見出し画像

名もなきADLを考えてみた

日常生活を送る人は誰もが、多かれ少なかれ、家事をすることになります。

毎日毎日、終わらない家事に追われる生活です。

『名もなき家事』という言葉を聞いたことはあるでしょうか?

かなり話題になった書籍なので、ご存知の方も多いかもしれません。

代表的な家事である、料理、洗濯、掃除、買い物。

実は家事というのはそんなものでなく、数え切れないほど存在している『名もなき家事』というものが紹介されています。

この書籍の結論としては、ある程度のところで折り合いをつけて、完璧を求めないことが上手く生きて行くコツだということと理解しました。

それくらい、家事というのは果てしなく多く存在しています。

この本を読んで気付いたことがあります。

理学療法やリハビリテーションの対象となった方、患者さんや利用者さんというのは、家事をしないのでしょうか?という当たり前のことです。

家庭内の役割や重症度によっては家事を一切しない方というのもいらっしゃいますが、家事を担わなければならないという方も多いでしょう。

特に脳卒中後の片麻痺を呈した方などは、家事の遂行に非常に多くの時間が要することが予想できます。

家事に限らず、ADL(Activity of Daily Living:日常生活動作)と呼ばれる毎日行われる動作はたくさん存在します。

その全てを想定した介入ができているでしょうか?

今回は、思いつくいくつかだけですが、代表的ではないけれど、生活を行う上で恐らく多くの方が行っているはずの『名もなきADL』について考えてみたいと思います。

このnoteを読むと、
✅️『名もなきADL』の存在に気付く
✅️クライアントの生活をみるための視点が増える
✅️担当したクライアントが自宅復帰後に困る場面を減らせる


料理に関連した『名もなきADL』

回復期病棟なんかでは、主に作業療法士さんが料理の練習を行ったりするかと思います。

では、料理に付随する動作、キッチンで行う動作はどの程度網羅して練習できているでしょうか?

思いつくものをざっと挙げると、

●食器洗い(これくらいは考慮していると思います)

●包丁やまな板を洗う

●タッパーのフタを閉める

●お茶を作り置きするための容器を洗う(容器、フタ、パッキン?のゴム)

●お茶を作って冷蔵庫に入れておく

●洗った食器を食器棚に戻す

●買って来た食材を冷蔵庫にしまう

●料理に使う食材を冷蔵庫から出す

●シンクの掃除(スポンジで洗ったり、塩素系の消毒液を使ったり)

●ガスコンロの掃除

●水切りネットを取り替える、もしくは三角コーナーや排水口のゴミを捨てる

挙げていくとキリがないのですが、恐らくどれも料理をするなら必要な動作ではないでしょうか。


掃除・片付けに関連した名もなきADL

掃除も毎日、毎日と言わなくても週に1回くらいはしたいですよね。

掃除機をかける程度の掃除は回復期で練習することも多いでしょうが、次に挙げるようなものはどうでしょう?

●掃除機の中に溜まったゴミを捨てる

●トイレ掃除

●ロボット掃除機をかける前に床の物を避ける

●拭き掃除全般

●ゴミ袋の口を閉める

●風呂掃除

●玄関掃除

●玄関前や庭の雑草処理

●洗剤やハンドソープ、シャンプーなどを詰め替える

●布団やマットレスのシーツ交換

●窓拭き

●換気扇掃除

細かすぎると思われますか?

でも、毎日じゃないにしても、日常的にやっていることですよね。

自分での実施が難しいことはヘルパーさんに依頼することも多いと思いますが、注意したいのは、大掃除に分類されるようなもの、日常的には行わないもの(窓拭きや換気扇など)はヘルパーさんが行えないということです。


その他の名もなきADL

上では料理関連と掃除関連を挙げてきましたが、ここでは分類できないものを挙げてみます。

●加湿器の水を入れる

●洗濯機から洗濯物を取り出す

●洗濯物を干すとき、パンパンしてシワを伸ばす

●靴下をセットにして干す

●布団を干す

●物干し竿に洗濯物等を干す前に拭く

●衣替え

どれもが日常的に行われる、年に数回は行うというようなものではないでしょうか。


全てを自分でやらなくて良いが、想定しておくことは必要

挙げていくとキリがないのでこの辺にしますが、細かく考えていくともっと果てしなく存在しているのではないでしょうか。

全ての家事やADLをご自身で行う必要はなく、ヘルパーさんにお願いしたり、同居家族がいれば役割分担をしてもらうなど、そういった対策を考えることは必要だと思います。

ただ、こういったADLを考慮しておかないと、退院してから全く想定していなかったADLや家事に遭遇し、その場で困るということになってしまいます。

そして、「前は当たり前で気にも留めなかったけど、こんなこともできないのか…」と落ち込むことになってしまうのです。

人によって生活スタイルは異なるため、一律でリスト化することは難しいと思います。

やはり、入院中に元々の生活や、退院後に求める生活水準を聴取し、詳細にイメージしておくことが大切なのではないでしょうか。

ご自身でできるのか、できるようにするのか、誰か(ご家族やヘルパーさん)に依頼できるのか、ということを考えておくだけで、退院後の生活は大きく変わると思います。


まとめ

今回は『名もなきADL』を考えてみました。

ここで挙げたのは一部だと思います。

細かく挙げていけば、本当に果てしなく存在していると思います。

もしかすると、作業療法士さんはこんなことは当たり前に考えているのかもしれません。

恥ずかしながら、私自身、ここまで細かく考えたのは初めてでした。

全てを完璧に想定し、完璧に対策を打つということは難しいかもしれません。

しかし、こうした視点を持って関わることで、抜けや穴は少しずつ減らすことができるのではないでしょうか。

ぜひ、代表的なADLだけでなく、細かなADLも想定した関わりを考えていきたいですね。(自戒を込めて)


より深く学びたい方へ

やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。
今回のnoteを書くきっかけとなった書籍です。
本来の本書のコンセプトは、「家事は思ってるほど多く、完璧にこなすことは難しい」というようなことを伝えているものです。
このnoteで考えた『名もなきADL』を考える際に参考にもなりますし、毎日の家事を頑張る自分に自信を持つこともできる書籍じゃないかなと思います。




いいなと思ったら応援しよう!

まじい@マジメな理学療法士・公認心理師
読んでくださってありがとうございます。 いただいたサポートは今後の勉強、書籍の購入に充てさせていただくとともに、私のやる気に変換させていただきます。