今さらながらYUIを語りたい② 本当の自分と社会の中で作られた自分
YUIとともに大人になった全ての人へ
このnoteはYUIを愛する筆者が最初で最後に記すYUIの全史である。
徐々に大人になるYUI。売れるとはどういうことなのか?
前回まで↓
CAN'T BUY MY LOVE発売まで、YUIは文字通り一気にスターダムを駆け上がる。
ファーストアルバム後初めてのシングル「Rolling star」にはアニメBLEACHのタイアップが付き、10代若者の認知を獲得。
そして次作「CHE.R.RY」において着うたフル75万ダウンロードを超えた。
その後発売された「CAN'T BUY MY LOVE」はアルバムチャートで初登場1位を獲得することとなる。
着うたフル!懐かしい・・・
そして、その後のYUIを読み解くキーワード「How Crazy」が初めて登場する。
YUI発売オリジナルアルバムタイトルのほとんどはビートルズからのオマージュとなっているが、唯一その影響を受けていないのが、最後の「HOW CRAZY YOUR LOVE」である。
冷たいギターをケースに押し込む
人通りはまだ多いけど 今日の気分はここまで Getting all right
尊敬できない大人のアドバイス
アタシはあなたみたいにはなりたくないと思った
汚れたジーンズで乗り込んでいる
地下鉄の窓 映っている自分
変わってなんかない あの頃のまま
お金なんて ちょっとあればいいのよ
How Crazy わかったようにアタシのこと話すのはやめてよ
How Crazy 深い海に沈んでゆく船から逃げてきたの
夢にlove love loveいつも
純情じゃいられない How Crazy
駅前通り 地上へ続いている階段は
いつも暗くて不安だ
夕暮れのコンビニの駐車場
明日を知らない子供が小さくアタシに手を振っている
知恵をつけなさい 将来負けないように
説得したいのに うまく話せない
そんなんじゃダメ 納得もできない
oh 神様 ちょっと不公平だって思うよ
この「How Crazy」に込めた意味とはなんだったのか。
YUIはこう語る。
『How crazy』はメッセージそのものが強い曲ですよね。正直なところ、 「わかったようにアタシのことを話すのはやめてよ」 のフレーズにはドキリとしました。
YUI:映画(初主演作「タイヨウのうた」)を経験して、たくさんの人に出会って。 それを機に、 「YUIって意外とこうかもね」 とか言われるようになったことに対して、不安を感じたり、 そんな勝手に言わないでと思ったりしたんですけど。 そういう気持ちを書いてるので言葉も強くなりがちで。 だからいろいろ考えながら書きましたね。 でもこの曲のなかでいちばん言いたかったのは、 “夢に純情じゃいられない”ということなんです。それが自分のなかに最も強くあったこと、 というか。
インタビュー
ビートルズが「愛はお金じゃ買えない」と歌ったところに
YUIは「私は誰にも惑わされない」と歌う。
別のインタビューでも
YUI:『How Crazy』は、
映画『タイヨウのうた』の影響もあって
「YUIってこんな人」って私の知らないところで言ってもらえる状況ができたんですけど、
その状況を知ると、とても不安になってしまって。
その不安を振り払うように「そんな何もかも分かった風に言わないで!」
っていう想いをこの曲にぶつけて。でもこの曲で一番伝えたかったのは「夢にいつも純情じゃいられない」っていうこと。あと、シチュエーションとしては、路上で歌っているイメージを持ちながら、思い出しながら歌いました。
インタビュー
本当の自分と社会の中で作られた自分とのギャップ。
アイドル(偶像)化とでも言えばいいか?
モノを作って売れるということは自分だけのものだった楽曲が自分の手を離れていくことを意味する。
自分だけのために作っていた楽曲が誰かに聴かれて、自然とその人の中で大きくなる。
聴かれた人の中で楽曲が育っていく。
自然と、アーティストのイメージもふくらんでいく。
自分のためだけに釣っていたマグロも販売された瞬間に、評価が生じる。
こうしてふくらんでいく自分のイメージを飼い慣らせなかったアーティストはクスリに頼ったり、病んだりしてしまう。
--「つまずいたって Way to go!! 泥だらけ Rolling Star」みたいな意識は、YUIさんの中に常にある想い?
YUI:まぁつまずいてばっかりなんですけどね。それでコテって転んだまま動けないときとかもあったりはしますけど、でも「つまずいたって Way to go!!」って気持ちで動き出す。それの繰り返しかなとは思いますし、それを繰り返すことが大事だと思いますね。葛藤と模索と試行錯誤。どんなにいろんなことに慣れていったとしてもそれは無くしたくはない。忘れたくない。持ち続けていたい。
こうしたインタビューからも頑張って自分を追いつかせようとする気持ちが伝わってくる。
もっと強く生きなきゃ!もっと曲を書かなきゃ!
強迫観念にも似ている。
それはしかし歪みとなって体に変調をきたす。
ましてや繊細なアーティストだ。
これだけ自分を追い詰めたらどうなるのか・・・
YUIさんはちょっと前まで学生だったわけですけど、だからこそリアルに感じる、最近のイジメやそれによる自殺のニュースなどもこうした楽曲、歌詞が生まれた背景にはあるんじゃないかと感じたんですが、実際のところはどうでしょう?
YUI:『How Crazy』も『Rollong Star』も単純に自分が感じたこと、思ってることを歌にしているだけなんですけど、例えば、一歩を踏み出せないで苦しんでいる人が「もっと強く生きていかなければいけない」とか感じてもらえるのであれば、それは良いことだと思います。やっぱり「私の曲を聴いて、励まされました」とか「明日からまた頑張れそうです」とか、そういうメッセージを頂くと、私も救われた気になりますし、「頑張ろう」と思うので、そこはすごく良い循環ができたらいいなとは思いますね。
YUIは自身のモヤモヤとした感情を救うために曲を書き、その曲によって救われるファンがいて、それによってYUIも救われる。
このエコシステムは次第にYUIを蝕むこととなるのである。(3に続く)
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