新人セラピストに読んで欲しい〜結帯動作について〜
肩関節周囲炎に限らず,肩関節疾患で評価するときに必ず評価するものに,
“結帯動作”(以下,HBB)があります,
しかし,凍結肩患者さんを始め,結帯動作の獲得に難渋するケースが多々あるかと思います.
そこで,結帯動作獲得をするために,どういった評価,治療を進めていけばいいか紹介していこうと思います!!
今回は,評価について紹介します!!
では,早速みていきましょう!!
1, 結帯動作の運動学
結帯動作は,肩関節の複合動作です.
ですので,下垂位外旋のように肩甲上腕関節(GHj)を中心に介入すれば良くなるかと言
われれば,答えはNoです!!
そのため,肩甲骨はもちろんのこと,胸郭の動きまで見ていく必要があります.
正常な結滞動作では,肩甲骨は下方回旋・前傾,GHjは内旋,伸展します.
動きの割合としては,肩甲胸郭関節(STj)より,GHjの方が動きが大きいのでGHjの可動域制限が結滞動作における制限因子の重要なファクターとなります.
臨床で実際に結滞動作の評価をしますが,健常者と比べ,肩関節周囲炎患者では特徴的な代償動作を伴うことを経験するかと思います!!
結滞動作には特徴的な2つのパターンがあるとされています.
仮に外転パターンの場合,上方回旋が必要になり,内転パターンだと下方回旋が必要です.
外転パターン(対側に届かない)→肩甲骨上方回旋が必要
内転パターン(同側に届かない)→肩甲骨下方回旋が必要
では,実際の患者さんを思い出してみて下さい!!
体幹を過度に側屈・回旋したりして,肩甲骨前傾・下方回旋を代償したり,逆に肩甲骨挙上/上方回旋で代償します.
どちらの動作戦略をとっているかでアプローチの仕方が変わってくると思います.
中でも,特に臨床で問題になってくるのがGHjの制限です.
凍結肩のようにGHjが明らかに可動域制限を受けるような病態では,肩甲骨の前傾と下方回旋を強めて,GHj内旋伸展を代償するような形になることが多いです!!
そのため,結滞動作を改善させるためには,GHjの可動域制限へのアプローチをしながら,肩甲骨による代償を抑制しながら動作学習させる必要があります.
ここまでは,実際の結滞動作の動きについて説明しました.
次はこれらを踏まえて,評価方法を紹介します.
2,結滞動作の評価の仕方
皆さんは,どのように結滞動作を評価していますか??
実際私自身が臨床業務をしていると,検者によって評価の仕方がバラバラなのが気になっていました.
日々,具体的な評価の仕方があればいいのになあ〜と思っておりました.
そして,ここでは,実際に自分が実施している方法について紹介します.
割と信頼性,妥当性はあるかなと私自身思っております.(笑)
1)静止アライメントの評価
肩甲骨の位置,肩甲上腕関節と上腕骨の位置関係の評価をします.
そもそも,正常のアライメントがわかっていないと正常も異常もわからないので,正常アライメント・患側健側比較は意識しています.
実際のアライメントの見方に関しては,後日,別で紹介するので,ここでは割愛します.
2)口頭指示
患者さんには,「手首を背骨に沿うように上げていってください」と指示をします.
ここで,ランドマークに関して,色々な意見があると思います.
一般的には,母指が脊椎のどのレベルに達しているかで評価することが多いと思います.
しかし,上記の方法で評価すると,母指の橈側外転の角度によって変わってくるので信頼性の低い評価になってしまいます.
ですので,私は橈骨形状突起で評価することにしています.
さらに,正確に評価するのであれば,C7と橈骨形状突起の距離をメジャーで測定する方法もあります.
ただ個人的に少し手間がかかるかなあ〜と...学術的にはGoodです!!!
3)結果の解釈,代償動作の確認
脊椎のどのレベルまで上がってるのか確認します.
脊椎まで以下いない場合も少なくありません.
私は,体側,hip,S,L5〜の順でカルテには記載します.
代償動作に関しては,1を見返していただければと思います.
これらを元に,実際の患者さんの結滞動作パターンと比較し,どこで制限がされているかを評価し,治療方針を決定します.
この手順で評価をすると,治療方針が立てやすいかと思いますので参考にしてみて下さい.
ここまで私の結滞動作の考え方,評価方法について紹介しました.
各々評価の仕方があると思うので,皆さんが実際にどのように評価されているかコメントいただけると嬉しいです.
引用文献
1) 松本正和,骨折の機能解剖学的運動療法その基礎から臨床まで,中外医学社,2015
2) 本田俊介ら,結滞動作について-Motion Captureを用いてた3次元的解析-,理学療法学,23:1377-1385,2006