起立動作の前方加速のために必要な対側方向性運動リズム
起立動作の第1相
起立動作の第1相は、座位姿勢から殿部が離床するまでの区間です。
身体重心を前方に移動させるために体幹が前方に傾斜します。
頸部・体幹はほぼ中間肢位に保持されており、脊柱が屈曲することはありません。
これがいわゆる、脊柱のVertical Extensionです。
さらに、身体重心を前方に移動させる運動は、股関節の屈曲による骨盤の前傾運動によって起こっています。
股関節は、頭部が足趾よりやや前方に位置するまで体幹を前傾するように屈曲を続けます。
下肢は荷重の準備のため、大腿四頭筋や大殿筋、ハムストリングスなどの緊張が高まり、下腿がまっすぐに床面に配列されます。
この時に重要となるのが、前方加速のための対側方向性運動リズムです。
Hip-Lumber Rhythm
股関節と腰椎の間には、2つの運動リズムが存在します。
同側方向性運動リズム
頭部の位置が空間上位で移動します。
股関節が動く方向と腰椎が動く方向が同じです。
股関節が屈曲すれば腰椎も屈曲するため、抗重力伸展活動は起こりません。
つまり、体幹伸筋(多裂筋や最長筋)の緊張は低下してしまい、それに伴い下肢伸筋の緊張も低下しやすいです。
対側方向性運動リズム
頭部の位置が空間上位で固定されています。
股関節が動く方向と腰椎が動く方向が逆なのです。
股関節が屈曲すれば腰椎も屈曲するため、抗重力伸展活動は起こりません。
つまり、体幹伸筋(多裂筋や最長筋)の緊張は低下してしまい、それに伴い下肢伸筋の緊張も低下しやすいです。
股関節が屈曲すると腰椎が伸展します。
つまり、体幹の抗重力伸展活動が高まります。
それに伴い、下肢も抗重力伸展活動が高まります。
起立動作でリーチ動作が重要な理由はここにもあります。
momentum strategyを用いたメカニズム
重心を前方へ加速させるためのメカニズムを理解するためには、骨盤をタイヤだと考えるのがわかりやすいです。
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運動と解剖のプロフェッショナル
リハビリテーションにはさまざまな分野があります。どの分野で活躍するのにも、理学療法士や作業療法士は運動学と機能解剖学のプロであるべきです。…
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