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肩こりの【筋硬度】と【痛み】の関係 を理学療法士が解説します!

「肩こりがひどいと、筋肉がカチカチになってる感じがする…」
「腰痛が続くと、押したときに硬いしこりみたいなのがある…」


こんな経験、ありませんか?

実は、筋肉の硬さ(筋硬度)と痛みには何かしらの関係があるのでは? という疑問から、理学療法の分野で研究が行われています。今回は、その研究をもとに「筋硬度」と「痛み」の関係について、分かりやすく解説していきます。

結論を先に言うと、「筋肉が硬い=痛みが強い」という単純な関係ではないことが分かっています。でも、「じゃあ筋肉が硬くなるのは関係ないの?」と言われると、それも違います。実は 筋硬度と痛みには微妙な関係がある のです。

この記事を読めば、
筋肉の硬さってそもそも何?
筋硬結(しこり)と痛みの関係って?
筋硬度が高いと痛みも増えるの?
どうすれば筋肉の硬さを改善できる?
といった疑問が解決できます!





1. そもそも「筋硬度」って何?


「筋肉が硬い」と感じることはあっても、実際に「どれくらい硬いのか?」を数値で測ったことがある人はほとんどいないはずです。

筋硬度とは、筋肉の硬さを数値で表したもの で、専用の機器(筋硬度計)を使って測定できます。例えば、風船を指で押したときの硬さと、消しゴムを押したときの硬さは違いますよね? それと同じように、筋肉の硬さも人によって違います。

研究では、「ニュートン(N)」という単位を使って筋硬度を測定しています。

例えば、20代の健康な人の筋硬度の平均はこんな感じです。
• 最長筋(腰の筋肉)
 男性:0.83 N 女性:0.88 N

最長筋

• 僧帽筋(肩こりでよく硬くなる筋肉)
 男性:1.05 N 女性:1.21 N

僧帽筋

• 大菱形筋(背中の筋肉)
 男性:1.12 N 女性:1.15 N

菱形筋


こうして見ると、女性のほうが筋硬度が高い 傾向があることが分かりますね。特に、僧帽筋(肩の筋肉)の硬さは、女性のほうが明らかに高くなっています。これは、「女性は男性より筋力が低く、肩の筋肉に負担がかかりやすいからでは?」と考えられています。


2. 筋硬結(しこり)と痛みの関係は?


「筋硬結(きんこうけつ)」って聞いたことありますか?

簡単に言うと、「筋肉の中にできる硬いしこり」です。肩こりや腰痛がある人の筋肉を押すと、ゴリッとした硬い部分があることがありますよね? あれが筋硬結です。

筋硬結は、「トリガーポイント」とも呼ばれ、触ると痛みを感じることが多いです。でも、この硬いしこりが「痛みの原因になっているのか?」というのが問題でした。

そこで研究では、慢性的な腰痛を訴える44人の患者を対象に、
✅ 筋硬度 を測定する
✅ 痛みの程度 を数値化する(NRSという10段階のスケールを使用)
という方法で調査しました。

結果は… 筋硬結の硬さと痛みの強さの関係は、ほとんどなかった ということが分かりました。

つまり、「筋肉が硬いほど痛みが強い」というわけではないのです。


3. でも、筋肉が硬くなると痛みが出やすい?


「じゃあ、筋肉の硬さって関係ないの?」と言われると、それも違います。

研究では、「筋硬度が直接痛みを引き起こすわけではないが、筋肉の緊張が続くと痛みを感じやすくなる可能性がある」ということが示唆されています。

例えば、肩こりがひどくなると、僧帽筋が硬くなることが分かっています。でも、「肩こりが痛くなるのは、筋肉が硬くなったせい」というより、「筋肉が疲労して、血流が悪くなり、痛み物質が蓄積したせい」と考えられています。

実際、筋肉の硬さは「疲労」や「ストレス」とも深く関係しています。ストレスが多いと無意識に肩に力が入ってしまい、結果として筋肉が硬くなる… というのはよくある話ですよね。


4. 筋肉の硬さを改善する方法



では、「筋肉が硬くならないようにするにはどうすればいいの?」という話ですが、以下の3つがポイントです。

① ストレッチで筋肉をほぐす

特に、肩甲骨を動かすストレッチ は僧帽筋の緊張を和らげるのに効果的です。

▶ 例えば…
肩回しストレッチ
1. 両肩に手をのせる
2. 肘を大きく回す(前後10回ずつ)


この動きだけでも、肩甲骨周りの筋肉がほぐれて、肩こりが楽になります!

② 筋肉を温める

筋肉が硬くなる原因のひとつが「血流の悪化」です。お風呂にゆっくり浸かる、温めたタオルを肩に乗せるなど、筋肉を温めるだけで、筋硬度が下がることがあります。

③ 適度に体を動かす

長時間同じ姿勢でいると、筋肉が固まりやすくなります。デスクワークなら、1時間に1回は立ち上がって肩を回す だけでもOK!


まとめ


筋肉の硬さ(筋硬度)は、女性のほうが高い傾向がある
筋硬結(しこり)があっても、それが痛みの直接の原因とは限らない
筋硬度が高いと痛みが出るわけではないが、疲労やストレスで痛みが増すことがある
ストレッチ・温める・動かすの3つで筋肉の硬さを改善できる!

「筋肉が硬い=痛い」ではなく、「筋肉の緊張や血流の悪化が痛みの原因になる」ことを知っておくだけでも、対策しやすくなりますね!

今日からぜひ、簡単なストレッチや肩回しを取り入れて、筋肉の硬さを和らげてみてください!

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