見出し画像

更正用装具は作成して終わり?退院後の生活のために理学療法士ができること

脳卒中片麻痺の方で装具を処方・作成される方は多いです。

理学療法士としては、装具の選定やフィッティング、着脱の練習や、装具を装着した状態での歩行や生活動作の練習に携わることが多いと思います。

脳卒中片麻痺の方が使用される装具はその使用目的によって、大きく分けて治療用装具と更正用装具があります。

今回は更正用装具を作成した後、理学療法士がどのように関わっているのか、どのように関わるべきなのかを考えてみたいと思います。

この記事を読むと、
●退院後の患者さんが、更正用装具をあまり使えていないことがわかる
●更正用装具を作成した後、もっと関われることがあることに気付ける
●更正用装具を含む退院支援の視点が増える

ちなみに、過去の記事では治療用装具の使用についても書いていますので、興味のある方はこちらもご覧ください。


更正用装具作成後に何をしているか

勤務している病院の分化や、主治医や担当理学療法士の考え方によって、装具を積極的に作成する病院とそうでない病院があると思います。

積極的に作成する場合、入院してから比較的早期に治療用装具を作成し、退院が近付いてきてから必要に応じて更正用装具を作成する、という流れが一般的なのではないでしょうか。

過去の記事では治療用装具の使用について書いたように、入院中に使用する治療用装具は理学療法士として直接的に関わるので、作成する装具の種類やその使用にはかなりこだわると思います。

一方、更正用装具はどうでしょうか。

多くの場合は退院直前に作成され、着脱の仕方を練習し、装着した状態での歩行を練習する。

その程度の関わりで退院となってしまうことが多いというのが実情ではないでしょうか。


退院後の患者さんは更正用装具を使えていない?

私は訪問看護という形態で利用者さんと関わるため、急性期や回復期を経由して自宅復帰された方と関わる機会が多くあります。

そんな中で感じるのが、更正用装具を作成して帰ってきたは良いけれど、ほとんどその機能を利用できていないということです。

そもそも装具の着脱が煩わしくて使っていないという方もいらっしゃるのですが、そうではなく、装着はしているけれど機能を使えていないという方が非常に多いのです。

例えば、

✔️せっかくタマラックを足継ぎ手に採用しているのに、立脚期に足関節の背屈が生じる場面が皆無

✔️両側支柱付きの短下肢装具でダブルクレンザックを採用しているのに、足関節90°で底背屈とも固定されている

✔️オルトップを使用されているが、可撓性が強すぎ、底屈を全く制動できていない

などが多いように感じます。

装具の選定という問題も当然あるのですが、関わる中で装具を上手に使うことができるようになる方がほとんどです。

ということは、更正用装具を作成した後、装具の使い方がほとんど全く練習されていないのではないか、と考えています。


装具の使い方を練習する

具体的に、装具の使い方を練習するとは何をすれば良いのでしょうか。

装具の種類、その方の身体機能によって様々ですが、例を紹介したいと思います。

動く足継ぎ手全般
クレンザックやタマラックなどが該当します。
このような背屈を許す構造になっているものは、立脚期に背屈できなければ意味がありません。処方もそういう意図でされているはずです。
必要なのは、足継ぎ手を利用して足関節が背屈することの理解、それに伴って重心が前方へ移動できることの理解、そしてそれらを利用して歩行する練習だと考えています。
感覚障害の程度にもよりますが、足継ぎ手を利用しながら立脚できた際の足底圧の変化まで理解できると、かなり上手に足継ぎ手を使うことが可能になる印象があります。

足関節の制動を目的とするもの
クレンザックで足関節を固定する場合や、Shoehorn Brace(SHB)、オルトップなどですね。
多くみられるのが、装具を外骨格として利用してしまい、装具の使用が膝ロックでの立脚を助長してしまう結果になっている場合です。
必要なのは、装具の目的が過度の底屈を抑制する目的のものであることの理解、装具に頼らない立脚の練習、といったところだと考えています。


そうは言っても、限界がある

上で具体的な例を2つほど挙げましたが、やはり入院中にそれらを完璧に獲得するというのは難しいという現実があります。

入院中にしっかり練習していても、退院後には生活するのに精一杯で、そんなこと気にしていられないという方も多いと思います。

そんな場合は病院入院中に完結させようとせず、在宅で関われる領域で働いている理学療法士に繋いでいただきたいと思うのです。

装具の間違った使用方法での歩行を一度学習してしまうと、その修正にはどうしても時間がかかります。

自宅復帰後、数年が経ってから介入するといった場合、拘縮が生じてしまっていて太刀打ちできないという場合も多いです。

更正用装具を作成したは良いけど退院後が心配だなぁ、と感じた場合は、訪問リハや訪問看護からの理学療法士等の訪問に繋ぐというのも、是非視野に入れていただければと思います。


まとめ

脳卒中片麻痺の方に処方されることの多い、更正用装具について考えてみました。

更正用装具は退院前に作成することが多いため、退院後のフォローアップが難しいという現実があると思います。

実際に、在宅で関わる方で更正用装具の機能を全く活かせていないという方は多いのが現状です。

入院中に装具の使用方法の指導・練習を行っていただく必要性も説明してきた通りですが、退院後に在宅領域の理学療法士に繋ぐという視点もぜひ持っていただきたいと思います。


おわりに

記事の内容についての質問はTwitterのDMからお気軽にどうぞ。

また、記事の依頼も受け付けています。お気軽にご相談ください。




いいなと思ったら応援しよう!

まじい@マジメな理学療法士・公認心理師
読んでくださってありがとうございます。 いただいたサポートは今後の勉強、書籍の購入に充てさせていただくとともに、私のやる気に変換させていただきます。