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映画:『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』権力志向の権化。自分の非も弱みも、全否定。その名はドナルド・トランプ

皆さん、どうも redome です。ご覧いただき、ありがとうございます。

さっそくですがドナルド・トランプ氏がアメリカ合衆国第47代大統領に返り咲いてひと月が経ちました。氏の発言には世界中が日々注目しています。好悪はともかく、目が離せない人物であることは間違いないでしょう。
 新大統領就任時期に合わせて1月17日から公開になった映画アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』。これはトランプ氏と辣腕かつ悪名高き弁護士ロイ・コーンとの関係性を軸に、トランプがいかにして現在の強権的なキャラクターになっていったのかを、1970年代から80年代のN.Yマンハッタンを舞台に描いた映画です。

【はじめに】アプレンティスとは

アプレンティスを和訳すると「見習い」ですが、トランプ氏が2004年から2015年までプロデュース兼司会を務めて高視聴率をとったアメリカNBCテレビのリアリティ番組のタイトルが「アプレンティス」。彼自身のリアリティ・ショーという意味合いでのタイトルかもしれません。
 監督は「ボーダー二つの世界」のアリ・アッバシ監督、トランプを演じるのは「キャプテン・アメリカ」シリーズのセバスチャン・スタン。成功を夢見る若き実業家トランプを「不動産王」に仕立てていく伝説の弁護士ロイ・コーンを演じるのは「ジェントルメン」のジェレミー・ストロング
 来月3日開催の第97回アカデミー賞でセバスチャン・スタンが主演男優賞ジェレミー・ストロングが助演男優賞ノミネートされていますが、双方納得の、素晴らしい演技でした。

【あらすじ】(映画.com記事より抜粋)

 1970年代・アメリカN.Y。気弱で繊細なドナルド・トランプは大学卒業後、不動産業を営む父の会社に入社して事業を引き継ぎ、実業家としてのキャリアをスタートさせる。数年後、会社が「物件の入居審査で人種差別をしている」と政府に訴えられ、廃業の危機に立たされる。焦ったトランプは、勝つためには手段を選ばない弁護士ロイ・コーンに近づき、弁護を依頼する。酒も飲まない初心な若手実業家のトランプを気に入ったコーンは、彼の依頼を引き受け、裁判に勝利する。これを機にトランプは、勝つためなら違法行為も辞さないロイの強引な手法にたじろぎつつも、彼に師事する覚悟を決める。その後コーンはトランプに対して法的なアドバイスだけでなくビジネス戦略も伝授していく。「勝つための3つのルール」を叩き込まれ、仕事の流儀、服装、生き方に至るまでコーンに仕立てられていくトランプ。やがて父親を超え、更にコーンの想像をも超える「怪物」へと変貌していくー。

【感想】(ネタばれ注意⚠️)

 トランプ演じる俳優セバスチャン・スタンの演技がとにかく絶妙で、その表情やしぐさが「実物そっくり」なので、つい本人と重ねて観ていました。さぞかし綿密にトランプ氏の表情を研究したのでしょう。劇中トランプの子供時代等は描かれませんが、トランプの長兄やトランプが高圧的な父親の下で育ったという描写はありました。その兄はアルコール依存症で42歳という若さで亡くなりますが、兄の葬儀の夜、トランプはベッドで突然嗚咽し始めます。そんな彼を慰めようと妻が黙って背中をさすろうとしますが、その妻の手を思い切り振り払いながら「俺に触るな、俺を見るな」と激昂する場面は印象的でした。妻にすら絶対に自分の弱みを見せない、自分の弱さを認めないトランプの姿には「憐れみ」すら感じさせられました。
 ロイ・コーン演じる俳優ジェレミー・ストロングも非常に魅力的です。目が据わった老獪な弁護士そのもので、ギラギラしたエネルギッシュな風貌からしてハマり役でしたが、それも役作りの技だったのでしょう。手練れな俳優というオーラが出まくりでした。実在のロイ・コーンは同性愛者ということを生涯隠したそうですが(時代的にもカミングアウトは難しかったのでしょうし)彼にとって自分のセクシュアリティは負の部分であり、そうした自身の複雑な内面性を鉄面皮で覆うしかなかったキャラクターの哀切さも見事に演じ切っていました。

【さいごに】

「不正をはたらいてでも必ず勝つ」というマインドでひたすら上を目指すトランプに対して、共感できる点は全くみつけられないものの、その執念には凄味を感じます。「自分の非や負けを絶対認めない」ということは、自分自身の一部を認めず、嘘で固めて生きなければならない訳で、自分で決めた事とはいえ、その精神的負担たるや相当重いはずです。ジェレミー・ストロングはインタビューの中で、この映画のストーリーを「ある怪物が新しい怪物を生むというフランケンシュタイン物語」と表現し、またトランプとコーンの共通点として、両者とも自分の父親との関係に問題を抱えていた点を指摘していました。強すぎる父性が怪物を生んだ物語という解釈で、この映画を観てみるのも面白いのではないでしょうか。

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ここまでお読みいただき、どうもありがとうございました。
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