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リハビリテーション=おうちごっこ?

先日、子どものごっこ遊びは非常に高度な認知機能を用いた遊びだということを書きました。

今回はこれをリハ向けに考えていきたいと思います。

『リハビリテーション=おうちごっこ』なんて言うと、「クライアントをバカにしてる!」とか怒られそうですが、そんなことはありません。

リハビリテーションとごっこ遊びは、現実の状況とは異なる場面を想定するという点で完全に同じです。

この視点を持つと、病院で行われるリハビリテーション(在宅でもそうですが)を、より具体性のある練習に昇華することができるかもしれません。


自宅生活を想定するリハビリテーション

リハビリテーションと書きましたが、具体的には理学療法場面、作業療法場面、言語療法・接触嚥下療法場面といったところです。

自宅復帰を目標として、主に病院で行われるいわゆる『リハ』のことを指しています。

急性期病院や回復期病院でのリハは、自宅へ帰ることを目標として行われます。

そのため、病院という現実の環境に身を置きながら、自宅復帰後の生活を想定した練習を行うことになります。

自宅で主に過ごす場所はどこなのか。和室?洋室?床?ソファー?

そこからトイレまでどのように移動するのか。

家事動作は誰が行うのか。自分が行うのなら、何をどのように行うのか。

入浴は一人でできるのか?浴室の構造は?広さは?

食事はどのように行うのか?準備は?環境は?

などなど、多くのことを想定し、練習を行わなければなりません。

自宅復帰が目標なのですから、自宅復帰後に使えない動作や行為を練習したところで無駄なわけです。


ごっこ遊びは高度な遊び

上でも紹介した以前のnoteで書きましたが、『ごっこ遊び』とは高度な遊びです。

ごっこ遊びが何なのか、簡単に再度紹介したいと思います。

現実の状況とは全く違う状況を想定し、目の前にある環境や物品に実際とは異なる意味付けを行い、それを複数人で共有し、共通認識を持った上で行為を行う必要があります。

そこで重要な概念となるのが、『フレーム』というものです。

※フレームについて詳しくはこちらのnoteを参照ください

『フレーム』は『スキーマ』や『背景知識』とも呼ばれたりしますが、そこ言葉や行為が発したり行われたりする背景にある知識のことを指します。

ごっこ遊びの場合、『泥団子』を手渡すとき、『食事フレーム』ならおにぎりかもしれませんし、『買い物フレーム』なら商品かお金かもしれません。『医療フレーム』ならそれは薬かもしれません。

このように、『フレーム』という行為の前提になるものが異なると、その行為を意味合いが異なってきます。

なので、ごっこ遊びでは複数人が『フレーム』を共有していなければ、遊びが成り立たないことになります。


リハ場面をごっこ遊びにする

このように、『ごっこ遊び』の本質、『ごっこ遊び』の成立のために必要な要素を考えると、リハ場面を『ごっこ遊び』にするという視点が必要なのではないかとすら思えます。

理学療法士さん、その歩行練習は、家に帰ってどこを歩く歩行を想定して行っているものですか?練習環境と実際の環境はどのように異なりますか?

作業療法士さん、その調理動作はご自宅の台所で行うのとどの程度同じでどの程度異なるものですか?

言語聴覚士さん、その摂食・嚥下練習を行う環境は、ご自宅での食事環境とどの程度同じでどの程度異なりますか?

退院後の生活を考慮している方であれば、このような質問にはきっちり答えられるかもしれません。

では、患者さんご本人は、それをどの程度理解していますか?

これが『フレーム』を共有できているか?という問いです。

私たちは、リハビリテーションの場面を『ごっこ遊び』、つまり『おうちごっこ』にしなければ、それは自宅復帰のための練習であると言えないわけです。


おうちごっこをするために

では、どうやってリハ場面をおうちごっこにすれば良いのでしょうか?

次の3点が重要だと考えています。

●実際の生活環境を把握すること

●セラピストとクライアントで共通認識を持つこと

●現実の状況と実際の状況の類似と差異がわかること

まず、病院セラピストは、可能な限り実際の生活環境を把握するための情報を収集する必要があります。

そうでなければ、自宅の環境を想定した練習を設定することはできません。

そして、その練習が何のための練習であるのか、セラピストとクライアントの間で共通認識を持っていなければなりません。

セラピストだけがそれを理解していても、クライアント自身が自宅をイメージできていなければ、練習と生活を結びつけられませんよね。

最後に大切なのが、練習環境と自宅環境とを比較し、類似と差異を明確にするという作業です。

具体的には、セラピストが質問して、クライアントに教えてもらう必要があります。

「居間からトイレまでの移動を想定した歩行練習を行っていますが、ここの環境とご自宅の環境はどのように違いますか?似ている部分はありますか?」といった具合です。

環境が異なるから無意味なのではなく、そこに似ている部分と異なる部分があることを前提とし、実際場面を想定して練習を行うことができるからこそ意味があると考えます。

繰り返しになりますが、この手続きは『ごっこ遊び』を堅苦しくしたもの、そのままではないでしょうか。


まとめ

主に病院で自宅復帰を目標に行われるリハビリテーションとごっこ遊びとの類似について考えてきました。

病院で行われるいわゆる『リハビリテーション』では、自宅での生活を如何にイメージできるかが重要になると思います。

実際、自宅復帰後に「病院で練習したのと全然違う!」ということはよく起きます。

そういった部分を把握しておくことの重要性も含めて、セラピストとクライアントとの間で共通認識を持つことが必要なのではないでしょうか。

ぜひ、病院でも『おうちごっこ』を成立させてください。


より深く学びたい方

『フレーム』についてはこちらがわかりやすいです。


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まじい@マジメな理学療法士・公認心理師
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