ラヴェルの〇〇を聴きながら、牛尾剛『世界一流エンジニアの思考法』を読んだ。
私はモーリス・ラヴェルのスコアの精緻さや神経質な性格から、現代に生きていたらGoogleやMicrosoftの天才エンジニアになっていたと勝手に思っているので、
本書のイメージに近そうな『弦楽四重奏曲』をBGMにチョイス。
会田莉凡(ヴァイオリン)
篠原悠那(ヴァイオリン)
中 恵菜(ヴィオラ)
上野通明(チェロ)
張りがあって眩い演奏です。
ちなみに、本書はエンジニアの目線や体験談で書かれているだけで、中身は主にマインドセット&チームビルディングのお話ですので、
非エンジニアの方も簡単に読めます。
生産性を上げたい個人、チームを改革したいマネージャー、組織をブラッシュアップしたい人事や社長、が主なターゲットです。
下記、私なりの感想。
主体性が大切
日本の組織の多くはガチガチの縦社会であるため、上の命令に従う(履行する)ことがスタンダード。
主体的に学ぶことはあまり評価されず、裁量権を行使して動くこともかなり厳しい。
スポーツで例えるなら、トレーニングはすべてコーチが作ったものを消化し、試合では監督の命令に従うだけ。
メジャーリーガーの菊池雄星が怪物級に活躍していた高校時代(もしかしたら西部入団後)、寮の中でインタビューを受けている映像をかつて見ましたが、
本棚には解剖学書のようなものや栄養学書があったと記憶してます。
「高校生なのにこんなに勉強しているのか!」と脱帽し、GUAMと書かれた旅行のお土産丸出しのキャップがバサッと畳に落ちたことは今でも鮮明に覚えています。
ダルビッシュ投手も超勉強家(研究家)ですが、日本ではアスリートや芸能人は主体的に努力し、サラリーマンは会社の指示に従うことに努力すれば良い、
という慣習がベットリこべりついている気がします。
しかし、諸悪の根源は個人ではなく、残業が当たり前の社内運営に問題があると思われます。
著者の牛尾さんは定時上がりをし、その後は自学に時間を費やしておられるそうですが、会社は、
定時上がり、かつ、主体的に自学
する社員で構成した方が、命令と残業に従う社員を雇用するよりも長期的に見て業績は上がる気がします(データはありませんので憶測)
例えばですが、社会人スポーツチームを作る場合、コーチや選手のレベルは高いに越したことはありませんが、
各選手が最新のトレーニング方法や戦術を自学し、それをチーム内でシェアする慣習があると、チームがどんどん成長していくと私は思います。
つまり、サラリーマンをアスリートのように扱う、ということをもっと行うべきでしょうか。
ミスを失敗ではなく試みの結果とする
日本人は真面目すぎるゆえに、失敗を過剰に咎める節があります。
それが電車ならば時刻通りに来るというメリットを生んでいますが、運転手を追い詰めて脱線事故を起こしたという面も無視できません。
オリンピックでも選手への誹謗中傷が問題になっているそうですが、各国のトップが集まった舞台で負けることは可能性として高いだけです。
当然、A選手が金メダルを獲った世界線も存在していますが、ケガで予選敗退し、五輪にいない世界線もあります。
結果が出なかった選手へ罵詈雑言するか、「次は課題を克服して金を獲って欲しいな」と思うのは個人の裁量です。
そもそも、過ぎたことを批判しても意味はありません。誤審など、結果が変わる可能性が1%でもあるならやる価値はありますが。
これはビジネスには当てはまり、チャレンジには失敗はつきものですし、簡単なことを失敗するならば、それにも原因はかならず存在します。
①そもそもやる気がない
②ストレスが多すぎて疲れている
③向いていない、慣れていない
①は論外ですが、②と③であるならば、マネージャーがフォローすべき仕事です。
言い換えるなら、やる気があるのに失敗したなら咎める必要はありません。
むしろ、叱咤したりプレッシャーを与えるとさらに緊張してまた失敗します。
真面目で責任感が強い人ほど、失敗を大事件として反省してしまいますが、これによってイップスのようなものになる可能性もあります。
簡単なパターを外したことで、簡単なパターの局面で手が震えるようになったゴルファー、甲子園で悪送球して以来、投げられなくなった選手。
会社に話を戻すと、失敗に寛容で、お互いの意見を好きに言い合える(同調の強要がない)チームが理想のようです。
「次のバッターは大谷翔平だから敬遠しよう」と10人が言ってても、「今投げている投手は大谷を8割5分割抑えているから勝負しよう」と言える空気が大切で、
これはポピュラーになった心理的安全性という概念とも一致します。
敬遠しないことになった場合、投手へ「お前のスライダーなら8割5分抑えられるから自信もって投げろ」と言えるとさらに良いと思います。
良いボールを打たれた場合、キャッチャーが「俺の配球が悪かった」とフォローしてあげるのも大切ですし、
「次、大谷を抑えるために変化球を増やそう」と改善点を論理的に話し合うのも大切です。
失敗に寛容で、フォローし、意見を気軽に話し合えることが組織に必要だと思います。
※これはオリンピック選手への国民の態度も同じことです。選手を育て、メダルを獲得して欲しいなら誹謗中傷は無意味です。「レベルが高すぎてどっちが勝つか分からない面白い試合を見させてもらいました」で十分です
まとめ
個人的な解釈が強すぎるレビューとなりましたが、本書には他にも仕事術のコツが数多書かれていますので、気になった方は手に取ってみてください。
BGMですが、結果的には本書の主張は「もっとおおらかに!」という感じなので、ラヴェルの『弦楽四重奏曲』よりもジャズが適切でした。
エンジニアが書いた本ということを踏まえると、エレクトリックなジャズが良いと思いますので、トミー・フラナガンがエレピを弾いている『サムシング・ボロウド、サムシング・ブルー』をご紹介してレビューを締めます。
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