胸郭・肩甲帯の考え方
POINT
①胸郭を6つのセグメントに分けて考える
②肩鎖関節・胸鎖関節の運動学を理解する
③両肩関節挙上と一側肩関節挙上の運動の違いを理解する
肩関節疾患を見ていく上で欠かせないのが 「胸郭」 です。
胸郭は脊椎・肋骨・胸骨で構成されており、鎖骨や肩甲骨とも密接に関わり合っています。
胸郭を構成する関節のどれか一つでも動きが悪くなれば肩関節の動きにも容易に影響を及ぼしてきます。
また、肩関節に留まらず、胸椎部には上半身質量中心が存在しているため、全身に関与してきます。
そんな胸郭を評価していくためには上記で上げた3つのポイントを理解し評価していかなければなりません。
各ポイントに入る前にまず、胸郭について基礎知識を復習していきましょう。
ポイント① 胸郭を6つのセグメントに分けて考える
胸郭を6つの領域に区分します。
まず正中線を引き、第3肋骨部で区切り、
左側が第1セグメント、右が第2セグメントになります。
次に、第7肋骨部で区切り、左が第3セグメント、右が第4セグメントになります。
最後、それ以下の肋骨部を左右で分け、左が第5セグメント、右が第6セグメントとなります。
大まかに上(第1・2)・中(第3・4)・下(第5・6)に分けてそれぞれの特徴について簡単にお伝えします。
上(第1・2)は脊椎胸骨柄領域と呼ばれています。その名の通り脊椎が第1・2肋骨を介して胸骨柄とリンクしている領域です。
この領域は肩挙上時の体幹回旋運動との関わりがが強く、特に一側挙上時で制限が強く出る場合に問題が起こっていることが多いと考えられます。
中(第3・4)は脊椎胸骨領域と呼ばれています。ここは胸骨・第3~6肋骨・Th2下半分~Th6上半分で構成されている領域です。
この領域は後方部に肩甲骨が位置していることから肩関節と胸郭を関連してみる際に最も重要となります。
肩甲骨が肋骨に沿って3次元的に動いているのか?1次元のみでの動きになっているのか?評価していく必要があります。
下(第5・6)は脊椎軟骨領域と呼ばれています。ここはTh6下半分~Th10・第7~10肋軟骨で構成されています。
この領域は腹斜筋群などとの関連性が強く、この領域が機能していなければ上肢挙上時の重心移動などに大きく影響を及ぼしてしまいます。
ポイント② 肩鎖関節・胸鎖関節の運動学
肩鎖関節は肩甲骨の
「前傾・後傾」
「上方回旋・下方回旋」
「内旋・外旋」
の運動に関与します。
関節面は内側かつ情報を向いており関節円板が存在しています。
この部位には肩鎖靭帯などの靭帯も付着している他、筋の付着線維を介して補強をされています。
また、肩鎖関節の運動は肩関節挙上90°以上から大きくなってくるという特徴があります。
上記の特徴から、肩鎖関節は上肢挙上最終域(endfeel)においての疼痛や可動域制限の要因として上がりやすいと考えられます。
続いて、胸鎖関節は肩甲骨の
「挙上・下制」
「外転・内転」
の運動に関与します。
「外転・内転」と肩鎖関節における「外旋・内旋」は似ている動きに感じますが運動軸が違います。
胸鎖関節の「外転・内転」は胸郭に沿った肩甲骨運動だというイメージを持っていただけるとわかりやすいかと思います。
胸鎖関節にも関節円板は存在しており肋鎖靭帯などの靭帯によって補強されています。
この関節の一番の特徴は運動面によって関節面の形状が異なる事です。
「挙上・下制」運動時は鎖骨関節面が凸、胸骨関節面が凹の形状になっており凸の法則に伴って運動が起こります。
「外転・内転」運動時は鎖骨関節面が凹、胸骨関節面が凸の形状になっており凹の法則に伴って運動が起こります。
胸鎖関節は肩関節挙上90°以下での運動がメインで、それ以上ではほとんど動きが止まっています。
上記の特徴から、胸鎖関節は上肢挙上の初期においての疼痛や可動域制限の要因として上がりやすいと考えられます。
ポイント③ 両側挙上と一側挙上の違い
両肩関節を同時に挙上、つまりバンザイする時、肩一側挙上と比較し胸椎伸展が大きく出現します。
続いて肩一側挙上の場合、バンザイと比較し挙上側の胸椎側屈と回旋が大きく出現します。
ある程度イメージ通りかともいますが非常に大事な点です。
また、胸椎伸展はどちらでも生じますが両者ともに下位胸椎(第5・6セグメント)で伸展活動は大きく起こり、挙上角度に伴って上位胸椎(第1・2セグメント)の同側回旋がみられます。
以上の点から、セグメント3・4領域はあまり動かないでいる方が望ましいということになります。
上記3つのポイントを抑えるだけでも胸郭・肩甲帯の診かたが大きく変わるかと思います。
ぜひ臨床にお役立てください。
質問やご指導ご鞭撻などありましたらご連絡いただけますと幸いです。
是非、正しい情報をシェアしてクライアントの方々に還元していきましょう!
最後までご覧いただきありがとうございました。