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放送作家の仕事とは?【第23回】20年近くやって気づいたこと③

 「職業は放送作家です」と言うと、多くの人に「どんなことをしているんですか?」と質問されます。そこで、このシリーズでは、謎に包まれた放送作家がどんな仕事なのかをいろんなテーマで具体的に書いています。おつきあい、よろしくお願いします。

【著者プロフィール】
テレビのゴールデン番組からアイドルのラジオ番組まで構成する30代の放送作家。企画を通してチーフ作家になることもあれば、声をかけられお手伝いに徹する仕事も好き。このコラムは、プロになるためのリアルな指南書だったりします。

今回のテーマは「20年近くやって気づいたこと③」です

 放送作家として20年近く仕事を続けてきた僕が、これまでの経験から得た気づきをいくつかお話ししたいと思います。これから放送作家を目指す方々にとって、少しでも参考になれば幸いです。

【キリのいいところで仕事を終わらせない】

 例えば、あなたが「A」と「B」、2つの仕事を2日間でやらなければいけないとします。まずは1日目にAの仕事を終わらせたタイミングで、そろそろ帰る時間に。その場合、「よし、1つ仕事が終わったところでキリがいいから仕事を切り上げて帰るか!」となるでしょう。そして、パソコンのエンターキーをパチーンと押してメールを送信。ノートブックPCをパタンと閉じて“終わった感”を味わい、スッキリして帰る――なんてことありませんか?
 
 もちろんそれはそれで、爽快なので問題はありません。ただ、今回はあえて「キリのいいところで仕事を終わらせない」という習慣をオススメしたいのです。というのも、「1つ仕事が終わった~」という達成感に長く浸りすぎると、次のBの仕事に取りかかるのにエネルギーがものすごく必要となるからです。できればAの仕事を完了したタイミングで、まだ勢いのある中ですぐBの仕事をちょっとだけやってから帰るのがいい、と考えます。
 
 わかりやすい「切れ目」があると、人間の心は満足感で次の仕事に取りかかるモードを立ち上げるのに時間がかかると聞いたことがあります。

 ちなみにコレ、テレビの視聴者に番組を見せるための工夫にも見受けられます。1本目のVTRが終わった後にキリよくCMに入るという番組を見たことがありません。1本目が終わったと思ったら、2本目のVTRに間髪入れずに乗り替わり、いいところに差し掛かったタイミングでCMへ、というパターンが多いはずです。

 つまり、テレビのVTRもネタの代わり目をなくす“シームレスな編集”をしています。どうやら視聴者は、読後感(観後感?)がある中で次のVTRに向けて「また1から気持ちを立ち上げるのって面倒だよな」と思っているようなのです。データを見ても、ネタの変わり目で視聴率がはっきりと落ちますしね。
 
 そんなわけで、人間の脳は、ちょっとでも手をつけたものはそのままやり続けたほうが効率的だと感じるみたいです。わすが2分ぐらいだけでも次の仕事に手をつけてから帰ると、次の日の「新しい仕事やらなきゃ……」という気分の重さが軽減されるんじゃないかと思います(ただし、やり過ぎは禁物です。前回書きましたが、「あしたの自分に期待する」意味でも数分だけ次の仕事に手をつけるのがコツだと思います)。お試しください。
 
 次回も引き続き「20年近くやって気づいたこと」について書いていきます。ではまた!
 
(つづく)

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