夢で呼ばれた神社に行ってみた。
昨年の秋の話。
少し不思議な夢をみた。夢はこんな内容だった。
赤い柱が目立つ寺社仏閣で参拝している。
自分の後ろから常香炉のお線香の香りが漂う。
目線の先の赤い本殿に丹精なお顔立ちの女性の大きな生首がぽかんと浮いている。
ほがらかな雰囲気の神主さん(だと思った)に、話を聞く私。
「この方はお松さんという偉大な方です」
白猫が私の背後を横切る。おしまい。
文字にするとおどろおどろしいのだが、観ている間も起きてからも不思議と怖くなかった。
聞いたこともない「お松さん」が何者なのか調べなければという気がした。
いわゆる霊感とかそういった類は持ち合わせていないし、旅先で素敵な寺社仏閣があれば赴くことはするが津々浦々の情報通ではないので思い当たる節がなかったのだ。
不思議なことにスマホで「お松 神社」で検索すると、すぐにその場所は見つかった。
日本三大妖猫伝の一つ、徳島県にある「お松大権化」というらしい。
HPを見ると一度行ったこと見たことを疑うほど、夢の通りの場所だった。
赤い柱の本殿に常香炉。そして、お松さんとその愛猫を祀っている。
由縁についても、HPで説明されており、なぜ私が生首をみたのかもわかった気がした。
お松の夫が不作続きの村の窮状を救うため、私有の田地を担保に近在の富豪からお金を借り受ける。その富豪へ返済をするも通りがかりの折で証文を受け取らなかった。夫がまもなく病死しお松は証文を請求するも渡されず、挙句お金を受け取っていないと土地を横領される。お松は思案の末に奉公所へ申し出。奉公はお松の容姿に食指を動かすもお松は意に応じず、また富豪からの賄賂もあり不合理な裁きを受ける。お松は権力まかせの悪業に死を決して講義、藩候の行列を横切り直訴、そして愛猫に遺恨を残し処刑に殉ずる。愛猫はお松の死後に祟りを起こす。
時代背景を踏まえるとお松さんは、当時にしてはありえないくらいタフで聡明で正義感の強い女性 そんな印象を、そして自分の矜持が許さないことへのこだわりのようなものには共鳴する部分があった。
これは行かないと。直感で旅行のメインテーマに入れて四国を旅することにした。
四国は以前香川・徳島を軽く旅行をしたことがあったもののその時は、ほぼ食い倒れ旅。
余談だが、ひたすらうどんとかまど(香川の銘菓)とアワライズ(徳島の阿波踊り向けエナジードリンク)に魅了され2日間でかまど15個とアワライズ1ダースを一人でペロリと平らげた。帰りにあわてておみやげを買い足したほどだ。四国のごはんだいすき。
十一月とは思えないほど暖かい気候の中、無事にお松大権化へ到着。
感慨にひたりながら一歩を踏み出すと、香りも頬にふれる空気もなにもかもが夢で体験した時のようだった。そしてからっとした明るい雰囲気。
ああ好きな場所だなと直感した。
参拝し、御朱印をいただきに行くと大権化を守っているご夫婦がいらっしゃった。
とてもほがらかで気さくであたたかいご夫婦だった。
どこから来たのかと尋ねられ、札幌から来たのだと言うととてもびっくりされた。
なにがきっかけで来たのかと奥さんが尋ねられたので、変な話なんですけどと注意を添えた上で夢で見た話を伝えた。
奥さんは「それはええご縁を結んでくれはったね」とおっしゃり、お松さんについて丁寧に教えてくれた。
寺社の散策をしていると夢にでてきた通り白猫が横を通り過ぎ、たまに合流し、立ち去る時には屋根に登って見送ってくれていた。
その後、とくだん生活に変化などはない。
せっかく結んでくれたご縁だから、恥じないようにしゃんと生きなければ。
ただ、前よりも街中の猫を見つけられるようになった気はする。