)
洗髪
洗体(+流す)
跨ぎ動作
床への着座(立ち上がり)
清拭・乾燥
着衣
女性ならばメイク落としも含まれるかもしれませんね。
シャンプーとトリートメントは動きが違う!と言う方もいらっしゃいますが、私はそんなことをするほど髪が無いので、その辺の話はまたの機会にします。
いかがでしょう?
ザっと浮かんだだけでも10種類以上の動作が含まれていることが分かります。
今回は、この中でも「洗体動作の要素」を中心に話を展開していきます。
実際の洗体動作の動画もYouTubeにアップしてあります。
洗体動作の要素
👉上肢―身体各部位の洗いー洗われる関係性
👉両上肢(or片側上肢)による洗体タオルの操作
👉頭部~爪先まで全身を包むようになぞる
👉洗体タオル・ソープ間の二重摩擦の検出
👉洗体タオルによる摩擦刺激と皮膚の反応
👉温熱刺激
大まかに挙げるとこの6項目ですね。
この中でも特に重要なポイントは太字の2項目です。
「整容動作の要素」で紹介した手洗いと同様の、「洗いー洗われる関係性」です。
「洗いー洗われる関係性」における各部位の反応
身体を洗うということは、洗体タオルで擦るということですね。
その時、身体はどのように反応しているでしょうか?
ただ直立して各部位を洗うということはありません。
頸部の右側を洗う
頸部の右側を洗おうとすると、洗う部分を広げて(頸部左側屈)洗体タオルによる摩擦抵抗に対して向かっていく反応が生じます。この時、体幹もやや左側屈の反応が生じ、右側に重心を保とうとするモーメントが生じます。
左肩を洗う
今度は、左肩を洗うとします。左肩を肩峰から遠位にむけて洗う時、どのように反応していますか?
人によっては、左肩を外転させて擦り、そのまま腋窩部分に滑らせて、上腕全体を包むように擦るかもしれません。
上腕内側に滑らせて洗う場合は、肩外旋しながら擦る反応がでやすいですね。
また、人によっては上肢を下垂させたまま下に向けて擦るかもしれません。
この両者に共通する反応は、上から下に向けて生じる摩擦抵抗に対して拮抗し、向かっていくような身体反応が得られるということです。
肩を上から擦るのに、その肩を下げるといった摩擦刺激から逃がす反応は基本的には生じないでしょう。
ということは、肩にかかる荷重に対して、洗う側の坐骨または足底には床反力が生じます。それに抗するように抗重力伸展活動が生じます。
背中を洗う
背中を擦る時はどうですか?
背中は面積が広く、四肢よりも平らな面になっていますね。しかし、両上肢でコントロールする洗体タオルでの摩擦刺激では、必ず均等に清拭をすることができません。タオルの接触が強調される部位とそうでない部位が生じますよね。
この接触が強調される部位を持続的に、動かすることで、背面・側胸部など全体をまんべんなく擦っています。
ということは、徐々に変化する接触部位に対して、身体も徐々に姿勢反応を変化させているということです。
これが、洗体動作における「能動的な探索活動」の最も評価しやすいポイントです。
👉患者の身体を洗体・清拭する時に、これらの反応が生じているでしょうか?
自然な反応が生じる部位と生じない部位・運動方向、過剰な固定部位、接触の有無に対する皮膚緊張状態の変化などを詳細に評価することで、患者の姿勢反応における問題点も明らかになることでしょう。
「全身を包むようになぞる」ということ
これはただ「全身を擦る」という話ではありません。
全身を洗うということは、摩擦刺激の連続性とボディーソープの連続性が保たれるということ。言い換えれば、全身を包むように摩擦した上にボディーソープという薄い疑似的な皮膚をもう一枚纏うということです。
洗面器や風呂桶で流す時は、一気にこの皮膚が剥がれるわけですが、シャワーで徐々に流す場合はこの纏った皮膚を徐々に剥がしていくことになります。
👉例えば、脳卒中片麻痺患者において麻痺側の認識が乏しい場合。
この皮膚・新たに纏う皮膚の連続性を強調する関わりをすることで、1つの膜にパックされた自己身体を再度知覚する手がかりとなるかもしれませんね。
この件に関する症例紹介は、別の記事でお伝えします。
摩擦刺激と皮膚の反応
これに関しては、PT・OTのための動作分析「更衣動作の本質と要素」の中の衣服の摩擦刺激、皮膚との接触・通過のトピックで解説しているため、タイトルのリンクからご覧ください。
まとめ
入浴動作の多彩さ、洗体動作の要素の面白さ、ご理解いただけましたでしょうか?
一言に「入浴」といっても多くの動作があり、それぞれにお風呂ならではの特異的な要素が含まれます。
その中で、患者が抱える動作障害の本質にアプローチすることで、多くの活動場面に反映させることができます。
洗体動作に関しては、お風呂でなくてもリハビリ室で簡便に評価できるため、ぜひ上記の身体反応を参考にしてみてください。
理学療法士・作業療法士ともに、セラピストが実際の入浴場面に関わる機会というのは、そうそう無いかもしれませんが、もしチャンスがあればチャレンジしてみてください。
患者が積極的に活動に向かう中で姿勢反応にアプローチすることの重要性が実感できると思います。
この記事が、活動場面での治療介入のヒントになれば幸いです。
その他の生活動作の要素についての解説は以下のリンクからご覧ください。
・色んな「整容動作の要素」と治療のヒント(PT/OT/STみんなでコラボしよ)
・「食事動作の要素」を知ってリハビリ専門職みんなでコラボしよう!
・「排泄動作の要素」PT・OTが人としての尊厳を守るための動作分析
・PT/OTのための更衣動作3つのプロセス
・PT・OTのための動作分析「更衣動作の本質と要素」
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