君が隣にいない冬
もう声も顔も忘れてしまったけれど
どこかで聴くたびに思い出す
ふたりだけの特別だったあの曲を
今は別の誰かに向けて歌っているんだろうな
お揃いの服や雑貨、カメラロールいっぱいの写真、
相互フォローだったsnsのアカウント
今はなに一つ手元には残っていない
だけど隣で歌うその声だけは今も鮮明に覚えている
話していた内容も大好きだった声も香りも
全部忘れてしまったのに
君が私の中に置いていったものは
簡単には消えてくれそうにない
きっとずっと私の中に居座り続ける
しわしわのおばあちゃんになっても
この曲を聴くたび彼を思い出すのだろうか
真冬のホッカイロのような暖かいあの歌声を
イルミネーションがキラキラと輝く冬の夜
街中で流れるあの曲を
君もどこかで聴いているのかな
今年はいつにも増して寒い気がして
マフラーをグルグルに巻き、ひとり出かける
誰かへのプレゼントのように雪が降りはじめた
口から出た白い息が冬のはじまりを告げる
寒いねと笑い合う恋人たちが眩しい
君の隣で過ごす暖かい冬が恋しくて
ぽろっと涙がこぼれた