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脳卒中片麻痺の理学療法で忘れがちだが忘れてはいけない、当たり前の3つのコト

脳卒中による片麻痺を患った方に対して理学療法を行う上で、どんなことを気をつけていますか?

今回は、当たり前すぎてあまり誰も言わないかもしれないけれど、絶対に忘れてはいけない3つのコトについて書いていきたいと思います。

本当に当たり前なので、これを当たり前に考えている方は読み飛ばしていただければと思います。

ただ、Twitterなどで様々な世代の方のお話を聞いている(読んでいる)と、これを忘れてしまっている方が多いという現実があるようです。

私はこれまで急性期、回復期、デイケア、訪問看護という様々なフィールドで脳卒中の方と関わり、認定理学療法士(脳卒中)も取得しました。

そんな私の視点で、次の3つのコトについて書いていきます。

☑️脳卒中は脳に生じる疾患である

☑️脳卒中は筋肉が弱る病気ではない

☑️脳卒中を起こした方は、それだけの内科的リスクを有している

いかがでしょうか。この3つのコト、当たり前ですよね。

当たり前すぎてどうでも良いわ!って方はどうぞ離脱してください。

ちょっとでも忘れていることがあれば、どうか読み進めていただければと思います。

今回の記事を読むと、
●脳卒中片麻痺に対する理学療法で考えるべき基本中の基本を再確認できる
●基本に忠実に理学療法を考え、適用する必要性がわかる
●脳卒中片麻痺に対する理学療法で効果が得られる確率が上がる


脳卒中は脳に生じる疾患である

本当に当たり前の話が続いて恐縮なのですが、脳卒中は脳に生じる疾患です。

脳卒中とは、脳の血管が詰まることで生じる脳梗塞と、脳の血管が切れて出血してしまう脳出血とを総称した言い方です。

脳梗塞と脳出血のどちらも血液が届かなくなってしまった脳の領域が損傷を受けてしまい、いわゆる片麻痺や高次脳機能障害といった様々な症状を引き起こします。

なぜこんな当たり前の事を書くのか。

脳卒中後遺症に対する理学療法を行っていると、目に見える片麻痺という症状、つまり手足の不自由さ・動きづらさに目が向いてしまいやすいからです。

特に理学療法士として働き始め1〜3年目くらいまでは、私自身もそうだった記憶があります。

手足が動かない・動きづらいという症状は目に見えますが、手足に何らかの疾患があるわけではありません。

ということは、手足に"だけ"何らかの介入(理学療法)を行ったとしても、効果は得られません。

手足と脳とを総合的に考えて初めて、片麻痺という症状の改善に向かうことができると考えられます。


脳卒中は筋肉が弱る病気ではない

これは先の内容とも関連するのですが、脳卒中によって筋肉が弱るということはありません。

収縮を起こすことができなかった筋肉が結果的に萎縮しますが、あくまでも二次的なものです。

そもそも筋肉が弱る病気ではないのに、筋肉に対してアプローチして、果たして効果が得られるのでしょうか。

具体的には、筋力トレーニング、筋力増強運動といったものですね。

過去には「筋トレをしたら痙性が高まるから行わない方が良い」という意見の是非が議論されていたこともありましたが、痙性云々というより、筋トレというものが有効となる病理なのかどうかを考えた方が良いように思います。

ただ、どうやら脳卒中片麻痺に対して依然として筋トレを積極的に行っているセラピストはいるようです。

そういった問題提起をされている方がTwitterでいらしたのが、今回の記事を書こうと思ったそもそものきっかけです。


脳卒中を起こした方は、それだけの内科的リスクを有している

これも大切なことです。

脳卒中を起こすリスクとなる内科疾患として、心疾患(不整脈など)や糖尿病、高血圧などがあります。

内科疾患ではないですが、先天的なものとして脳動脈奇形なんかもありますね。

こういった内科的なリスクによって脳卒中を起こした方は、脳卒中になった後も同様のリスク、つまり再発のリスクを抱えている、ということに留意して理学療法を行えているでしょうか?

急性期ではむしろその管理が中心となるため忘れている方は少ないと思いますが、回復期や在宅領域になると、ちょっと忘れてしまっている方も多いのではないでしょうか。

先ほど書いた脳卒中片麻痺に対する筋トレにおいても、血圧は上がりますよね。

そういったリスクをちゃんと管理して筋トレをしているのでしょうか?

回復期や自宅復帰後の方は、内科疾患は落ち着いているように見える方がほとんどです。

しかし、そのほとんどは服薬管理によって落ち着いている状態なのではないでしょうか。

私自身、この点は急性期や在宅領域で働くようになった4〜5年目以降に実感を持って考えることができるようになったという経験があります。

もしかすると、回復期で働く若手理学療法士は知識として知っていても、あまり実感を伴っていない、臨床に知識を活かすことができていない、という現状もあるのではないでしょうか。


まとめ

今回は、『脳卒中片麻痺の理学療法で忘れがちだけど忘れてはいけない、当たり前の3つのコト』と題して、本当に当たり前のコトを3つ書いてきました。

どれも当たり前だと思います。

大半の理学療法士は当たり前に考慮されているものと思います。

ただ、これを理学療法の中で考慮できていない方がいらっしゃるというのも現実だと思います。

もしかすると、当たり前すぎて先輩も後輩にいちいち言わないのかもしれません。

脳卒中片麻痺の改善のために行われる様々なアプローチがあり、それを勉強するのは大事なことだと思います。

しかし、手技やスキルに傾倒しすぎて、こういった基本的なことが抜け落ちてしまっては本末転倒です。

当たり前の前提は当たり前として、その上に最先端の知識や技術を積み重ねていける理学療法士でありたいですね。


おわりに

記事の内容についての質問はTwitterのDMからお気軽にどうぞ。

また、記事の依頼も受け付けています。お気軽にご相談ください。


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まじい@マジメな理学療法士・公認心理師
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